文献情報
文献番号
201225014A
報告書区分
総括
研究課題名
高病原性鳥インフルエンザの診断・治療に関する国際連携研究
課題番号
H22-新興-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河内 正治(独立行政法人国立国際医療研究センター 手術部)
研究分担者(所属機関)
- 布井博幸(宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
- 本間栄(東邦大学医学部呼吸器内科)
- 山本健二(独立行政法人国立国際医療研究センター研究所)
- 大島正道(国立感染症研究所免疫部)
- 川上和義(東北大学大学院医学研究科)
- 赤池孝章(熊本大学大学院生命科学研究部生物学分野)
- 中島典子(国立感染症研究所感染病理部)
- 影山努(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
- 岡本竜哉(独立行政法人国立国際医療研究センター)
- 長谷川秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
- 志賀由佳(独立行政法人国立国際医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
28,951,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)(以下A(H5N1)と略す)は60−80%に達する高い死亡率が特徴で(Kawachi,S: JID, 2009)、その死因の多くはウイルス性肺炎からのARDSである。このA(H5N1)ウイルスを含むウイルス感染が引き起こす重症化因子としての劇症型ARDS(F-ARDS)の病態解明と診断/治療の研究は、インフルエンザパンデミックのみならず、他のウイルス感染症においても流行期があるため緊急を要する重大な社会的要請である。A(H5N1)は我が国でのヒト感染事例はないため国際医療協力が必須である。ウイルス性肺炎からのARDSはきわめて重篤で、今後日本においても大きな問題となる可能性が高い。これの問題解明を目的として、
1.A(H5N1)ウイルスのヒト感染について、疫学/病理学/免疫学的側面から病態と実態を解析し、診断/治療ガイドラインを作成してその本態と治療法を社会に提言する。
2.複数の国と国際医療共同研究を推進する。
1.A(H5N1)ウイルスのヒト感染について、疫学/病理学/免疫学的側面から病態と実態を解析し、診断/治療ガイドラインを作成してその本態と治療法を社会に提言する。
2.複数の国と国際医療共同研究を推進する。
研究方法
1. A(H5N1)誘発の劇症型ARDS 患者の臨床像の調査と解析
・海外の医療機関と先行型共同研究計画に基づくA(H5N1)を含む劇症型ARDS 患者の解析。
・ ベトナムなど、現地でA(H5N1)に対する治療方法を現地医師団と共同開発。
2.治療法の検証(作成したモデル動物を用いる)
・動物モデルによる治療法の検証。開発した劇症型ARDS動物モデルを用いた治療実験。
・臨床班の試料から肺胞洗浄液中/血液中のサイトカイン等、抹消血中の免疫細胞機能の解析。
3. A(H5N1)迅速診断法の開発。
・ベットサイドで使用可能な迅速診断キットの開発・改良。
・遺伝子解析法を用いた迅速な確定診断法の開発。
・上記の迅速診断法/確定診断法を用いてILI(Influenza like illness)の診断、疫学的解析。
4.インフルエンザ重症化因子としてのARDSを広く知らしめるための書籍の刊行
・海外の医療機関と先行型共同研究計画に基づくA(H5N1)を含む劇症型ARDS 患者の解析。
・ ベトナムなど、現地でA(H5N1)に対する治療方法を現地医師団と共同開発。
2.治療法の検証(作成したモデル動物を用いる)
・動物モデルによる治療法の検証。開発した劇症型ARDS動物モデルを用いた治療実験。
・臨床班の試料から肺胞洗浄液中/血液中のサイトカイン等、抹消血中の免疫細胞機能の解析。
3. A(H5N1)迅速診断法の開発。
・ベットサイドで使用可能な迅速診断キットの開発・改良。
・遺伝子解析法を用いた迅速な確定診断法の開発。
・上記の迅速診断法/確定診断法を用いてILI(Influenza like illness)の診断、疫学的解析。
4.インフルエンザ重症化因子としてのARDSを広く知らしめるための書籍の刊行
結果と考察
2012/12まで以下のcriteriaで先行的にベトナム国において劇症型ARDSを集積した。NHP-HanoiのPICUに入室した症例のうち、①AECC1984の診断基準を満たすARDS症例、②PICU入室中にP/Fratio≤100を呈し、③年齢が一ヶ月以上であるすべての症例。気管内挿管時に気管内分泌物(または気管洗浄液)と血清を採取した。集積できたのは94例、うちインフルエンザ感染がPCRにて証明された症例は8例、内訳はA(H5N1) 3例、2009 A H1N1-pdm 4例、季節性インフルエンザA(H3) 1例であった。A(H5N1)は2/3死亡、A(H1N1)は4/4死亡、A(H3)は混合感染を来たし、別要因で死亡した。この重症ARDS症例94例のうち、31例に気道洗浄液からPCRで何らかのウイルスが同定された。中にはRhinovirusのように非特異的な、日本では一般には肺炎(ARDS)の原因とは考えられない病原も含まれていた。以上、ベトナムとの連携により得られた成果からA(H5N1)の臨床病態の把握が可能になり、パンデミック発生時のシミュレーションに役立てた。病態、治療などのデータは、パンデミック対策を立てる上で貴重な社会的成果として今後も貢献できる。ベトナム等諸外国との国際連携によりA(H5N1)の検体/標本を入手することができ、詳しい病理/免疫学的研究を日本で推進可能となり、社会的成果となった。今後、さらに呼吸器系ウイルス感染全般について重症化要因を解明して、わが国における流行対策や、治療法の開発にて社会に貢献できる。また、A(H5N1)の迅速診断法を確立することは、従来困難であった疫学調査が安価に可能となり、パンデミックデータとして大きな意味を持つ。
以上より、A(H5N1)および重症インフルエンザに対する診断・治療の指針として重症インフルエンザパンデミックの際に有効なマニュアル/診断治療を作成し、社会にフィードバックした。
以上より、A(H5N1)および重症インフルエンザに対する診断・治療の指針として重症インフルエンザパンデミックの際に有効なマニュアル/診断治療を作成し、社会にフィードバックした。
結論
インフルエンザ(H5N1)などのウイルス感染による劇症型ARDS患者の病態解析とその原因を究明することは将来のパンデミック対策としても重要であり、その目的に向かって、臨床・基礎医学両面からの緊密な提携をもった研究が不可欠である。本研究班では、これまでの知識を集大成して、24年度にはインフルエンザ(H5N1)型ARDSの迅速特異診断および治療法を提案し、「手引き」を作成してその知識を広く人口に膾炙した。
本研究により最近ウイルス性肺炎の脅威が東南アジアを中心に報告されつつあり、今後はこの点も網羅して将来の日本への流行に備えていくことが新たなる目標となる。
本研究により最近ウイルス性肺炎の脅威が東南アジアを中心に報告されつつあり、今後はこの点も網羅して将来の日本への流行に備えていくことが新たなる目標となる。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
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