筋ジストロフィー患者のリハビリテーションに用いる尿中病態マーカー物質の測定法

文献情報

文献番号
201224118A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィー患者のリハビリテーションに用いる尿中病態マーカー物質の測定法
課題番号
H24-神経・筋-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
裏出 良博(公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所 分子行動生物学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 雅文(神戸学院大学 総合リハビリテーション部)
  • 竹内 敦子(神戸薬科大学 薬学部)
  • 岩田 裕子(国立循環器病研究センター 分子生理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者らはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の患者の筋壊死領域では炎症物質であるプロスタグランジン(PG)D2の産生が亢進することを見出し、その産生を司る造血器型PGD合成酵素に対する阻害剤を投与するとDMDモデル動物(mdxマウスとDMDビーグル犬)の筋壊死が抑制されることを証明した。本研究では、尿中PGD2代謝物(PGDM-tetranor)がDMDの病態進行度を予測する非侵襲性マーカーになる可能性を検証し、その簡易測定法の開発に取り組む。
研究方法
mdxマウスにトレッドミルを用いた運動負荷を行い、その前後での腓腹筋での筋壊死体積の変化をX線CT造影により測定し、尿中PGD2代謝物の濃度変化を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)により測定した。
拡張型心筋症モデルハムスターと2種類の心筋症モデルマウスを用いて心筋での筋壊死と尿中PGD2代謝物の関連性を検討した。
DMD患者団体の協力を得て、4歳から15歳までの117名の患者の早朝第一尿191点と、同年齢の健常児童71名の早朝第一尿79点を収集して、彼らの尿中PGD2代謝物量をLC-MS/MSにより測定した。また、その尿量は尿中クレアチニンにより補正した。
尿中PGD2代謝物の簡易測定法を開発するために、PGDM-tetranorをKeyhole Limpet Hemocyanin (KLH) 蛋白質に結合させた複合体を、PGD2産生能を失ったリポカリン型PGD合成酵素と造血器型PGD合成酵素のダブル・ノックアウトマウス(Balb/c系)に免疫して、常法による免疫動物の脾細胞を用いたモノクローナル抗体の作製を行なった。
結果と考察
運動負荷はmdxマウスの筋壊死体積を増加させ、尿中PGD2代謝物も増加させた。この結果は、DMDの病態進行の新たな指標として尿中PGD2代謝物が使用できることを示す。
拡張型心筋症モデルハムスターと2種類の心筋症モデルマウスでも尿中PGD2代謝物の増加を確認した。従って、尿中PGD2代謝物は心筋での筋壊死の病態進行の指標としても使用できる可能性がある。
筋ジス患者の尿中PGD2代謝物濃度(6.90±0.35 ng/mgクレアチニン)は、健常児(3.08±0.15)に比べ、2.2倍も高い値を示した。さらに、その濃度は病状の安定した4歳から7歳までの患者(4.75±0.32)では健常児(3.55±0.30)に比べ1.3倍ほど高いだけだが、筋委縮が進み運動機能が急激に低下する8歳から15歳までの患者(7.69±0.44)では健常者(2.90±0.17)の2.7倍も高い値を示し、病態の進行につれて尿中PGD2代謝物が増加することが明らかになった。
PGE2代謝物(PGEM-tetranor)とトロンボキサンA2代謝物(2,3-dinor TXB2)を比較対照としたスクリーニングを行い、PGDM-tetranorに対して100倍以上の特異性を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを独立5クローン得た。いずれの抗体も米国Cayman社から供与されたPGDM-tetranorに対するポリクローナル抗体と同程度の結合親和性と特異性を示した。これらのモノクローナル抗体を利用したELISA法や尿検査紙を作製することで、尿中PGD2代謝物の簡易測定法が開発できる。
結論
尿中PGD2代謝物はDMDの病態進行の新たな指標として使用できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224118Z