リアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いた統合失調症の認知リハビリテーション

文献情報

文献番号
201224094A
報告書区分
総括
研究課題名
リアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いた統合失調症の認知リハビリテーション
課題番号
H24-精神-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 哲也(玉川大学 脳科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松島 英介(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,695,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いた統合失調症の認知機能改善プログラムを作成し、統合失調症の症状の改善・回復への有用性を調べることを目的とする。これまでにリアルタイムfMRIによるバイオフィードバックを用いて、精神科疾患の症状改善を目指した研究は世界的にみても報告されておらず、非常に独創性の強い、チャレンジングな研究である。
 平成24年度は、統合失調症の認知機能障害を探り、バイオフィードバックに用いる認知機能改善プログラムの作成を行った。
研究方法
統合失調症では様々な認知機能障害が認められる。中でも社会認知能力やコミュニケーション機能の欠陥は、統合失調症の症状の中でも非常に特徴的なものである。我々は、社会性コミニュケションを通じ、自分の思考・行動に間違いがないか?という self reflection機能を働かせ、自分の行動・思考を常に確認し社会環境に適応させていくことができる。しかし、統合失調症ではself reflection機能を働かせることができず、自分の思考・行動を環境に適応させていくことが難しいのではないかと考えられる。統合失調症のself referential source memoryの異常について、self referential source memoryと社会認知の成績の相関が非常に高く、統合失調症は健常者に比べ成績が悪いということが報告されている。また、self referential source memoryに関連するrostral medial prefrontal cortex (mPFC)の活動が統合失調症では低下していると報告されている。
 これまでの統合失調症のself reflection機能を検討した研究では、自分が生成した単語と、予め用意されていた単語の比較を行っているためreflection機能は非常に弱い。統合失調症では、sense of agencyといった症状、つまり自分で行った行動についても自分で行ったという感覚が薄いという症状を呈する。そこで、本研究では、自分で判断した結果について他人からのはたらきかけにより、その回答が本当に正しいかを見直すという課題を用いて、統合失調症のself reflection機能異常を明らかにする為にfunctional MRIを用いて、関連する脳活動を計測することで検討した。健常者と統合失調症において、 self reflection に関連するanterior insulaとother reflectionに関連するprecuneusの活動のパターンについても検討し、reflection異常の詳細についても検討を行った。
結果と考察
elf reflectionに関連する脳活動を検討するために、念押し時の活動から黄色い四角で囲まれた領域、ならびにそれ以外の部分で初めに提示された画像と2番目に提示された画像の違いの有無の判断をしている時の活動を差分した。健常者では、insula、PCC、ACC、STGの活動が認められた。一方統合失調症では、insula、PCC、ACC、STG、MTGの活動が認められた。健常者と統合失調症の活動の差を確認するために、健常者と統合失調症の差分画像を求めた結果、健常者は統合失調症に比べanterior insulaの活動が高く、統合失調症は健常者に比べPCCの活動が高かった。ROI解析を行い、被験者毎のAnterior insulaとPCCの活動を求め、anterior insulaとPCCの活動パターンの検討を行った。その結果、schizphreniaではanterior insulaの活動はPCCに比べ有意に低く、健常者では逆にanterior insulaの活動はPCCに比べ有意に高かった。また、PCCの活動は、schizophreniaがnormalに比べ有意に高く、anterior insulaの活動は、normalがschizophreniaに比べ有意に高かった。
結論
統合失調症はself reflectionが十分働かなく、自分のこととしてとらえることができないため、自身の行動、思考を十分顧みる反応が出にくいのではないかと考えられる。それにより、行動、思考の洗練化が行われにくいのではないかと思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224094Z