文献情報
文献番号
201225003A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ等の院内感染制御に関する研究
課題番号
H22-新興-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
切替 照雄(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所感染症制御研究部)
研究分担者(所属機関)
- 大久保 憲(東京医療保健大学 医療情報学科)
- 賀来 満夫(東北大学病院)
- 河野 文夫(国立病院機構 熊本医療センター )
- 川名 明彦(防衛医科大学校 内科学2・感染症・呼 吸器 )
- 加藤 はる(国立感染症研究所 細菌第二部)
- 齋藤 昭彦(新潟大学医学部大学院医歯学総合研 究科小児科学分野 )
- 西岡 みどり(国立看護大学校 看護学部基礎看護学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
23,145,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1)医療現場で実施可能な全職員参加の院内感染対策に必要な手法の開発する、2)地域医療機関の間で感染症対策の情報を共有化できる地域感染症危機管理ネットワークモデルの構築する、3)厚生労働省医政局指導課長通知「医療機関等における院内感染対策について」の留意事項の実施状況を明らかにする。
研究方法
医療現場で実施可能な全職員参加の院内感染対策に必要な手法を分子疫学的に検証する。全国の医療機関の感染制御チーム(ICT)の協力を得て、(標準予防策と感染経路別予防策等)(手洗い及び手指消毒)(職業感染防止)(環境整備と環境微生物調査)(手術と感染防止)(新生児集中治療部門での対応)に関して、医療現場で実施可能な手順を作成し評価する。
平成23年6月17日付け平成17年厚生労働省医政局指導通知に記載載されている事項、「消毒と滅菌のガイドライン」にて示された院内での消毒と滅菌に関する推奨事項の実施状況を把握する目的も加味して調査項目を検討し作成する。
平成23年6月17日付け平成17年厚生労働省医政局指導通知に記載載されている事項、「消毒と滅菌のガイドライン」にて示された院内での消毒と滅菌に関する推奨事項の実施状況を把握する目的も加味して調査項目を検討し作成する。
結果と考察
多剤耐性緑膿菌、メタロβラクタマーゼ産生エンテロバクター・クロアカ、肺炎桿菌及びパントーエ・アグロメランスによる院内感染の事例解析を実施した。宮城県・東北地域において、感染症危機管理地域ネットワークモデルの構築を目的とし、ITの利用を含め、大震災など甚大な災害においても活用可能な、インフルエンザや薬剤耐性菌感染症などの新興・再興感染症に関するリアルタイムな情報の共有化かつ双方向性の情報伝達に関する研究を行った。避難所における結核曝露者への取り組みなど様々な感染症事例を報告した。香港、米国、英国の地域における感染症対策とネットワーク、院内感染症へ取り組みを調査した。「医療機関における院内感染対策について」で追記された主な事項は、感染制御チームに係る事項、多剤耐性菌感染アウトブレイクの定義と報告、医療機関の連携に関する事項が、各医療機関においてどの程度実施されているかなどについて調査するとともに、消毒・滅菌に関わる考え方の動向に関するアンケート調査を実施しその現状を把握し行政としての対応の必要性などについてまとめた。新型インフルエンザ等の新興感染症発生時の院内感染対策を検討するため、2009年の新型インフルエンザパンデミック出現時の医療機関における院内感染対策の実態調査、アシネトバクター菌血症のリスク要因の検討を実施した。新生児集中治療室における医療関連感染サーベイランスシステムの開発と導入しその有用性を検証した。院内薬剤耐性菌サーベイランスデータの検討を行った。その結果、MRSAおよびESBLの約3割が他院からの持ち込み症例であり、感染防止策手順の確認・徹底・教育を行うことで薬剤耐性菌の検出数を低下させた。A型インフルエンザの多発事例解析や海外の医療施設から持ち込まれたと考えられる多剤耐性アシネトバクター保菌事例において連携により、早期に検出でき、適切な対策を実施することで院内での伝播を防ぐことができた。クロストリジウム・ディフィシル64 菌株を解析し、国内優勢株3 タイプを同定した。欧米で問題となっているPCR ribotype 027 は1 症例から分離されたが、我が国の医療機関で本タイプの菌株が問題となっているエビデンスはなかった。ディフィシル 感染症の多発事例では、教育活動の支援を行った。開発したLAMP法によるPCR ribotype 027 同定法を重症例からの分離株において実際に活用した。『中小規模の医療施設向けサーベイランス手順書(案)』における「手指衛生サーベイランス」と「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)サーベイランス」を多施設で実施する調査を完了した。また震災後に公刊された文献を網羅的に検討し、『避難所における感染対策マニュアル』同マニュアルを検証した。
結論
(1)医療現場で実施可能な全職員参加の院内感染対策に必要な手法の開発、(2)地域医療機関の間で感染症対策の情報を共有化できる地域感染症危機管理ネットワークモデルの構築、(3)わが国の感染制御分野での消毒・滅菌に関わる考え方の動向を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
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