高次脳機能障害者の社会参加支援の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201224090A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害者の社会参加支援の推進に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 深津玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 白山靖彦(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 生駒一憲(北海道大学病院・リハ科)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科・高次機能障害学)
  • 市川 忠(埼玉県総合リハセンター)
  • 枦山日出男(東京都心身障害者福祉センター)
  • 山田和雄(名古屋市大社会復帰医学)
  • 野村忠雄(富山県高志リハビリテーション病院)
  • 渡邉 学(大阪府急性期・総合医療センター・リハ科)
  • 永廣信治(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 丸石正治(県立広島大学保健福祉学部)
  • 蜂須賀研二(産業医科大学・リハ医学)
  • 太田令子(千葉県千葉リハビリテーションセンター)
  • 種村 純(川崎医療福祉大学・感覚矯正学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高次脳機能障害者が、ライフステージに応じて社会参加の目標をもち、医療・福祉サービスの利用により社会参加できる社会の仕組みを作ることを目的とする。
高次脳機能障害者の就労について、福祉就労レベルの当該障害者の福祉サービス利用を促進する。
一方、学童期就学について、小・中学生の就学体制の構築の基礎研究を実施する。
加えて、失語症者と高次脳機能障害者の施設共同利用の実態について調査する。
研究方法
 研究組織はすべてを統括する研究代表者と全国を10に分割したブロックを統括する研究分担者で構成した。ブロックは北海道、東北、関東甲信越、東京、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州沖縄とした。研究事業遂行にあたっては研究代表者が主催する会議に研究分担者が参加し、討議に加わることで、全国的に統一された事業遂行になることを図ることにより、主として以下の6項目を実施した。
1.ブロック会議を通じた支援拠点機関による地域支援ネットワーク構築活動の強化
2.自治体ごとの就労支援体制の実態調査と問題点の抽出
支援拠点機関を通じて相談件数等の把握だけでなく就労率等の統計を取ることを通じて、一般就労に関する問題点の把握と対策を結果としてまとめる。特に、学生時に高次脳機能障害者となり、それを起点として就労を目指す者の実態についても調査する
3.福祉就労レベルの高次脳機能障害の生活実態と受け入れ施設の現況に関する調査開始
4.特別支援学校に在籍する高次脳機能障害の児童生徒と支援拠点機関との連携・協力体制の構築及び支援の在り方に関する検討
5.失語症患者の就労及び福祉サービス利用のあり方検討 
結果と考察
結果:全都道府県に設置された支援拠点機関は合計70箇所となり、そこに配置された支援コーディネーターは合計295名となった。全支援拠点機関における相談支援件数(のべ件数)は、直接相談43,028件、間接相談28,983件、合計72,011件(前年比7,316件増)と増加した。
 特定の地域にある自立支援法通所・入所施設を対象にして調査した高次脳機能障害の受け入れ状況から、実際に受け入れている施設は回答施設の1/4程度であった。今後この分野の職員に向けた研修等の必要が考えられる。
 初等中等教育段階にある高次脳機能障害の児童生徒の就学に向けて、特別支援教育行政、特別支援教育に係る学識経験者から施策および動向の情報を得るとともに、文献を中心に支援体制について調査した。
 失語症患者の福祉サービス利用の実態から、失語症患者が障害者として社会参加の現状が明らかになった。
 画像診断陰性例の中から軽度外傷性脳損傷の可能性のある症例を抽出してその医学的属性について分析した。
考察:支援拠点機関業務は相談件数で代表されるように、増加していた。増加の程度は低下しているものの、潜在障害者が相談に訪れるようになれば再び増加の程度が上昇する可能性はある。
高次脳機能障害者の日中活動支援に関連して、通所・入所施設の利用実態の分析をしたところ受け入れをしている施設は回答施設の1/4程度であり、その理由には高次脳機能障害者への対応に不慣れであることが挙げられる。従って、この分野の職員に向けた研修が必要であると考えられる。失語症者の社会参加は十分でなく、そのあり方について検討される必要がある。外傷性脳損傷を原因疾患とする画像所見陰性例の中で受傷時の状態がMTBIであった可能性のある症例は全相談者の0.5%であった。高次脳機能障害をもつ症例の中には一定数のMTBIと考えられる症例がいることを考慮して、適切に対応する必要があると考えられる。
結論
 全国の支援拠点機関の活動はこれまでの中で最も活発であり、高次脳機能障害支援普及事業は当該年度の目標を達成したと言い得る。
 一般就労レベルより重症度の高い高次脳機能障害者の日中活動及び福祉就労を支援するためには受け入れ施設の職員への理解を深める必要がある。
 小中学生の就学および失語症者の社会参加について研究の継続が必要である。
 画像所見陰性例の中には一定数のMTBIであった高次脳機能障害者がいる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224090Z