文献情報
文献番号
201224100A
報告書区分
総括
研究課題名
超細密染色体分析から捉え直すヒト発達障害研究
課題番号
H22-神経・筋-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松本 直通(横浜市立大学 医学研究科環境分子医科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 岡本伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
- 橋本亮太(大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター)
- 加藤光広(山形大学医学部発達生体防御学講座 小児医科学分野)
- 小坂仁(神奈川県立こども医療センター 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
28,263,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Copy Number Variation (CNV)の発見によりヒト脳神経疾患ゲノム解析は新たな局面を迎えた。ほぼ同一のCNVが精神遅滞症候群やてんかんあるいは自閉症などの発達障害を含む多様なヒトの疾患を惹起していることが明らかになり、これら多様な疾患群の共通項がCNV(のみ)であるという新たな「genotype-first」の時代を迎えた。本研究は、先端技術を用いてこれらの発達期の様々な障害を対象に網羅的な解析を行いCNVの視点からこれらの疾患群を再定義し、CNVを利用した新たな効率的診断法と責任分子単離を行うことを目的とする。
研究方法
I.症例の集積
各研究分担者の協力を得、てんかん関連疾患・精神遅滞関連症候群ならび自閉症を広く集積する。
II.高密度アレーの比較検討
Affymetrix社Cytoscan HD(260万マーカーを搭載)、Agilent社とNimbleGen社の再高密度アレーを併用しCNV検出の感度や精度等を比較検討する。
III.疾患責任遺伝子の単離
CNV異常を認めないCoffin-Siris症候群典型例とSTXBP1・ARX異常を認めない大田原症候群典型例に対して次世代シーケンサーを用いた全エクソン領域の解析により新規責任遺伝子を特定する。さらに複数の微細欠失例の存在から責任遺伝子であることを強く疑われていたKDM6A遺伝子の変異解析をMLL2遺伝子変異陰性例のKabuki症候群に対して行う。
各研究分担者の協力を得、てんかん関連疾患・精神遅滞関連症候群ならび自閉症を広く集積する。
II.高密度アレーの比較検討
Affymetrix社Cytoscan HD(260万マーカーを搭載)、Agilent社とNimbleGen社の再高密度アレーを併用しCNV検出の感度や精度等を比較検討する。
III.疾患責任遺伝子の単離
CNV異常を認めないCoffin-Siris症候群典型例とSTXBP1・ARX異常を認めない大田原症候群典型例に対して次世代シーケンサーを用いた全エクソン領域の解析により新規責任遺伝子を特定する。さらに複数の微細欠失例の存在から責任遺伝子であることを強く疑われていたKDM6A遺伝子の変異解析をMLL2遺伝子変異陰性例のKabuki症候群に対して行う。
結果と考察
I.症例の集積
症例集積は順調に進行し既に自閉症は200例・精神遅滞関連症候群980例・てんかん関連症候群480例を超えた。Kabuki症候群も既に80例を超えて集積した。
II.高密度アレーの比較検討とCNV検出
Affymetrix社Cytoscan HDをprimary platformとして、他のプラットフォームの高密度アレーを併用した解析を進めcytoscan HDアレーの秀逸性を確認した。
III.疾患責任遺伝子の単離
Coffin-Siris症候群:Coffin-Siris症候群(以下CSSと称す)を対象に高密度マイクロアレーで解析を行ったが非典型例でのみ染色体微細欠失(6q25領域の9.2 Mb欠失)を認めるも、典型例10例でCNV異常はなかった。典型例5例を対象に全エクソーム解析を行い責任遺伝子SMARCB1異常を2例に同定した。これを契機にSWI/SNF複合体のサブユニットをコードする16遺伝子をスクリーニングし、SMARCA4異常を6例、SMARCE1異常を1例、ARID1A異常を3例、ARID1B異常を5例で認め、解析したCSS22症例中19症例でSWI/SNF複合体サブユニットの何れかの異常を認めた(Nat Genet 2012)。
