地方自治体との連携による新型インフルエンザおよび高病原性インフルエンザ変異株、薬剤耐性株等の早期検出、検査診断系の改良および流行把握に関する研究

文献情報

文献番号
201225005A
報告書区分
総括
研究課題名
地方自治体との連携による新型インフルエンザおよび高病原性インフルエンザ変異株、薬剤耐性株等の早期検出、検査診断系の改良および流行把握に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所)
  • 藤田 信之(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
  • 佐藤 裕徳(国立感染症研究所)
  • 齋藤 玲子(新潟大学医歯学系)
  • 影山 努(国立感染症研究所)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,598,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はH22年度に組織した6地方ブロック代表の11地衛研からなるコア・サポート地衛研と感染研(本研究班)との共同研究および分担研究参加機関との連携により、精度管理された診断検査・サーベイランス体制の整備と基礎研究で開発した技術を応用した、機能的で科学的なインフルエンザ検査・株サーベイランスの実施基盤を構築する。
研究方法
1)季節性、H5N1鳥インフルエンザウイルス検査の感度と精度検証のために外部精度評価試験(EQA)パネル、実施要綱の設定とそれに基づいた試験の実施。2) PCRによる薬剤耐性株の同定、感受性試験の実施。3)A(H1N1)pdm09、A(H3N2)およびB型ウイルス全8本ゲノムシーケンスプライマーの設計。4) in silico解析による新規変異マーカーの同定と機能解析。5)2011/12シーズンワクチン接種後のヒト血清抗体を用いた当該年度のワクチンの有効性の評価。
結果と考察
1)前年度にコア・サポート地衛研で実施したPCR検査のEQAの結果をもとに、試験系の改善と簡略化を行い、全国地衛研で実施するための最終戦略案を完成させた。これにより、次年度に全国規模でPCR検査EQAの実施の見通しが立った。EQAの実施により、わが国のインフルエンザウイルスPCR検査精度の向上が可能となった。2)A/H1N1pdm09、A/H3N2およびB型ウイルス全8分節遺伝子塩基配列決定用のプライマーセットの設計が完了したことから、流行ウイルスのリスク因子の発見や評価が速やかにできるようになった。3) in silico解析法の導入により、新規の薬剤耐性変異の同定と耐性化のメカニズム解明への手掛かりを得た。新規変異の同定の成功は、今後全世界で実施される耐性株サーベイランスにおけるチェックマーク情報の提供に貢献した。4)ワクチン接種後の各年齢層のHI血清抗体価を測定し、ワクチンの免疫原性を評価し、国産のインフルエンザワクチンの有用性を明らかにした。
結論
1) PCR検査EQAの全国展開の準備が完了した。次年度に実施予定。全国地衛研の検査技術、精度の改善が期待できる。2)世界最大規模での薬剤耐性株サーベイランスの継続。3)A型、B型全ゲノム解析用プライマーセットの設定完了により、遺伝子側からのウイルスリスク評価が可能となった。3) 株サーベイランスにin silico構造機能解析法を導入し、新規変異の同定と機能解析が可能となった。4)ワクチンの血清学的効果評価を継続する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201225005B
報告書区分
総合
研究課題名
地方自治体との連携による新型インフルエンザおよび高病原性インフルエンザ変異株、薬剤耐性株等の早期検出、検査診断系の改良および流行把握に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所)
  • 藤田 信之(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
  • 佐藤 裕徳(国立感染症研究所)
  • 齊藤 玲子(新潟大学医歯学系)
  • 影山 努(国立感染症研究所)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班で組織した6地方ブロック代表の11地衛研からなるコア・サポート地衛研―感染研・協力研究機関との共同研究体制を基盤として、研究期間中に以下の研究を実施することを目的とした。
1)PCR診断検査の改善と精度向上のために、外部精度管理評価試験(EQA)をコア・サポート地衛研で実施し、問題点の改善により、EQAの全国展開の準備をする。2)PCR法によるインフルエンザ薬剤耐性株検出系の構築と全国地衛研への技術移転、全国的な薬剤耐性株サーベイランスの実施。3)動体力学を用いた新解析法の導入による変異株の機能的解析とリスク評価法の構築。4)インフルエンザワクチン接種により誘導される血清抗体価測定により、ワクチンの有効性評価を継続的に行う。
研究方法
