発達障害者の生涯発達における認知特性面からの能力評価方法の開発と活用ガイドライン作成に関わる研究

文献情報

文献番号
201224079A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害者の生涯発達における認知特性面からの能力評価方法の開発と活用ガイドライン作成に関わる研究
課題番号
H23-精神-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上野 一彦(独立行政法人大学入試センター)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 信也(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 松田  修(東京学芸大学 教育学部教育心理学講座)
  • 繁桝 算男(帝京大学 文学部心理学科)
  • 石隈 利紀(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,312,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、生涯発達において支援を要するさまざまな人々の実態を正確に把握するための一つの側面として認知特性を考える。特に、障害領域として十分な成熟を見ていない発達障害の認知能力面に焦点を当て、その能力を評価するための国際的にも汎用性のある評価方法をわが国でも開発し、その活用ガイドラインを作成することを目的とする。
研究方法
4つの研究分担グループを編成し、グループごとに以下の方法で研究を進めた。
A班…独自に作成した調査用紙を用い、協力の得られた公立高等学校20校の教員361名を対象にLDに対する意識と対処経験の実情について調査を実施した。
B班…各事例の臨床的特徴と心理検査の成績から理解することが可能かどうかを検討することを目的とし、臨床事例研究と臨床妥当性研究を実施した。臨床事例研究では、発達障害またはその疑いのある事例について、ウェクスラー知能検査による認知機能評価と、本人や保護者等の情報を基にした臨床的特徴との関連を検討した。臨床妥当性研究では、WAIS-Ⅲと14領域の行動指標について臨床群と非臨床群の比較を行った。
C班…WISC-Ⅳ短縮版の可能性を、日本版WISC-Ⅳの標準化データに多変量解析を実施することで検討した。
D班…①理論マニュアル・実施マニュアルの翻訳を完成した。②アメリカ版の項目を翻訳・修正を行い、修正の多い下位検査(理解、類似、単語)を中心に、大学生5を対象にパイロットスタディを行った。③日本版WAIS-Ⅳ(研究版)の標準化のためのマニュアルと項目を完成した。
結果と考察
A班…高校教員を対象にLDに関する調査を行った。その結果、1/4の教員がLDの生徒を担当した経験があったものの、他の発達障害と混同するなど、LDに関する適切な認識を持っていない人が多いことが明らかになった。
B班…臨床事例研究と臨床妥当性研究を実施し、ウェクスラー検査が発達障害事例の生活機能障害及び適応上の困難の背後にある認知特性を理解するのに有用な尺度であること、ワーキングメモリーと処理速度の弱さが発達障害事例の臨床的特徴との関連が高い可能性が示唆された。
C班…WISC の短縮版の可能性を探ることを目的とし、WISC-ⅣのFSIQをより少数の下位尺度によって代替できるかを検討した結果、FSIQを予測するためには、12の下位尺度のうち、4つの尺度を用いるだけでかなりの予測力を持ち、短縮版がそれほどの情報の低下をもたらさないことが示された。
D班…日本版WAIS-Ⅳ(研究版)の標準化のためのマニュアルと項目の翻案化、選定などはほぼ終え、尺度化のための第一段階であるパイロット研究(項目分析)を進め、使用項目の検討と決定、使用図版の検討と作成、研究版調査のための手引きの作成等の作業を終了し、次年度前半に予定しているデータ収集の準備をほぼ完了した。
結論
本研究は最終年度に向けて、各グループの結果を統合し、わが国の発達障害や知的障害のある者に対する認知能力の把握や経年的変化を客観的に追う評価方法としての活用ガイドライン作成作業を進行中である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224079Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,600,000円
(2)補助金確定額
5,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,691,537円
人件費・謝金 690,445円
旅費 341,600円
その他 588,734円
間接経費 1,288,000円
合計 5,600,316円

備考

備考
預金利息316円

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-