文献情報
文献番号
201225006A
報告書区分
総括
研究課題名
現在、国内で分離・同定できないウイルス性出血熱等の診断等の対応方法に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 甲斐知惠子(東京大学医科学研究所)
- 高田礼人(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
- 安田二朗(長崎大学熱帯医学研究所)
- 有川二郎(北海道大学大学院医学研究科病原微生物学)
- 西條政幸(国立感染症研究所ウイルス第一部)
- 水谷哲也(東京農工大学国際家畜感染症防疫研究教育センター伝染病疫学解明部門)
- 遠藤大二(酪農学園大学獣医放射線学教室)
- 新井智(国立感染症研究所感染症情報センター)
- 谷英樹(国立感染症研究所ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
41,292,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本ではBSL4が稼働していないため、ウイルス性出血熱や新興ウイルス感染症等の診断体制は、遺伝子検出・抗原検出法、組換え抗原による血清診断法を逐次整備している。整備した検査系も、ウイルスの変異や新種ウイルスの出現の最新情報を入手し対応手段の向上を図る必要がある。この数年間に新興した出血熱ウイルスには、チャパレ、ルジョ、ブンディブギョエボラウイルス等があり、また中国河南省などで新興出血熱が発生し、新種のSFTSウイルスが分離同定された。これらの診断体制を整備・改良する。また、宿主域を拡大するCDVなどの病原性やその機構を明らかにする。また、HPS、ニパウイルスなどの動物モデル系を開発する。
研究方法
本研究では、新種の出血熱ウイルス等の実験室診断法を確立する。また、新興するウイルス感染症に対応可能なな遺伝子検出法を改良し高感度化する。これらを用いていくつかの地域で疫学的解析を実施して検証する。また宿主域を拡大しているウイルスでは、そのメカニズムを解明し、新興ウイルス感染症として顕在化するかをリスク評価する。また、ウイルス粒子形成とその阻害法に関する基礎研究を進展させる。
結果と考察
「診断法の開発・改良と疫学的解析」では、1) 新種のエボラウイルスと新種のアレナウイルスの診断法の整備、2) 豚のレストンエボラウイルス感染症の診断法と感染の実態、3)南米ハンタウイルス、食虫目ハンタウイルスの診断法の整備、4) 新興ポックスウイルス、食虫目ハンタウイルスの国内の動物の感染の実態解明、5) 変異ウイルス・新種ウイルス・新興ウイルスに対応可能な遺伝子検出法の改良等が成功裏に行われた。さらに国内のラット由来牛痘ウイルスの疫学、ナイジェリアやザンビアでの疫学にも開発された診断法が有効に利用された。また、「宿主域拡大・病原性獲得のメカニズムの解明とと対応法の研究」では、1) サルの致死的CDV感染症の宿主域拡大の分子機構の解明と流行時のウイルスの遺伝子変異の解明、2)ニパウイルスの病原性の分子機構の解明と霊長類発症モデルの開発とワクチン開発、3) ハンタウイルス肺症候群のSCIDマウスモデルの開発と好中球の発症への関与、4)出血熱ウイルス等の粒子形成・出芽機構の解析とその阻害法開発の基礎研究、5)新興アレナウイルスであるルジョウイルスの細胞侵入機構などが明らかにされた。
結論
新型エボラウイルスなど対象ウイルスの遺伝子検出法、抗原検出法、抗体検出法の整備した。各種診断法等に関しては、GHSAGのワークショップや海外のBSL4実験施設を持つ研究所等との共同研究を積極的に進めることにより可能となった。新型ウイルスや新興ウイルスに対応可能な遺伝子検出法に著しい進展が見られた。一方、サルのCDV感染症の流行時のウイルス変異の方向性等を明らかにした。ニパウイルス感染症では霊長類モデル開発とワクチン開発に、ハンタウイルスでは肺水腫発症モデルと発病病理に、重要な知見が得られた。ウイルスの出芽と宿主細胞抵抗性因子との関係では、エボラウイルスのGPによるTetherinの細胞内局在の変化、南米アレナウイルスZ蛋白の粒子出芽に重要なLドメインの同定と関与する宿主因子Tsg101の同定等、今後の抗ウイルス薬開発において重要な知見が得られた。また、ルジョウイルスは遺伝的にも既知のアレナウイルスと大きく異なるが、その細胞侵入機構やレセプターも既知のアレナウイルスとは異なった。
公開日・更新日
公開日
2013-06-06
更新日
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