1)季節性、H5N1鳥インフルエンザウイルス検査の感度と精度検証のためにEQAパネル、実施要綱の設定とそれに基づいた試験の実施。2) PCRによる薬剤耐性株の同定、感受性試験の実施。3)A(H1N1)pdm09、A(H3N2)およびB型ウイルス全8本ゲノムシーケンスプライマーの設計。4) in silico解析による新規変異マーカーの同定と機能解析。5)2011/12シーズンワクチン接種後のヒト血清抗体を用いた当該年度のワクチンの有効性の評価。
結果と考察
1) 11地衛研からなるコア・サポート地衛研と感染研(本研究班)との共同研究体制を構築した。これにより、基礎研究チームが開発した検査系、遺伝子解析系、PCR検査EQAをコア・サポート地衛研で予備試験をした後に、全国地衛研へ技術移転する体制が完成し、新技術を導入した検査・サーベイランスの実施が可能となった。2) RT-PCR法による薬剤耐性株の検出系を全国地衛研へ技術移転し、世界最大級の全国的薬剤耐性株サーベイランスを開始した。3) PCR検査のEQA試験をコア・サポート地衛研で実施し、結果の評価および問題点の改良を行った。これにより、全国地衛研を対象としたEQA実施への準備が完了した。4) 全国地衛研の鳥インフルエンザ検査体制に関するアンケート調査を実施し、現状把握をした。5) ハイリスク変異株の出現時に、迅速に全セグメントの塩基配列解析を行えるように、A(H1N1)pdm09型、A(H3N2)型とB型の全セグメント解析プロトコールを開発した。6) ウイルス蛋白質の機能構造の解析環境を整備した。サーベイランスで捉えた抗原変異株、薬剤耐性株の性質変化の解析に応用し、新規のB型ウイルス薬剤耐性変異を同定した。7)研究期間の年度ごとに、成人、高齢者の血清を採取し、ワクチン接種前後でHI抗体価を調査し、ワクチンの有効性の評価を行った。
コア・サポート地衛研-感染研-基礎研究開発グループの3構成からなる共同研究体制から、新規に開発した手法を検査、サーベイランスに応用した機能的、科学的サーベイランスが実施できる基盤整備が完了した。これにより、地衛研全体の技術力、対応能力の底上げへの貢献が期待できる。
結論
1) PCR検査EQAの全国展開の準備が完了した。次年度に実施予定。全国地衛研の検査技術、精度の改善が期待できる。2)世界最大規模での薬剤耐性株サーベイランスの継続。3)A型、B型全ゲノム解析用プライマーセットの設定完了により、遺伝子側からのウイルスリスク評価が可能となった。3) 株サーベイランスにin silico構造機能解析法を導入し、新規変異の同定と機能解析が可能となった。4)ワクチンの血清学的効果評価を継続する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201225005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において全国6地方ブロック代表の11地衛研からなるコア・サポート地衛研―感染研・協力研究機関との共同研究体制が構築されたことで、新型インフルエンザおよび高病原性インフルエンザ変異株などが発生した際に、全国地衛研で迅速かつ適切に病原ウイルスを捉える検査網が強化された。また、基礎研究で開発した新技術を地衛研での診断検査・サーベイランスに応用し、世界最大規模での薬剤耐性株サーベイランスを実施できた。本情報は、WHOや国内医療機関に適宜情報発信し、国内外のインフルエンザ対策に貢献できた。
臨床的観点からの成果
抗インフルエンザ薬剤耐性株の大量スクリーニングを可能にする新技術を本研究班基礎研究グループで開発に成功した。これを全国地衛研―感染研サーベイランス体制に導入し、世界最大規模の薬剤耐性株サーベイランスを2010年度から開始した。これによって、国内での耐性株発生動向を適宜把握でき、週単位で医療機関に情報提供し抗インフルエンザ薬による治療戦略の検討に貢献した。WHOにも情報発信し、国際貢献も果たした。
ガイドライン等の開発
インフルエンザ診断マニュアル(第2版)(感染研レファレンス委員会編:平成24年3月)
高病原性鳥インフルエンザ診断マニュアル(第3版) (感染研レファレンス委員会編:平成24年3月)
インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス実施要綱 (平成22年、23年、24年度)
WHOインフルエンザマニュアル(2011, 2012)
WHOインフルエンザガイドライン(2011, 2012)
その他行政的観点からの成果
本研究では、全国地衛研の検査系、サーベイランス体制の強化のために、その中核を担うコア・サポート地衛研、感染研、協力大学機関研究チームとの連携網を構築し、検査手法の開発、検査・サーベイランス技術の精度維持、改善を行った。これは、厚生労働行政の新型インフルエンザ対策に直接的に貢献した。
その他のインパクト
全国地衛研―感染研サーベイランス体制で得られたインフルエンザ流行株情報、耐性株検出情報は、週単位で感染研HPで公開され、一般国民を含む医療機関で有効活用された。また、毎年更新される国内のインフルエンザワクチン株選定およびWHOワクチン株選定に、本研究班からの成績が使用され、国内外のインフルエンザワクチン行政に直接的に貢献した。2013年度は、2014年度用ワクチン株選定のために、2月にWHO北半球会議へ、2-3月に国内ワクチン選定会議へ、9月にWHO南半球会議へ研究成績を提供する。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
