文献情報
文献番号
201224101A
報告書区分
総括
研究課題名
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療効果最大化のための研究
課題番号
H22-神経・筋-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
西野 一三(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
- 野口 悟(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部 )
- 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
- 森 まどか(吉村 まどか)(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)は、比較的高齢発症で、主に遠位筋(前頸骨筋)が侵される遺伝性の筋疾患である。本疾患はシアル酸生合成過程の重要な酵素をコードするGNE遺伝子の変異による疾患である。我々は世界で初めて本疾患のDMRVモデルマウスの作製に成功し、発症前のDMRVマウスにシアル酸やその前駆体を発症期まで投与し続けることによりミオパチー発症を完全に予防することに成功した。本年度は、活性酸素種(ROS)のDMRVの発症への関与を明らかとすること、ミオパチー発症マウスへシアル酸化合物の治療効果を明らかにすることを目的とした。
また、GNE遺伝子変異が確定されたDMRV患者の自然歴に関する統括的な研究がなされておらず、評価指標は明らかでない。迫り来る治験に有用な項目選定のための横断・前向き観察研究を行うこと、また、三好型遠位型ミオパチー日本人患者でのDysferlin遺伝子変異の特徴を明らかにすることを目的とした。
また、GNE遺伝子変異が確定されたDMRV患者の自然歴に関する統括的な研究がなされておらず、評価指標は明らかでない。迫り来る治験に有用な項目選定のための横断・前向き観察研究を行うこと、また、三好型遠位型ミオパチー日本人患者でのDysferlin遺伝子変異の特徴を明らかにすることを目的とした。
研究方法
抗酸化薬投与試験は、モデルマウスと同腹仔コントロールにN−アセチルシステインを、25週齢から57週齢まで飲水投与した。また、シアル酸化合物投与試験は、遊離シアル酸あるいはシアリルラクトース(6’-SL )を55週齢から80週齢まで飲水にて投与した。治療効果の評価は、運動能力解析、骨格筋収縮力測定、骨格筋病理、組織シアル酸の定量、毒性試験により行なった。また、DMRVマウスおよび同腹仔コントロール由来初代骨格筋細胞を用いて、酸化ストレス薬剤により誘導されるROS産生を測定した。
DMRV患者の自然歴研究では、インフォームドコンセントの得られたNCNP病院神経内科通院中の成人患者を対象にした。17筋の徒手筋力テスト(合計MMT)、6分間歩行(6MWT)、大腿四頭筋筋力測定(HHD)、粗大運動評価尺度(GMFM)、握力、ピンチ力、咬合力、lean body mass、skeletal muscle mass index (SMI)、CK、%FVC、心機能(EF, FS) 、心電図およびホルター心電図、Barthel Index (BI)、modified Rankin Scale (mRS)、SF-36を用いた。
Dysferlin遺伝子解析は、ゲノムDNAを55個のエクソンごとに近傍のイントロンを含めPCR-SSCP法にて遺伝子変異をスクリーニングし、直接塩基配列決定法にて確認した。
DMRV患者の自然歴研究では、インフォームドコンセントの得られたNCNP病院神経内科通院中の成人患者を対象にした。17筋の徒手筋力テスト(合計MMT)、6分間歩行(6MWT)、大腿四頭筋筋力測定(HHD)、粗大運動評価尺度(GMFM)、握力、ピンチ力、咬合力、lean body mass、skeletal muscle mass index (SMI)、CK、%FVC、心機能(EF, FS) 、心電図およびホルター心電図、Barthel Index (BI)、modified Rankin Scale (mRS)、SF-36を用いた。
Dysferlin遺伝子解析は、ゲノムDNAを55個のエクソンごとに近傍のイントロンを含めPCR-SSCP法にて遺伝子変異をスクリーニングし、直接塩基配列決定法にて確認した。
結果と考察
N-アセチルシステイン投与群ではマウスの運動能力に用量依存的な改善が見られた。また、腓腹筋の収縮力、筋線維径と筋病理にも改善が見られた。また、筋萎縮遺伝子と酸化ストレス関連遺伝子の発現低下も観察された。このことは、DMRVにおいて、ROSが発症機序に重要な役割を示すこと、筋萎縮のみならず、筋力低下にも関わることが考えられた。DMRVマウス由来細胞は高い細胞内ROS濃度を示した。H2O2によるROS産生も高値を示したが、血清およびNeuAc添加により抑制された。このことから、DMRV細胞ではヒドロキシラジカルに対する除去能力が特異的に低下し、それがDMRVの病態形成に関わっている可能性が示された。
6’-SL投与により、モデルマウスは筋力低下、筋萎縮からの用量依存的な回復を示した。一方、NeuAc投与群では著明な改善がみられなかった。このことから、6’-SLの投与は、発症骨格筋のシアル酸の回復と骨格筋機能の改善につながるものと考えられた、また、シアル酸化合物の服用法として徐放剤の使用は有効であると思われる。
DMRVの横断・前向き観察研究には、27名が参加した。歩行不能者ではMMT、GMFM、HHD、握力、%FVC、lean body mass(%BW, leg)、SMI、CK、BI、mRS、SF-36のPCSとMCS が有意に低かった。一年間の前向き研究には19名が参加し、6MWT 、握力が有意に低下した。一年間の変化は緩徐であり、治験薬の治療効果判定などでは薬剤の運動能力維持効果を判定するためには前観察期間をおくことが必要と考えられた。Dysferlin遺伝子解析は91家系に42種類の変異を見出した。遺伝子型と表現型の関連が示唆された。
6’-SL投与により、モデルマウスは筋力低下、筋萎縮からの用量依存的な回復を示した。一方、NeuAc投与群では著明な改善がみられなかった。このことから、6’-SLの投与は、発症骨格筋のシアル酸の回復と骨格筋機能の改善につながるものと考えられた、また、シアル酸化合物の服用法として徐放剤の使用は有効であると思われる。
DMRVの横断・前向き観察研究には、27名が参加した。歩行不能者ではMMT、GMFM、HHD、握力、%FVC、lean body mass(%BW, leg)、SMI、CK、BI、mRS、SF-36のPCSとMCS が有意に低かった。一年間の前向き研究には19名が参加し、6MWT 、握力が有意に低下した。一年間の変化は緩徐であり、治験薬の治療効果判定などでは薬剤の運動能力維持効果を判定するためには前観察期間をおくことが必要と考えられた。Dysferlin遺伝子解析は91家系に42種類の変異を見出した。遺伝子型と表現型の関連が示唆された。
結論
DMRVモデルマウスの筋力低下へのROSの関連が示唆され、ヒドロキシラジカルの除去効果の低下が、病態と関連する可能性が示された。発症したDMRVモデルマウスへの6’-SL投与が、高い治療効果が認められた。
短期間で変化が見られる6MWT、GMFM、握力、MMTは治験の評価項目の候補と考えた。dysferlin遺伝子変異の特徴を解析したが、変異は遺伝子全体に広く分布し4種類の日本人に多い変異があった。
短期間で変化が見られる6MWT、GMFM、握力、MMTは治験の評価項目の候補と考えた。dysferlin遺伝子変異の特徴を解析したが、変異は遺伝子全体に広く分布し4種類の日本人に多い変異があった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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