アトピー関連脳脊髄・末梢神経障害の病態解明と画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
201224113A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー関連脳脊髄・末梢神経障害の病態解明と画期的治療法の開発
課題番号
H24-神経・筋-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 楠 進(近畿大学医学部神経内科)
  • 吉田 眞理(愛知医科大学加齢医学研究所神経病理部門)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 錫村 明生(名古屋大学環境医学研究所神経免疫学)
  • 萩原 綱一(九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学分野)
  • 松下 拓也(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
  • 松瀬 大(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
  • 吉村 怜(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 アトピー関連脳脊髄・末梢神経障害には、アトピー性脊髄炎、Churg-Strauss症候群(CSS)が含まれるが、これに加えてCSSの診断基準を満たさないアトピー関連末梢神経炎や脳障害が存在する。さらに平山病やHopkins症候群においてもアトピー素因の病態への関与が報告され、広範囲な神経疾患病態にアトピー素因が関与している可能性が示唆されている。本研究では、これらのアトピー関連脳脊髄・末梢神経障害に共通する病態、および疾患毎に特徴的な病態を明らかにし、それらを標的とした治療法の開発を目的としている。
研究方法
1. アトピーに関連した臨床像の十分に解明されていない神経障害の解析(吉良、楠、桑原、萩原):アトピー性脊髄炎患者、CSSを含むアトピー関連末梢神経障害患者の128チャネル脳波計による精密な脳波解析や脳磁図による解析。
2. 髄液でのサイトカイン産生細胞の解析(桑原、吉村):髄液の網羅的サイトカイン・ケモカイン解析、髄液T細胞のケモカイン受容体解析、T細胞内サイトカイン産生能測定、Th9細胞の検出等。
3. アトピー性脊髄炎剖検例での免疫病理学的解析(吉田):世界でも唯一のアトピー性脊髄炎剖検症例の脊髄を用いて、サイトカイン・ケモカイン、T細胞、B細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軸索、髄鞘等の免疫染色による解析を行っている。
4. アトピー性脊髄炎モデルマウスの作成(吉良、錫村、城戸):6週齢の雌C57Bl/6系の背部に卵アルブミンによる接触性皮膚炎を惹起し、これに伴う脊髄後根神経節や脊髄後角の炎症の有無、脊髄へのT細胞浸潤の有無およびミクログリアの活性化状態を確認した。
5. 病態に基づいた治療指針の作成(吉良、楠、桑原、錫村):アトピー性脊髄炎、平山病、CSSおよびHopkins症候群の各疾患における治療指針を策定する。
6. IL-9の神経障害における役割の解析と抗IL-9療法の開発(錫村、吉良):アトピー性脊髄炎患者髄液で増加するIL-9の神経障害における役割を培養細胞系やマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎系などで解析し、抗IL-9療法の開発を継続して行う。
7. 新診断基準による国際的な共同臨床疫学調査の実施(吉良、楠、桑原):新診断基準の自験例以外の日本人集団での感度、特異度の検証後に、アトピー性脊髄炎の報告がある海外施設(韓国Ajou University、イタリアAzienda Ospedaliera University、英国National Hospital for Neurology and Neurosurgery)と新規診断基準による共同臨床疫学調査を実施する。
結果と考察
1. 現在対象患者情報を集積し解析を行っている。
2. 現在吉村らはアトピー性脊髄炎患者髄液、桑原らは平山病患者髄液のサイトカインプロフィールをそれぞれ解析中。
3. 世界でも唯一のアトピー性脊髄炎剖検症例の脊髄を用いて、サイトカイン・ケモカイン、T細胞、B細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、軸索、髄鞘等の免疫染色による解析を行っている。
4. アトピー素因の誘導のために、6週齢のマウスに卵アルブミンを連日腹腔内注射した。処置3週後のマウス脊髄後角ではミクログリアの活性化が見られ、神経障害の準備状態と考えられた。今後はこの前処置モデルに気管支喘息やアトピー性皮膚炎を誘発し、その影響を観察する予定である。
5. 上記結果を踏まえ、アトピー性脊髄炎、平山病、CSSおよびHopkins症候群の各疾患における治療指針を策定すべく検討中である。
6. アトピー性脊髄炎患者髄液で増加するIL-9の神経障害における役割を培養細胞系やマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎系などで解析し、抗IL-9療法の開発を継続して行う。上記モデルマウスの進捗状況により順次検討を行う予定。
7. 新診断基準の自験例以外の日本人集団での感度、特異度の検証後に、アトピー性脊髄炎の報告がある海外施設(韓国Ajou University、イタリアAzienda Ospedaliera University、英国National Hospital for Neurology and Neurosurgery)と新規診断基準による共同臨床疫学調査を実施する予定である。
結論
今回は平成24年度から3年間の研究機関の初年度にあたるため、十分なアトピー関連脳脊髄・末梢神経障害に伴う神経障害の検討には至っていない。我々は、病態生理解析の足がかりとして、いままで世界で前例のない上記疾患のモデルマウス作成を試みており、現時点では順調に進んでいる。今後はさらに厳密な病態の再現を目指し、さらに治療介入による症状改善、ひいては実際の患者サンプルにおける確認を行なって疾患の原因解明、治療法開発を試みる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224113Z