地域における効果的な結核対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201225023A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における効果的な結核対策の強化に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克(公益財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 御手洗聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 )
  • 岡田全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 阿彦忠之(山形県衛生研究所)
  • 内村和広(公益財団法人結核予防会結核研究所 )
  • 大角晃弘(公益財団法人結核予防会結核研究所 )
  • 吉山崇(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 伊藤邦彦(公益財団法人結核予防会結核研究所 )
  • 松本健二(大阪市保健所)
  • 貞升健志(東京都健康安全研究センター)
  • 下内昭(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 加藤誠也(公益財団法人結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,249,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の結核罹患率は徐々に減少しつつあるが、結核は容易には制圧できず今後半世紀以上公衆衛生上の課題として残り続けると予測される。また結核医療や対策の専門家も大幅に減少し、対策や医療の質の確保が困難になりつつある。また地域間の格差もますます拡大することが予測される。今後の我が国における結核対策・結核医療は、こうした1)低まん延化状況、2)専門家の減少、3)地域間における結核疫学状況の差異の増大(各自治体独自の対策立案の重要性増大)、4)特定のリスクグループへの結核罹患の偏在、の4つの因子を考慮せねばならない。本研究は上記諸因子を広く包含し、結核低蔓延状況を来す将来を見据え、現時点の段階から各地域のニーズに応じた有効かつ質の高い結核医療や対策を維持する手法を提示する総合的対策研究である。
研究方法
研究は疫学および病原体のサーベイランスと、具体的介入方法の研究の二分野で構成される。疫学サーベイランスの検討では、既存結核サーベイランスデータと各種統計データを組み合わせ、現サーベイランス精度の推定を行う。病原体サーベイランスはさらに遺伝子タイピングおよび薬剤耐性サーベイランスとその基礎としての菌検査外部精度保証の三つに分けて検討し、国内低まん延地域および高まん延地域の両者での検討を行う。モデルケースの構築や実際のサーベイランス施行などにより、実際に国単位で施行し直接結核対策へのインプットをもたらすことを目的とし、導入に直接裨益するような形で行った。具体的介入手法の研究では、低まん延下での結核対策全般の強化維持に効果的なスキームの探索とその試行により効果を検証するとともに、結核対策および結核医療の実践指標である治療成績指標を、わが国の特殊な結核疫学状況に即した形で新たに作成しその妥当性を検証する。今後ますます重要性を増す潜在性結核感染症治療の低まん延下でのあり方をサーベイランスデータおよび保健所調査によって行う。個別介入策の検討では、各地域での様々なリスクグループ(糖尿病・ホームレス・矯正施設入所者・高齢者・医療従事者・多剤耐性結核)での結核対策強化のため、リスクの評価や予後および危険因子の検討などを、結核サーベイランスデータを始め各種統計・聞き取り調査・直接調査などの多角的手法で分析する。
結果と考察
疫学サーベイランス研究の精度分析では、検査施設を含めた多面的ソースによる精度向上の必要性が示された。病原体サーベイランス研究のうち遺伝子タイピング分野では様々な地域で、感染経路分析とそれによる接触者健診強化における有用性を示すと共にモデルケースの構築を行っている。結果から、高齢者間における外来性再感染発病が少なくないことなどの新たな知見、国単位での導入に向けた問題点の分析を蓄積した。薬剤耐性サーベイランスでは、リアルタイムかつ低コストで可能な、臨床検査機関のデータを用いた手法が試行され、妥当性が示された。具体的介入手法の検討では、低まん延地域の結核対策における外部専門家活用の有用性が示され、治療成績指標として一定期間後の治療状態を用いる指標が試作され、現在現場での実データを用いて妥当性を検証しつつある。潜在性結核感染症治療での今後のあり方に関する検討では、現在の潜在性結核感染症治療対象者増加の要因として接触者健診の質向上だけではなくIGRA検査の偽陽性など複合的な要因が関与していることが全国調査で示された。多剤耐性結核のうち特に慢性排菌者の全国調査では、新薬1剤の登場だけでは不十分であることが示され、新薬登場時の使用管理体制が重要であることが示された。個別介入策の検討では、各リスクグループへの結核の集中と予後の悪化などが具体的に示され、危険因子の抽出などが行われた。今後、これらのデータを基に、院内感染・潜在結核感染症治療・矯正施設結核対策等に関するガイドラインないし提言づくりがなされつつある。
結論
2年目として研究は順調に進捗している。疫学・病原体の両サーベイランス研究、および具体的介入策研究の両分野での成果を踏まえ、最終年度は、これらを立体的に総合し、各自治体での結核対策の強化維持に向けた様々なガイドラインや提言がなされる予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225023Z