真菌感染症の病態解明に基づく検査・治療法の確立と国内診断・治療ネットワークの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201225008A
報告書区分
総括
研究課題名
真菌感染症の病態解明に基づく検査・治療法の確立と国内診断・治療ネットワークの構築に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学病院 感染制御部)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科)
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座)
  • 槇村 浩一(帝京大学 医真菌研究センタ-)
  • 比留間政太郎(順天堂大学 医学部附属練馬病院 皮膚・アレルギー科)
  • 望月 隆(金沢医科大学 環境皮膚科学)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 川上 和義(東北大学 大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野)
  • 掛屋 弘(長崎大学病院 第2内科)
  • 山越 智(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,049,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では真菌症の確定診断のための真菌学的検査、遺伝子検査、病理組織学検査ができる検査室や研究機関は限定されているため、我が国独自の医療事情や新しいエビデンスに基づく診療の普及、国内の真菌症に関する発生動向を把握し真菌症の診療支援や診断治療法の情報共有を可能とするネットワーク構築を最終目的とする。
研究方法
診療ならびに検査ラボネットワークの構築を最終目標として、呼吸器、血液内科、皮膚科、外科、検査、基盤研究の観点から、共有すべき疫学情報を明らかにし、課題解決に向けた研究を実施した。深在性真菌症としては地域流行型真菌症と造血幹細胞移植患者における疫学、皮膚真菌症ではトリコフィトン・トンズランス感染症、外科真菌症に関してはカンジダ症とトリコスポロン症、検査法構築については病理標本からの遺伝子診断法と糸状真菌に関する新規診断法、基盤研究ではクリプトコックスに対する宿主認識機構、糸状菌の診断標的分子の検索等について研究を行った。
結果と考察
真菌症の疫学に関してコクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、トリコフィトン・トンズランスの発生動向につき2012年度分を追加しアップデートした。造血幹細胞移植患者におけるわが国の深在性真菌症疫学がはじめて明らかになった。真菌症検査ネットワーク構築では、病理コンサルトネットワークを活用しAspergillusやMucor計8件件の確定診断を行った。トリコフィトン・トンズランスに関して、ガイドラインの治療指針検証を行い、また、簡便なLAMP法の構築への応用が可能な遺伝子配列を明らかにした。アスペルギルスと接合菌について分泌抗原であることを明らかにし、ELISAの感度を改善した。クリプトコックスの宿主認識におけるCARD9など細胞内シグナル伝達の一端を解明した。
結論
研究の成果としてネットワークの形成は行政ニーズの情報源となるばかりでなく、診療支援にも使用可能で診断困難例の患者に直接的な利益を供する。ガイドライン作成の推進は、標準的な診断治療を受ける機会を患者に与え、適切な診療法を啓発することにつながり、また、医療の効率化につながるため医療資源の適切な配分にも有益であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201225008B
報告書区分
総合
研究課題名
真菌感染症の病態解明に基づく検査・治療法の確立と国内診断・治療ネットワークの構築に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学病院 感染制御部 )
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科 )
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座 )
  • 槇村 浩一(帝京大学 医真菌研究センタ- )
  • 比留間 政太郎(順天堂大学 医学部附属練馬病院 皮膚・アレルギー科 )
  • 望月 隆(金沢医科大学 環境皮膚科学 )
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター )
  • 川上 和義(東北大学 大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野 )
  • 掛屋 弘(長崎大学病院 第2内科 )
  • 山越 智(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
立ち後れているわが国の真菌症診療の向上のために疫学情報収集やガイドライン整備おこない、直接的に診断支援を行い、間接的には行政施策の判断基準となる疫学情報を提供することを最終目標とする。診療に関する研究の具体的目標は、迅速で正確な診断を可能とする方法について、1)病理組織からの病原体同定を可能とする、2)難治の真菌症疑い例の診断支援を可能とするネットワークを構築する、3)ガイドラインの整備を進める、の3項目とした。公衆衛生学的な目標は、極めて重症な真菌症に関するわが国の疫学を明らかにし、必要な対策のための基盤的データとすることとした。
研究方法
診療ならびに検査ラボネットワークの構築を目標として、呼吸器、血液内科、皮膚科、外科、検査、基盤研究の観点から、先ず共有すべき疫学情報を明らかにし、課題解決に向けた個々の研究を実施した。深在性真菌症としては地域流行型真菌症と造血幹細胞移植患者における疫学、皮膚真菌症ではトリコフィトン・トンズランス感染症、外科真菌症に関してはカンジダ症とトリコスポロン症、検査法構築については病理標本からの遺伝子診断法と糸状真菌に関する新規診断法、基盤研究ではクリプトコックスに対する宿主認識機構、日和見糸状真菌の診断標的分子の検索と機能解析に関する研究を行った。
結果と考察
真菌症の疫学に関してコクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、トリコフィトン・トンズランスの発生動向につき各年度の最新情報をもとに改訂した。また、造血幹細胞移植患者におけるわが国の深在性真菌症疫学データが初めて明らかになった。真菌症検査ネットワーク構築では、病理コンサルトネットワークとラボ検査ネットワークにおいて全国各地からのコンサルトに対応し確定診断や診断支援を行った。皮膚真菌症については、トリコフィトン・トンズランスに限定したガイドライン改訂版を発刊し、簡便な検査法の開発と提案も行った。難治性真菌症の診断治療法に関する研究では、アスペルギルス属と接合菌について検査応用可能な蛋白質を明らかにし一部はELISAを構築した。クリプトコックスに関しては、宿主免疫の認識分子を明らかにし菌側成分からワクチンアジュバントをみいだした。
結論
難治であり移植感染症などで患者予後に重大な影響を与える真菌症に関して、新規調査としては国内の造血幹細胞移植患者における真菌疫学の一端をはじめて明らかにし、継続調査としては渡航者真菌症の疫学情報を提供できた。社会的影響の大きな真菌症のうち、患者数が多く武道の必修化に伴い若年者への感染拡大が危惧されるトリコフィトン・トンズランス感染症については、診療ガイドラインの改訂とホームページ開設による啓発をおこなったことは公衆衛生学的に有益であると推察できた。外科領域でも治療薬の投与法研究や全国外科施設アンケートなどを通じて、医療行政対応に重要な情報をえた。さらに、基盤研究においてもユニークな分子をみいだし効果的な診断法や治療法の発展につながる研究成果をえた。さらに、これらの研究組織が全国の真菌症診断支援に対応するネットワークを形成し、真菌症が疑われた不明感染症の診断に貢献した。以上、真菌症は他の領域と比較して診療基盤が脆弱であり専門家も少ないことから、診療や公衆衛生に帰する研究の更なる推進が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201225008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国の真菌症の疫学情報の一端が明らかになった。疫学では、四類感染症であるコクシジオイデス症をはじめとする渡航者真菌症の現況を継続的に把握し、新たに造血幹細胞移植患者における深在性真菌症のわが国の疫学や、表在性真菌症ではスポーツ選手におけるTrichophyton tonsurans感染症の疫学を明らかにした。他に、新規診断法やワクチンアジュバントに発展が期待できる分子をみいだし方法論を確立した。
臨床的観点からの成果
わが国の真菌感染症に関するネットワークを構築したことにより、専門家がいない病院等での重症真菌症疑い例の診断を研究班内で実施したことにより、医療に直接的に貢献した。早期診断を行い治療が可能となった症例等を論文として発表したことで、診断や治療法に関する知見をえた。
ガイドライン等の開発
「トンスランス感染症 ブラシ検査・治療・予防のガイドライン」を発表した。また、治療方法に関して記載に用の検証を実施した。2014年の深在性真菌症ガイドラインのアップデイトに向けたエビデンスに関する情報収集と研究を実施した。
その他行政的観点からの成果
一般の渡航者や造血幹細胞移植を必用とする免疫不全患者、また、学校や団体等におけるスポーツ選手において公衆衛生学的に問題となる真菌症の疾病疫学を明らかにする事により、法律の整備など行政施策の方針決定に必用となる資料を提供した。
その他のインパクト
国立感染症研究所 情報センター主催のmedia勉強会で世界と日本の真菌感染症についての情報提供をマスコミ関係者に行った

