専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究

文献情報

文献番号
201224093A
報告書区分
総括
研究課題名
専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤 孝夫(国立精神・神経医療研究センター医療連携福祉部)
  • 八木 深(国立病院機構花巻病院)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部)
  • 松原 三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 山本 輝之(成城大学)
  • 椎名 明大(千葉大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,395,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法医療に携わる人材の確保と地域特性を踏まえた専門家の育成に関する研究、精神保健判定医の質の担保に関する研究、司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の支援と研修方法の開発に関する研究、指定通院医療機関の治療機能の向上と多職種・多機関の連携を効果的に行う方策に関する研究、司法精神医療における行政機関の役割に関する研究、地域における処遇を含めた医療観察法制度に対する法学的視点からの研究を行った。
研究方法
ウェブシンポジウムを開催した。また、司法精神医学に携わるモチベーションを育てるためのアプローチについて研修会を行い、その効果を検証した。鑑定・審判にあたっての考え方を整理し、精神保健判定医等養成研修会(以下「養成研修会」)の運営の改善提言と検討を行った。また厚生労働省判定事例研究会(以下「判定事例研究会」という)は仮想事例の形で実施した。英国の司法精神医療・福祉のケアマネジメント手法等について調査し、さらに、現行の「クライシスプラン」について、指定通院医療機関や地域関係機関で理解しやすく利用しやすい「クライシスプラン」の様式を開発し、指定入院医療機関の多職種チーム向けのマニュアルを作成した。医療観察法再入院事例調査、精神保健福祉法上の入院に関する調査、死亡事例に関する調査、ならびに第6回北陸医療観察法研究会、第7回通院医療等研究会を実施した。司法精神医療と行政機関との情報共有と連携や協働のあり方、さらに地域における支援体制整備の課題を検討した。また、司法精神医療から地域精神保健福祉活動に移行した事例を中心に適切かつ継続的な医療の体制整備状況、対象者の社会復帰現状について検証を試みた。入院によらない医療および地域精神医療における対象者の処遇に関する法的枠組みを踏まえて、そこにおける問題点の抽出を行った。
結果と考察
ウェブカンファレンスにより地域間格差が明確となった。また、多職種チームや関係機関の連携体制の構築により医療観察法と一般精神医療の技術を相互に汎化できる可能性が示された。指定入院医療機関の偏在は地域処遇の格差に影響していた。クロザピンなどの強化の重要性が示された。人材育成では育成の方法論の構築と実際の育成業務による検証を繰り返していく必要性が示唆された。鑑定経験の有無や医療観察法への理解、鑑定書の記載方法や共通評価項目についての理解の差が審判の格差の背景として考えられた。グループ討議方式は養成研修会で効果的であった。クロザピンの処方とその効果判定後に処遇を検討すべきという結果となった。英国では「CPA」がケアマネジメントとして重要な役割を果たしており、また、英国では司法的な手続きや司法的な権利擁護制度、司法精神医療など内容を含む特殊な資格である、認定ソーシャルワーカー(ASW)が創設されていた。さらに、倫理教育を我が国の医療観察法関連の研修においても重視していくべきであることが示唆された。医療観察法通院処遇中の再入院及び精神保健福祉法入院は、一般精神医療での全国デイケア通所者の再入院までの日数とほぼ同程度であったが、精神保健福祉法の入院が同法の再入院を防いでいた。再入院はほぼ6カ月以内に生じ、入院医療機関と通院医療機関間の連携体制の改善が必要であり、医療観察法による通院医療では多職種チームでの手厚い支援が極めて効果的であった。保健所での医療観察法への関心が高まっていたが、支援経験数は少なかった。保健所での共通評価項目の活用頻度は少なく、司法関係機関との連携は進んでいなかった。住民の理解を得ることや地域での継続したネットワークやシステム構築の必要性が示唆され、居住系のサービスの不足が課題となっていた。また指定通院医療機関が少ないこと、社会復帰調整官の増員必要であること、通院医療を行うための対象者の受け入れ先を探すことがきわめて困難であること、対象者に関する情報の共有に伴う個人情報管理の問題、処遇困難な対象者が通院医療となった場合には現在の精神保健観察では十分な対応ができないこと、の6つが明らかとなった。
結論
ウェブカンファレンスやグループ討議方式を利用した育成方法の有効性が明らかとなった。さらに本法の医療機関での治療抵抗性統合失調症の治療体制の構築が必要である。司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う体制については英国が先進的であり、その手法を参考にすることが有用である。地域精神保健福祉への移行では保健所の役割が大きいが、支援経験数は少なくマンパワー不足が示された。指定通院医療機関や社会復帰調整官数の増員や対象者の受け入れ先を増やすこと、対象者の個人情報保護体制の構築、統合失調症以外への精神保健観察の整備・拡充、精神科救急と移送制度の整備、改善が必要であることが指摘された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224093Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,500,000円
(2)補助金確定額
13,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,517,865円
人件費・謝金 3,139,463円
旅費 2,856,941円
その他 2,881,033円
間接経費 3,105,000円
合計 13,500,302円

備考

備考
利息分の支出のため

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-