15件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ujike, M., Shimabukuro, K., Mochizuki, K. et al.
Oseltamivir-resistant influenza viruses A (H1N1) during 2007-2009 influenza seasons, Japan.
Emerg. Infect. Dis. , 16 , 926-935  (2010)
原著論文2
Shiino T, Okabe N, Yasui Y et al.
Molecular evolutionary analysis of the influenza A(H1N1)pdm, May-September, 2009: temporal and spatial spreading profile of the viruses in Japan.
PLoS One , 5 , e11057-  (2010)
原著論文3
Ujike, M., Ejima, M., Anraku, A. et al.
Monitoring and characterization of Oseltamivir-resistant pandemic (H1N1) 2009 virus, Japan, 2009-1010.
Emerg. Infect. Dis. , 17 , 470-479  (2011)
原著論文4
M.Nakauchi, M.Ujike, M.Obuchi et al.
Rapid discrimination of oseltamivir-resistant 275Y and -susceptible 275H substitutions in the neuraminidase gene of pandemic influenza A/H1N1 2009 virus by duplex one-step RT-PCR assay.
Journal of Medical Virology , 83 , 1121-1127  (2011)
原著論文5
Harada Y, Ninomiya-Mori A, Takahashi Y et al.
Inactivated and adjuvanted whole-virion clade 2.3.4 H5N1 pre-pandemic influenza vaccine possesses broad protective efficacy against infection by heterologous clades of highly pathogenic H5N1 avian influenza virus in mice
Vaccine , 29 (46) , 8330-8337  (2011)
原著論文6
Kishida N, Fujisaki S, Yokoyama M et al.
Evaluation of influenza virus A/H3N2 and B vaccines on the basis of cross-reactivity of postvaccination human serum antibodies against influenza viruses A/H3N2 and B isolated in MDCK cells and embryonated hen eggs.
Clin Vaccine Immunol. , 19 (6) , 897-908  (2012)
原著論文7
Seiichiro Fujisaki, Emi Takashita, Masaru Yokoyama et al.
A single E105K mutation far from the active site of influenza B virus neuraminidase contributes to reduced susceptibility to multiple neuraminidase-inhibitor drugs
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 429 , 51-56  (2012)
原著論文8
Kazuo Ohnishi, Yoshimasa Takahashi, Naoko Kono et al.
Newly Established Monoclonal Antibodies for Immunological Detection of H5N1 Influenza Virus.
Jpn.J.Infect.Dis , 65 , 19-27  (2012)
原著論文9
Ainai A, Tamura S, Suzuki T et al.
Characterization of neutralizing antibodies in adults after intranasal vaccination with an inactivated influenza vaccine
J Med Virol. , 84 (2) , 336-344  (2012)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225005Z