睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究

文献情報

文献番号
201224085A
報告書区分
総括
研究課題名
睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究
課題番号
H24-精神-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神生理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 徹男(秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系精神科学講座)
  • 井上 雄一(公益財団法人神経研究所)
  • 石郷岡 純(東京女子医科大学医学部精神医学講座)
  • 大熊 誠太郎(川崎医科大学薬理学教室)
  • 大塚 邦明(東京女子医科大学 東医療センター )
  • 弘世 貴久(東邦大学医療センター・糖尿病・代謝・内分泌センター)
  • 宮本 雅之(獨協医科大学医学部)
  • 新野 秀人(香川大学医学部精神神経医学講座)
  • 山下 英尚(広島大学病院精神科)
  • 北島 剛司(藤田保健衛生大学医学部・精神神経科学講座)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部神経精神医学講座)
  • 小曽根 基裕(東京慈恵会医科大学精神医学講座)
  • 中島 亨(杏林大学医学部・精神神経科学教室)
  • 亀井 雄一(国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部)
  • 渡辺 範雄(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学)
  • 中川 敦夫(国立精神・神経医療研究センター・トランスレーショナ ルメディカルセン ター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,469,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、不眠医療における睡眠薬の適正使用のあり方に関わる最新のエビデンスに立脚したガイドラインの策定を行った。分担研究者は睡眠医療、臨床・基礎薬理、エビデンス精神医療等の研究に関わる国内の中核施設の研究者に加え、日本睡眠学会、日本臨床精神神経薬理学会等関連諸団体の責任ある立場の者から構成し、日本の不眠医療の現状を踏まえた上で、睡眠薬を用いた不眠医療のあり方に関する既存のエビデンスを検討するとともに、学際的な視点からガイドライン策定を行うことを目的とした。
研究方法
担当者は各自の専門性に従い、臨床疑問を設定したうえで出版バイアスにとらわれない包括的な文献検索を行い、該当する国内外の既存のエビデンスを抽出した。具体的な検索方法としては、メタ検索エンジン(ACCESSSS Federated search)、コクランライブラリー(CENTRAL)、MEDLINE(PubMed)を用いて、Patients(患者もしくは問題)、Intervention(介入方法)、Comparison
(対照とする介入方法)、Outcome(アウトカム)、いわゆるPICOキーワードをかけてエビデンスを抽出した。採用した文献にはOxford Centre for Evidence‒based Medicine Level of Evidenceに準じてエビデンスレベルを付与した。また、各クリニカルクエスチョンでの治療者向け勧告(推奨)にはMinds(Medical Information Network Service)に準じて推奨グレードを付けた。一部のクリニカルクエスチョンについては、必要に応じてデータ抽出やメタアナリシスを施行し、コクラン・ライブラリーでもサマリー作成に使用されているエビデンスの質と推奨の強さを系統的に段階付けするGRADEアプローチで評価した。上記の方法で国内外の既存データの収集と精査・整理を行い、最終的にガイドラインに反映すべき事項についてエキスパートによる直接討議を十分な回数実施することでコンセンサスを形成した。そのほか、本研究では、1)一般成人を対象とした不眠症および睡眠薬に関する意識調査、2)通院・入院患者を対象とした睡眠薬・抗不安薬の依存性に関する多施設共同実態調査を実施し、クリニカルクエスチョンの設定の際の参考資料とした。最終的に、不眠症の薬物療法、認知行動療法、減薬・休薬トライアルから構成される不眠症の治療アルゴリズムとその応用指針を作成した。
結果と考察
本ガイドラインでは、不眠医療を安全かつ効果的に行うために必要となる、最新のエビデンスに立脚した実践的フレームワークを作成した。とりわけ、本ガイドラインは睡眠薬の適正使用に焦点を当てて作成した。不眠症の初期治療から始まり、薬物療法の最適化、睡眠衛生指導や認知行動療法など非薬物療法の活用、各診療科に特有の不眠医療の課題、慢性不眠症への対応、常用量依存や耐性など長期服用時の臨床的問題点、そして、治療のゴール設定と睡眠薬の減薬・休薬方法など、各治療ステージにおいて遭遇する代表的な40のクリニカルクエスチョンを設定した。各クリニカルクエスチョンに関連する既存のエビデンスに基づき、また十分なエビデンスが存在しないクリニカルクエスチョンに関してはコンセンサスに基づき、理解しやすい患者向けの解説および治療者向けの勧告(推奨)を行った。得られたエビデンスを元に、不眠症の薬物療法、認知行動療法、減薬・休薬トライアルから構成された不眠症の治療アルゴリズムおよび応用指針を作成した。
結論
本研究では不眠医療における睡眠薬の適正使用のあり方に関わる最新のエビデンスに立脚したガイドラインの策定を行った。分担研究者は睡眠医療、臨床・基礎薬理、エビデンス精神医療等の研究に関わる国内の中核施設の研究者に加え、日本睡眠学会、日本臨床精神神経薬理学会等関連諸団体の責任ある立場の者から構成し、睡眠薬を用いた不眠医療のあり方に関する既存のエビデンスを検討するとともに、学際的な視点からガイドラインを策定した。本ガイドラインは、実地臨床で応用しやすい実用性の高い診療情報を数多く含んでおり、本ガイドラインを用いることで、日本の不眠医療の質の向上と均てん化が進むことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224085C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内外の複数の不眠症の診断治療ガイドラインが存在するが、主として不眠症の診断と急性期治療に主眼置かれており、中長期的な睡眠薬使用のあり方に関する指針は未だ整備されていなかった。また、近年の科学的エビデンスの整理もなされていない。本研究により、睡眠薬を用いた不眠医療のあり方に関する国内外の既存のエビデンスを収集・整理するとともに、学際的な視点から不眠医療の問題点、今後の課題を抽出することができた。
臨床的観点からの成果
本ガイドラインは、精神神経科などの不眠医療の専門科のみならず、睡眠薬の処方件数が多い一般身体科など広く実地臨床の現場で活用できる実用性の高いガイドラインとなるよう配慮された。睡眠薬の不眠改善効果を最大限に引き出しつつ、副作用を最小限に抑えて、不眠医療の真のエンドポイントである患者のQOL向上を達成するためのリスク・ベネフィット比に優れた質の高い不眠医療を実践するための現時点で最良の指針となるものと期待される。
ガイドライン等の開発
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」とその応用指針を作成した。
その他行政的観点からの成果
本ガイドラインを遵守することで、睡眠薬を用いた不眠症の薬物療法の適応と最適化が明示されるのみならず、認知機能障害等の副作用や、社会問題化している常用量依存や乱用、多剤併用、高用量処方などの長期服用時の臨床的問題の抑止に寄与すると考える。
その他のインパクト
2013年6月中旬に公開予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224085Z