文献情報
文献番号
201225022A
報告書区分
総括
研究課題名
抗菌剤治療により寛解する難治性炎症性腸疾患患者の網羅的細菌叢解析と病因・増悪因子細菌群の解明
課題番号
H22-新興-若手-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,647,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎(UC)は、個有の遺伝的背景と腸内細菌叢が密接に関連して発症する事が示唆されている。三種の抗菌剤ATM(アモキシシリン/テトラサイクリン/メトロニダゾール)を二週間投薬するだけで、その疾患が1年以上緩解することが明らかとなってきた。本研究は、UC発症の環境要因となる細菌叢を抗菌剤治療前後で網羅的且つ定量的に解析を行い、本疾患と密接に関連する細菌の探索を行い、本疾患の発症機序を環境要因の側から理解することを目的とする。
研究方法
平成23年度に引き続き、AFM治療を施したUC患者6名の治療前後における自然排泄便を得た(研究協力者:大草敏史:東京慈恵会医科大・柏病院)。
糞便懸濁液を溶菌酵素(lysozymeとachromopeptidaseの混合)にて溶菌処理を施し、QIAGEN DNA stool kitを用いてDNA精製した。NEXTERA sample prep kitを用いてメタゲノムDNAライブラリーを作製した。それぞれIllumina GAIIxを用いて平均1000万本の配列を解読し、細菌種鑑別に有効な配列対象を検討した。解読リードをmegablast相同性検索により細菌種を鑑別した。配列検索に使用したデータベースはNCBI non-redundant ntデータベースを用いた。MEGAN ver4.7 を用いて細菌種の分類を行い、該当する細菌の解読リード本数から検出率を算出した。統計的にUC発症に関連する細菌群を抽出するために、LEfSe 統計処理(Segata. et al, Genome Biol. 12, R60, 2011)を用いた。
糞便懸濁液を溶菌酵素(lysozymeとachromopeptidaseの混合)にて溶菌処理を施し、QIAGEN DNA stool kitを用いてDNA精製した。NEXTERA sample prep kitを用いてメタゲノムDNAライブラリーを作製した。それぞれIllumina GAIIxを用いて平均1000万本の配列を解読し、細菌種鑑別に有効な配列対象を検討した。解読リードをmegablast相同性検索により細菌種を鑑別した。配列検索に使用したデータベースはNCBI non-redundant ntデータベースを用いた。MEGAN ver4.7 を用いて細菌種の分類を行い、該当する細菌の解読リード本数から検出率を算出した。統計的にUC発症に関連する細菌群を抽出するために、LEfSe 統計処理(Segata. et al, Genome Biol. 12, R60, 2011)を用いた。
結果と考察
1)AFM治療前後で有意に検出される腸内細菌の同定
AFM治療を受けたUC患者6名の自然排泄便のメタゲノム解析を行った。サンプルあたり、300万本~3000万本の解読リードを得た。塩基レベルで相同性解析した結果を細菌属レベルで分類した(図2)。一見してAFM治療前の発症時には大腸菌Escherichia coli の検出率が高く、UC患者6名のうち患者B以外の5名から検出された。AFM治療により患者D以外の4名で検出率が大幅に減少し、AFM治療効果とUC寛解との関係性が示唆された。
統計的に有意にUC発症に関連する細菌群を抽出するために、LEfSe 統計処理(Segata. et al, Genome Biol. 12, R60, 2011)を用いた(図3)。Non-parametric検定とLinear discriminant analysisによる統計解析法であり、群間で共通して変動する因子を特定する統計手法である。今回、AFM治療前後の2群比較において、症状に起因する腸内細菌群を同定するために使用した。LEfSe法により、6名の抗菌薬AFM治療の前後で、大腸菌Escherichia coli が有意に検出された。
LEfSe解析結果から大腸菌E. coliのみを抽出して表示した。6名中4名で大腸菌E. coliは治療前において有意な存在量を示し、潰瘍性大腸炎に何らかの要因となっている可能性が示唆された。
AFM治療を受けたUC患者6名の自然排泄便のメタゲノム解析を行った。サンプルあたり、300万本~3000万本の解読リードを得た。塩基レベルで相同性解析した結果を細菌属レベルで分類した(図2)。一見してAFM治療前の発症時には大腸菌Escherichia coli の検出率が高く、UC患者6名のうち患者B以外の5名から検出された。AFM治療により患者D以外の4名で検出率が大幅に減少し、AFM治療効果とUC寛解との関係性が示唆された。
統計的に有意にUC発症に関連する細菌群を抽出するために、LEfSe 統計処理(Segata. et al, Genome Biol. 12, R60, 2011)を用いた(図3)。Non-parametric検定とLinear discriminant analysisによる統計解析法であり、群間で共通して変動する因子を特定する統計手法である。今回、AFM治療前後の2群比較において、症状に起因する腸内細菌群を同定するために使用した。LEfSe法により、6名の抗菌薬AFM治療の前後で、大腸菌Escherichia coli が有意に検出された。
LEfSe解析結果から大腸菌E. coliのみを抽出して表示した。6名中4名で大腸菌E. coliは治療前において有意な存在量を示し、潰瘍性大腸炎に何らかの要因となっている可能性が示唆された。
結論
昨年度(H23年度)の成果で、ATM治療前の急性期便から大量に大腸菌が検出される患者がおり、ATM治療において健常な腸内細菌フローラに近づきつつ有ることを示した。本年度は6名のUC患者の自然排泄便を検体にして AFM治療前後の腸内細菌フローラを解析し、昨年度と同様に大腸菌が有意に検出率され、UC発症になんらかの因果関係を示唆するデータを得た。
大腸粘膜のびらん炎症像が示すように、UC発症時は通常の細菌フローラでは無いだろうと感じていたが、ある固有の大腸菌株が過剰に増殖しており、ある単一の細菌種に固定されてしまって多様性を失っていることが分かった。想定通り特有の細菌が過剰に増殖した結果、UCの増悪に関連していることが示唆された。
大腸粘膜のびらん炎症像が示すように、UC発症時は通常の細菌フローラでは無いだろうと感じていたが、ある固有の大腸菌株が過剰に増殖しており、ある単一の細菌種に固定されてしまって多様性を失っていることが分かった。想定通り特有の細菌が過剰に増殖した結果、UCの増悪に関連していることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
-