筋ジストロフィー診療における医療の質の向上ための多職種協働研究

文献情報

文献番号
201224111A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィー診療における医療の質の向上ための多職種協働研究
課題番号
H23-神経・筋-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 秀徳(独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部) 医歯(薬)学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒畑 創(独立行政法人国立病院機構大牟田病院)
  • 石川 悠加(独立行政法人国立病院機構八雲病院)
  • 大江田 知子(独立行政法人国立病院機構宇多野病院)
  • 大矢 寧(独立行政法人国立精神神経医療研究センター)
  • 貝谷久宣(社団法人日本筋ジストロフィー協会)
  • 川井 充(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 黒田 健司(独立行政法人国立病院機構旭川医療センター)
  • 小長谷 正明(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院)
  • 駒井 清暢(独立行政法人国立病院機構医王病院)
  • 小森 哲夫(独立行政法人国立病院機構箱根病院)
  • 今 清覚(独立行政法人国立病院機構青森病院)
  • 斉田 和子(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院)
  • 齊藤 利雄(独立行政法人国立病院機構刀根山病院)
  • 島崎 里恵(独立行政法人国立病院機構西別府病院)
  • 諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院)
  • 多田羅 勝義(徳島文理大学保健福祉学部)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 中山 可奈(谷田部可奈)(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 西田 泰斗(独立行政法人国立病院機構熊本再春荘病院)
  • 信國 圭吾(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)
  • 橋口 修二(独立行政法人国立病院機構徳島病院)
  • 福田 清貴(独立行政法人国立病院機構広島西医療センター)
  • 福留 隆泰(独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター)
  • 藤村 晴俊(独立行政法人国立病院機構刀根山病院)
  • 松村 隆介(独立行政法人国立病院機構奈良医療センター)
  • 丸田 恭子(独立行政法人国立病院機構南九州病院)
  • 三方 崇嗣(独立行政法人国立病院機構下志津病院)
  • 三谷 真紀(独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院)
  • 吉岡 勝(独立行政法人国立病院機構西多賀病院)
  • 吉岡 恭一(独立行政法人国立病院機構松江医療センター)
  • 和田 千鶴(独立行政法人国立病院機構あきた病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋ジストロフィー診療に関わるいろいろな職種が,筋ジストロフィー患者や家族の高年齢化に対応できる診療体制を構築・検討し,長期療養における「医療の質」の確保および在宅療養での患者・家族の「生活の質」を向上させる方策を開発する.
研究方法
研究課題として①インターネット・ITを活用した療養支援法の開発と利用,②教育入院を利用した在宅療養支援法の開発,③呼吸管理と呼吸器使用に関連したリスク管理,④筋ジストロフィー患者への就学・就業支援,⑤筋ジストロフィー診療における患者や家族の生活の質に関する評価法の開発,⑥筋ジストロフィー患者に関する種々のデータベース構築,の6課題を中心に研究を進める.各施設の分担研究者が実施する課題を選定した上で,医師が中心となって研究を遂行する.
平成24年度はプロジェクト課題として「気管内喀痰自動吸引システムの筋ジストロフィー療養に及ぼす効果の検討」「人工呼吸器の機種変更にともなう換気量の変化」「筋ジストロフィーにおける栄養評価法の開発」を設定し,各研究分担施設が共同で研究を行った.
結果と考察
1)プロジェクト研究
(1) 人工呼吸器の各機種のフロー測定基準が異なることで機種変更の際にトラブルが起こる危険があり,測定基準の統一を求めることで安全な医療につながると推測される.
(2) 気管内喀痰自動持続吸引システムは,今後,多施設多数例での検証を行う必要はあるが,導入により,療養環境や患者QOLの改善,医療コストの減少が期待できる.
(3) 筋ジストロフィー患者の摂取栄養量の分析,血液検査データと体組成との関連性の検討により,筋ジストロフィーの進行にあわせて必要なNST介入の指針を作成することが可能となり,患者の生命予後・QOLを改善できる.
2)課題研究
①筋ジストロフィー病棟でのITの活用状況が明らかとなり,今後の療養環境の整備,新たに出てきた課題(ルール作り,倫理)が示された.今後,患者のQOLをより向上させ,その豊かな才能を伸ばしていくためには,多職種による協力や外部機関との連携の検討,セキュリティー面での安全性やトラブル対応,機器の保守等について,院内における一定のルールの検討が必要である.
②調剤薬局へのアンケート調査では,今回の取り組みに関して必要性・有用性があるとの回答が得られた.今後,直接的また継続的な情報共有が可能となることが考えられる.
③地域との関わりを通して得たデザインの評価や広報活動の手応えはグループにとっての成功体験と言える.この体験がグループの自発的な発展を促していると考えられた.よって,在院就労を地域との関わりの中で,支援者は成功体験を積み重ねるような支援が重要であると考えられた.
④呼吸管理におけるMICの測定法が検討されair stacking可能群においては,症例に応じた評価が必要ではあるが,PICよりもMICを得る吸気介助を選択する方が有用性が高いと推測された.また,看護師が呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を習得し実践することは意義があることが示唆された
⑤筋ジストロフィー患者の対人関係の問題は,単に知的能力やパーソナリティー,あるいは社会体験の乏しさだけによって説明できるものではない.7%から26%にのぼる自閉症傾向は,一般的サンプルでの自閉症有病率に比べはるかに高く,筋ジストロフィーという疾患と自閉症傾向の関連性の強さを示唆するものである.筋ジストロフィーにおける自閉傾向の検討は,国内国外において限られたものであり,詳細に検討する必要がある.
⑥14年間の継続的情報収集で,筋ジストロフィー病棟の高齢化,重症化など医療依存度の経年的な上昇は明らかである.人工呼吸器不具合情報に関しては,PMDAの「医療安全情報」,国立病院機構の「国立病院機構人工呼吸不具合情報共有システム」があるが,いずれも迅速性や情報流布の両方向性に難点がある.当ネットワークは,これらに比し,迅速性,相互性には特筆すべきものがある.研究班での裏付けを必要としない形でのネットワークシステム継続・維持の方策が望まれる.
⑦カルパイン3異常は骨格筋障害以外に,心伝導障害をきたす可能性が示唆された.
結論
人工呼吸器に関するプロジェクト研究では,呼吸管理を行う上での重要な事実が明らかとなり、今後の診療においても注意が必要である.のべ600人以上の多職種にわたる研究者が研究および研究班の班会議に参加し,筋ジストロフィー医療の質の向上と情報の共有に有用であると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224111Z