精神障害者保健福祉手帳の判定マニュアルの作成及び実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201224088A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者保健福祉手帳の判定マニュアルの作成及び実態把握に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学 2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 順一郎(岡山市こころの健康センター)
  • 山崎 正雄(高知県立精神保健福祉センター)
  • 黒田 安計(さいたま市こころの健康センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,004,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者保健福祉手帳(以下「手帳」)は、精神保健福祉法によって規定された国内共通の制度でありながら、自治体ごとに、その判定に差異があることはこれまでも指摘されてきた。また、平成23年に手帳の診断書様式が改正され、発達障害や高次脳機能障害に関する情報を得やすくなり、同時に、生活能力の状態について具体的な程度・状態等について記載する欄が新たに設けられた。そうした改正も踏まえ、本研究は手帳の等級判定マニュアルを新たに策定することを目指している
研究方法
1.等級判定業務の実態に関する研究;全国67か所の精神保健福祉センターに対して、アンケート調査を実施した。第1部では、手帳によって利用可能な各自治体の制度について訊ねた。また第2部では、各自治体における手帳の等級判定の実態と等級判定方針について訊ねた。
2.等級判定における不一致に関する研究;20ケースの模擬症例を作成し、全国67都道府県・政令指定都市の審査判定会議における等級判定のシミュレーションを依頼した。模擬症例ごとに等級判定を行うことと、その判定理由などの記載を求めた。
3.手引き・指針に関する研究;「等級判定業務の実態に関する研究」班と共同で、全国の精神保健福祉センターに対してアンケート調査を行い、等級判定に関して自治体が独自に制定したマニュアル等の有無、等級判定に関連した委員間の申し合わせ事項の有無、自治体独自に作成した診断書の記載マニュアル等の有無について調査した。さらに、手帳の判定で問題になりうると考える点についても訊ねた
結果と考察
1.等級判定業務の実態に関する研究
67施設中64施設から回答があった(回収率95.5%)。手帳によって利用できる制度については、各自治体においてかなりの差異があった。等級判定の実態と判定方針についても、項目によっては自治体間で大きな違いが認められた。また扱う疾患圏により、自治体間で回答の傾向に差異の大きいものと、そうでないものがあった。
このような結果から、来年度以降の作業について以下のような方向性が示された。来年度、等級判定マニュアルの原案を作成するに当たって、例えば「認知症を手帳の対象とするか」のような、大多数のセンターの判定方針が一致している命題に関しては、大多数のセンターに共通している判定方針に沿った方向でマニュアル原案を策定することになる。一方で、例えば「『神経症』を主病名とする手帳の診断書を認めるか」のような、自治体によって等級判定の方針の相違が目立つ領域については「多数意見に従う」という単純なマニュアル策定は不可能であろう。したがってこれらの領域に関しては、各領域の専門家の等級判定に関する意見も参考にして、整合性のある等級判定方針を作る作業が必要である。
2.等級判定における不一致に関する研究
全国67の精神保健福祉センターに模擬症例20ケースの等級判定を依頼し、63か所の精神保健福祉センターから回答を得た(回答率94.0%)。いずれの模擬症例においても等級判定が分かれ、1級から3級までのすべての等級に判定が分かれたものも、20症例中6症例あった。自治体間でこのような等級判定のばらつきが認められたことから、各自治体における判定基準に違いがあることが推測された。
 今回の等級判定シミュレーションの結果を解析する中で特に注目された点として、診断書にどの程度の情報を求めるのか、年齢をどのように扱うか、診断書のどの項目の情報を等級判定上重要視するのか、特にばらつきの目立つ疾患群の扱い、初診年月日および推定発病年月の取り扱いなどが挙げられた。来年度の等級判定マニュアル原案の策定においては、これらの検討課題について、一定の指針を示す必要がある。 
3.手引き・指針に関する研究
全国67か所のセンターのうち、本研究に関する回答については、62か所から有効な回答が得られた。約9割の自治体では独自のマニュアルは作成されていなかったが、約45%の自治体で等級判定に関連した委員間の申し合わせ事項があることが明らかとなった。また半数弱の自治体で、独自に診断書作成医療機関向けの記載マニュアルを作成していることが明らかになった
結論
精神障害者保健福祉手帳によって利用可能な制度については各自治体によってかなりの差異があった。また等級判定の現状と等級判定方針については、自治体間でばらつきの少ない項目と、ばらつきの大きい項目に分かれていた。模擬症例による等級判定シミュレーションの結果にも、かなりのばらつきが認められた。来年度の等級判定マニュアル原案の作成においては、これらの結果を踏まえて「障害者福祉」の基本的なツールとして整合性のある等級判定基準の策定を試みたい

公開日・更新日

公開日
2013-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224088Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 499,847円
人件費・謝金 789,062円
旅費 995,130円
その他 1,719,961円
間接経費 1,196,000円
合計 5,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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