動脈ラベル標識法(ASL)を用いた精神疾患の脳画像解析法の確立

文献情報

文献番号
201224081A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈ラベル標識法(ASL)を用いた精神疾患の脳画像解析法の確立
課題番号
H23-精神-若手-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
太田 深秀(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,617,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の研究により、統合失調症における局所脳変化が明らかとなってきている。また形態学的変化のみならず、これまでSPECTやPETを用いた脳血流検査を対象とした疾患研究でも統合失調症患者における特異な変化が認められている。しかしながら、現状では疾患診断は医師の診察によってのみ行われており、重症度の判定や予測も現症などからのみ判断されてきた。このたび我々はmultimodal neuroimagingを用いて統合失調症における変化について注目した。
研究方法
当センターで統合失調症と診断を受けた方36人と年齢、性別を適合させた健常被験者42人を対象に3TのMRIスキャナにより3D-T1weighted imageとDTI、pCASLによるASLを撮影し、健常群と疾患群における差異を検証した。また、今回のASLの検証にはBPMを用い各ボクセルの皮質容量を共変量に入れることで、局所容積効果による影響を除外した。
結果と考察
合失調症患者群では左下前頭前野の皮質容量、上側頭領域~左外包~左前頭前野領域のFA値の低下を認めた。さらに統合失調症患者では左前頭前野などにおける脳血流低下を確認しており、前述の大脳皮質容量を対象とした検証、白質病変を対象とした検証で認められた障害部位と合致した。この結果はこれまでの先行研究で統合失調症における変化が確認されている領域と一致した。統合失調症では陽性症状の消長と関連して脳血流に増減があることがしばしば指摘されていることから、左下前頭前野の血流低下はtraitとして指標に利用できる可能性が示唆された。
結論
今回の結果から、局所容積効果による影響を除外した脳血流量データにおいて統合失調症では健常者と比較して左下前頭前野の血流低下を認めており、同領域は形態学的変化を確認した領域と合致していた。 形態学的および機能的画像データを組み合わせることで、精神疾患の解明が今後さらに発展していくものと期待された。

公開日・更新日

公開日
2013-04-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224081Z