レット症候群の早期診断と治療をめざした統合的研究

文献情報

文献番号
201224119A
報告書区分
総括
研究課題名
レット症候群の早期診断と治療をめざした統合的研究
課題番号
H24-神経・筋-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 雅之(独立行政法人国立精神・神経医療センター 神経研究所疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 松石 豊次郎(久留米大学医学部小児科学)
  • 白川 哲夫(日本大学歯学部小児歯科学)
  • 高橋 悟(旭川医科大学医学部小児科学)
  • 青天目 信(大阪大学医学部小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レット症候群(RTT)は年齢依存的に多彩な症状を呈する特異な発達障害である。RTTの原因遺伝子であるメチル化CpG結合タンパク2(MECP2)の基礎研究は進展しているものの、臨床研究は少なく、確立された治療法や療育法がない。本研究では、患者データーベース(DB)を構築し、基礎研究とあわせてトランスレーショナルリサーチを展開し、科学的根拠に基づいた生物マーカーと早期診断法を確立し、創薬・治療法の開発を目指す。
研究方法
患者DBのあり方を検討し、これまでの疫学研究を参考に患者登録票を作成した。あわせて、患者登録票記入のための手引きを作成した。また、これまでの診断基準を見直し、国際的な基準をもとに診断基準を作成した。
臨床研究:①前思春期における活性型グレリン(GRL)比率がRTTの身体発育(低身長・小頭症)の生物マーカーとなる可能性があることが分かった。今後さらに症例数を増やした検討を行なう。
基礎研究:①MBDの点変異による違いを明らかにするために、L929細胞の発現解析を行なった。②マウス骨髄の移植細胞のキメラ化を行なった。今後、Mecp2欠損マウスの効率的な骨髄移植手技を確立する。③Mecp2欠損マウスの無呼吸回数を調べ、明期に多いことが分かった。免疫組織化学的解析を行ない、延髄呼吸関連中枢のモノアミン作動性シナプスの減少とミルナシプランの無呼吸回数の改善がみられた。今後詳細な検討を行なう。④hIGFBP3+/Mecp2-マウスの表現型解析を行ない、最重度であることが分かった。⑤PWS-ICの解析を行ない、父方アレル特異的なクロマチン脱凝集の維持とメチル化CpG認識分子の母方アレルのコンパクトなクロマチン維持に重要であることが分かった。今後、15q11-13領域のクロマチン状態に関わる因子を同定し、MeCP2を介した遺伝子発現制御機構を明らかにする。⑥CDKL5遺伝子変異マウスを作成し、解析を行なった結果、シナプス機能異常が学習障害に関連していることが分かった。
結果と考察
DBの構築は臨床医、臨床遺伝医、基礎研究者、患者代表者などによる研究チームを組織し、患者登録制によるDBシステムを作った。また、これまでの見直しにより新たに診断基準を作成した。今後、DBを充実させ、治験や臨床研究の基礎データとして活用する予定である。臨床研究では、グレリンの生物学的意義を検証し、有効性が示唆された。また、CDKL5とFOXG1の臨床遺伝学的意義を評価し、診断基準への適合を検討し、臨床病型と遺伝子異常との異同を明らかにした。基礎研究では、MECP2のメチル化DNA結合領域(MBD)の点変異の研究より、臨床症状の軽症化に関与する候補分子の同定を行なった。マウス骨髄移植の技術的確立とMecp2欠損アストロサイトの生物学的意義を解明した。また、Mecp2欠損マウスの呼吸生理の病態を調べ、治療法開発の足がかり的研究を行った。IGFBP3の過剰発現が脳にもたらす影響を調べ、シナプスの安定化に関与していることを明らかにした。さらに、15q11-13領域のMECP2を介する遺伝子発現制御機構を解明し、非典型(早期発症てんかん)RTTの原因遺伝子であるCDKL5の発症機序を明らかにした。
結論
患者DBは患者家族会と共同で進めることができた。今後、臨床研究を視野にした症例の蓄積と啓蒙活動を行う。臨床研究では、生物マーカーの臨床応用へ発展が期待できる成果が得られた。基礎研究では、トランスレーショナルリサーチを展望した分子レベルの解析とマウスによる研究が進展し、科学的根拠に基づいた創薬・治療法の開発への歩みがみられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224119Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,570,000円
(2)補助金確定額
21,570,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,693,106円
人件費・謝金 2,716,135円
旅費 1,644,651円
その他 3,946,108円
間接経費 4,570,000円
合計 21,570,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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