新型H5インフルエンザワクチン製造株の開発・前臨床試験・抗原量測定に関する研究

文献情報

文献番号
199800098A
報告書区分
総括
研究課題名
新型H5インフルエンザワクチン製造株の開発・前臨床試験・抗原量測定に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
田代 眞人(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 板村繁之(国立感染症研究所)
  • 西村秀一(国立感染症研究所)
  • 堀内清(細菌製剤協会、千葉県血清研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
64,422,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1997年に香港でトリH5インフルエンザウイルスの小規模な流行が発生したため、ワクチン製造に向けた開発研究に着手した。その過程で、国立感染研において遺伝子組み換えによるウイルスの弱毒化に世界で初めて成功した。今後、ワクチンが緊急かつ大量に必要となる事態に備えて、早急にワクチン株の開発、トリウイルスに由来するワクチンの安全性の確認等を研究・解析する必要がある。本研究では、昨年に香港で流行した新型ウイルスに対するワクチンの開発・製造を目標として、以下の研究を行った。
研究方法
①ワクチン製造株の研究開発:遺伝子組換えによる弱毒したウイルスについて、大量生産を可能にする増殖性高い製造株の開発を検討した。②前臨床試験による安全性の解析:トリインフルエンザウイルス由来のワクチン及び遺伝子組換えによるワクチンの製造および接種を行った経験が無いので、前臨床試験のデザインを研究した。③SRID法による迅速抗原量検定法の評価・分析:2日間でワクチンの抗原量を得て、必要な場合にワクチンの緊急製造・供給を可能にする体制を整備するために、SRID法の実施条件、ワクチン力価の設定方法、卵内中和法とSRID法の比較評価等について研究・分析を行った。
結果と考察
1)リバース・ジェネティクスを利用したワクチン製造株作製方法の確立:インフルエンザワクチンの製造には、候補株ウイルスを発育鶏卵に馴化させて高増殖性とする必要がある。今回の新型インフルエンザウイルスを弱毒化したワクチン候補株については、通常使用するヒト由来ウイルスを用いて遺伝子導入を行うと、ヒトに対する感受性・病原を獲得してしまう危険性がある。そのために、ウイルスの発育鶏卵への馴化・適応をもたらす遺伝子変異の同定および馴化ウイルスの選択方法を検討した。 2)ワクチン製造株の病原性試験、外来性ウイルス等の混入否定試験:ワクチン製造株については、製造過程における安全性を確保する必要がある。そのために、発育鶏卵、ニワトリ、マウスにおける病原性試験法を検討した。また、ワクチン製造株について高感度のトリレトロウイルス等外来性ウイルス迷入否定試験方法を確立した。3)試作ワクチンの試験製造:前臨床試験に用いるための試作ワクチンを、GMPを考慮して細菌製剤協会を通じてワクチンメーカーに依頼して作製した。4)試作ワクチンの前臨床試験:わが国において、遺伝子組換えによるインフルエンザワクチンの製造経験は無い。従って、今回開発されたワクチンに関して前臨床試験を行うために、必要な前臨床試験のデザインを研究し、実施計画を作製した。更に、この計画に従って前臨床試験を実施し、その結果を解析した。5)検定期間の短縮のためのSRID法の技術的課題の検討と評価、分析:新型インフルエンザ出現時等におけるワクチンの緊急製造・供給を可能にするためには、2日間で結果を得ることができるSRID法を用いた抗原量の測定によってワクチンの力価を評価出来れば、大幅な時間の短縮となる。そのために、ワクチン力価の設定方法、卵内中和法とSRID法の比較検討・評価等についての研究・解析を行い、SRID法による抗原量でワクチンの力価評価を検討した。
結論
本研究では、トリ由来のウイルスおよび遺伝子組換えワクチン候補株より、緊急時に大量製造しうるワクチン研究開発と、試験ワクチンについて前臨床試験を中心とした安全性に関する解析を行い、更に、緊急時に備えてより簡便なワクチン抗原量の迅速検定法(SRID法)の評価・解析を行った。その結果、必要な場合に新型インフルエンザワクチンの緊急製造および緊急接種の可能性が開かれた。

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