大田原症候群:大田原症候群で既知責任遺伝子のARX及びSTXBP1異常の無いEIEE12例において全エクソーム解析を行い3例でKCNQ2のミスセンス変異を検出した。両親検索の結果de novoで生じた変化であった。このことはEIEEの原因としてKCNQ2が重要な位置を占めていることを強く示唆する(Ann Neurol 2012)。
Kabuki症候群:Kabuki症候群の原因を全エクソーム解析を用いてMLL2の単離した(ワシントン大学との共同研究、Nat Genet 2010)。2012年にMLL2陰性のKabuki症候群でKDM6Aを含むCNV異常(微細欠失)が他グループより報告され(Am J Hum Genet, 2012)、KDM6Aが第二の責任遺伝子として浮上した。我々は、MLL2異常を認めないKMS症例32例のKDM6A変異スクリーニングを施行し3例でKDM6A変異を認め、KDM6AがKabuki症候群の第二の責任遺伝子であることを証明した(Hum Mut 2013)。
症例集積は順調に進行し既に自閉症は200例・精神遅滞関連症候群980例・てんかん関連症候群480例を超えた。Kabuki症候群も既に80例を超えて集積した。
II.高密度アレーの比較検討とCNV検出
Affymetrix社Cytoscan HDをprimary platformとして、他のプラットフォームの高密度アレーを併用した解析を進めcytoscan HDアレーの秀逸性を確認した。
III.疾患責任遺伝子の単離
Coffin-Siris症候群:Coffin-Siris症候群(以下CSSと称す)を対象に高密度マイクロアレーで解析を行ったが非典型例でのみ染色体微細欠失(6q25領域の9.2 Mb欠失)を認めるも、典型例10例でCNV異常はなかった。典型例5例を対象に全エクソーム解析を行い責任遺伝子SMARCB1異常を2例に同定した。これを契機にSWI/SNF複合体のサブユニットをコードする16遺伝子をスクリーニングし、SMARCA4異常を6例、SMARCE1異常を1例、ARID1A異常を3例、ARID1B異常を5例で認め、解析したCSS22症例中19症例でSWI/SNF複合体サブユニットの何れかの異常を認めた(Nat Genet 2012)。
大田原症候群:大田原症候群で既知責任遺伝子のARX及びSTXBP1異常の無いEIEE12例において全エクソーム解析を行い3例でKCNQ2のミスセンス変異を検出した。両親検索の結果de novoで生じた変化であった。このことはEIEEの原因としてKCNQ2が重要な位置を占めていることを強く示唆する(Ann Neurol 2012)。
Kabuki症候群:Kabuki症候群の原因を全エクソーム解析を用いてMLL2の単離した(ワシントン大学との共同研究、Nat Genet 2010)。2012年にMLL2陰性のKabuki症候群でKDM6Aを含むCNV異常(微細欠失)が他グループより報告され(Am J Hum Genet, 2012)、KDM6Aが第二の責任遺伝子として浮上した。我々は、MLL2異常を認めないKMS症例32例のKDM6A変異スクリーニングを施行し3例でKDM6A変異を認め、KDM6AがKabuki症候群の第二の責任遺伝子であることを証明した(Hum Mut 2013)。
結論
最終年度である平成24年度までに極めて質の高い発達障害関連疾患1500例超を集積した。高解像度のマイクロアレー解析において500例を超える症例の2次解析(アレー解析+他方での検証)を終了し、多数の疾患関連CNVを同定した。一方でCNV異常の無い症例について次世代シーケンサーを用いた全エクソーム解析法の開発を進め、高率に点変異を同定するシステムを確立した(平成22-23年度中期まで)。CNV解析とバックアップシステムとしての次世代解析を組み合わせて3疾患の遺伝子単離を行った。CNV解析と次世代解析は補完的で発達障害関連疾患の解析には両プラットフォームが必要である。本研究の当初の目標の多数の発達障害関連疾患を単離することが可能であった。
公開日・更新日
公開日
2013-04-10
更新日
-