骨髄・臍帯間葉系細胞由来脳移行性シュワン細胞による脳梗塞の神経修復治療

文献情報

文献番号
201224124A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄・臍帯間葉系細胞由来脳移行性シュワン細胞による脳梗塞の神経修復治療
課題番号
H24-神経・筋-若手-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松瀬 大(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 拓也(九州大学大学院医学研究院神経内科学 )
  • 吉村 怜(九州大学大学院医学研究院神経内科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳梗塞は罹患率の高い疾患であり、かつ発症後の症状を改善する治療法に乏しため、多くの患者が後遺症に苦しんでいるのが現状である。そのもっとも大きな理由の一つとして、中枢神経は通常軸索再生作用がほとんどない点が挙げられる。近年脳梗塞の新たな治療法の一つとして、細胞移植治療が注目されてきている。様々な細胞を用いた脳梗塞への移植研究がなされているが、中枢神経へも軸索再生を促す細胞が有用な細胞源となりうる可能性がある。本研究では、中枢、末梢神経へ軸索再生促進作用をもたらすシュワン細胞に注目した。そのシュワン細胞を間葉系細胞から誘導することを試み、それを脳梗塞モデルへ移植する研究を行う。脳梗塞後の障害された軸索の再生を促し、神経症状を改善させる新たな治療法を確立することをめざす。
研究方法
Wistar Ratの骨髄間葉系細胞(BM-MSCs)を採取、培養。beta-mercaptoethanol(BME)、All-trans retinoic acid(ATRA)で処理した後、human basic fibroblast growth factor (FGF)、forskolin (FSK)、platelet-derived growth factor-AA (PDGF)、heregulin-beta1-EGF-domain (HRG)のtrophic factorを加えることでシュワン細胞への誘導を試みた。DA Rat、ヒト臍帯からも同様に誘導を試みた。誘導した細胞については、シュワン細胞のマーカーや、PSA-NCAMの発現を免疫組織化学、RT-PCR等にて確認した。中大脳動脈閉塞モデルラットを作成し、皮質、線条体にPBS群、BM-MSCsの移植を行い、行動評価と組織学的評価を行った。誘導シュワン細胞の中枢移行能力については、DA Ratのexperimental autoimmune encephalomyelitis(EAE)モデルに対する移植実験でも確認された。
結果と考察
Wistar Rat、DA Rat、ヒト臍帯から、シュワン細胞への誘導に成功。誘導した細胞はS100β、PMP22、GFAPなどのシュワン細胞のマーカーを発現しており、定量的RT-PCRを施行したところ、S100βの発現は誘導の最終段階で急激に上昇することがわかった。細胞の中枢移行性に必要といわれているPSA-NCAMの発現を調べたところ、誘導前のBM-MSCsには発現が軽度見られたものの、誘導後は発現が低下していることが免疫細胞化学にて確認された。しかしEAEへの移植実験では、誘導シュワン細胞の生着は良好であった。中大脳動脈閉塞モデルラットを作成し、病側の皮質、線条体へ経頭蓋的にPBS(n=3)、BM-MSC(n=5)の移植を行った。Limb placing testは、PBS群、BM-MSCs群それぞれ6.7±0.6、5.6±1.1(p=0.19)、Water maze testは、latencyが93±25、86±15(p=0.62)、speding timega14.3±5.1、19.4±5.1(p=0.23)、number of crossingが1.0±1.7、1.6±1.1(p=0.77)であった。また脳梗塞体積は、対側大脳半球と比較した梗塞巣体積の割合はそれぞれ39.2±6.1%、33.8±5.3%(p=0.27)であった。いずれもBM-MSCs群により改善を認めたが、統計的に有意な差は出ていない。
結論
ラット(Wistar、DA)骨髄間葉系細胞、ヒト臍帯間葉系細胞からそれぞれシュワン細胞を誘導し、シュワン細胞特異的なマーカーの発現も確認した。移植実験については現在施行途中であるが、MSCsのみを移植した群はPBS群を比較して神経機能や脳梗塞体積における改善は、今のところ統計的に有意なレベルではない。誘導シュワン細胞の移植実験を次に行うことで、誘導することの優位性に関して確認していく予定である。また移植細胞の中枢神経移行性、生着性を高める操作についても検討を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224124Z