発表件数

原著論文(和文)
50件
原著論文(英文等)
154件
その他論文(和文)
78件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
264件
学会発表(国際学会等)
138件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

特許の名称
アスペルギルス・フミガーツス感染症の検査、予防及び治療のための方法並びに組成物
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2011/068454
発明者名: 宮﨑 義継、山越 智、梶川 益紀、杉浦 雅仁、伊藤 玲子
権利者名: 国立感染症研究所、株式会社ACTGen
出願年月日: 20110812
国内外の別: 国際

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiruma M, Kano R, Sugita T, Mochizuki T, Hasegawa A, Hiruma M.
Urease gene of Trichophyton rubrum var. raubitschekii.
J Dermatol. , 40 (2) , 111-113  (2013)
原著論文2
Hirose N, Tamura M, Suganami M, Ogawa Y, Hiruma M.
The Results of Trichophyton tonsurans Screening Examinations and Infection Management in University Judo Federation of Tokyo Athletes over a 4-year Period
Med Mycol J , 53 , 267-271  (2012)
原著論文3
Yamada A, Noguchi H, Sakae H, Ogawa Y, Hiruma M.
Tinea faciei caused by Trichophyton verrucosum in a 20-month-old female: Case report and summary of reported cases in Japan
J Dermatol , 39 , 667-669  (2011)
原著論文4
Mochizuki T, Kobayashi H, Takeda K, Anzawa K, Ishizaki H
The first human cases of Americano-European race of Arthroderma benhamiae infection in Japan
Jpn J Infect Dis , 65 , 558-559  (2012)
原著論文5
Anzawa K, Mochizuki T, Nishibu A, Ishizaki H, Kamei K, Takahashi Y, Fujihiro M, Shinoda H
Molecular epidemiology of Trichophyton tonsurans isolated in Japan between 2006 and 2010 and their susceptibility to oral antimycotics
Jpn J Infect Dis , 64 , 458-462  (2011)
原著論文6
Nagi M, Tanabe K, Nakayama H, Yamagoe S, Umeyama T, Oura T, Ohno H, Kajiwara S, Miyazaki Y.
Serum cholesterol promotes the growth of Candida glabrata in the presence of fluconazole
J Infect Chemother. , 19 (1) , 138-143  (2013)
原著論文7
Nagi M, et al.
The Candida glabrata sterol scavenging mechanism, mediated by the ATP-binding cassette transporter Aus1p, is regulated by iron limitation
Mol Microbiol , 88 (2) , 371-381  (2013)
原著論文8
Miyazaki T, et al.
Functional characterization of the regulators of calcineurin in Candida glabrata.
FEMS Yeast Res. , 11 (8) , 621-623  (2011)
原著論文9
Umeyama T, et al.
Determination of epidemiology of clinically isolated Cryptococcus neoformans strains in Japan by multilocus sequence typing.
Jpn J Infect Dis. , 66 (1) , 51-55  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-06-08
更新日
2017-05-24

収支報告書

文献番号
201225008Z