うつ病患者に対する復職支援体制の確立  うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究  

文献情報

文献番号
201224078A
報告書区分
総括
研究課題名
うつ病患者に対する復職支援体制の確立  うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究  
課題番号
H23-精神-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 剛(NTT東日本関東病院 精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良雄(メディカルケア虎ノ門)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 中村 純(産業医科大学医学部精神医学)
  • 酒井 佳永(跡見学園女子大学文学部臨床心理学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は、リワークプログラムの効果の確認、リワーク指導マニュアルの作成、リワークプログラムの実施状況と利用者の実態の把握、教育システムの開発、加齢が業務に与える影響の検討を目的とした。

研究方法
リワークプログラムの効果の確認については、無作為化比較試験(RCT)を継続した。RCTのデータを補完するために、通常のうつ病治療を受けた群の復職成功割合と経過確認を行った。また、リワークプログラムの再休職予防の効果を明らかにするために、リワークプログラム利用者と非利用者の復職後の就労継続性について、5都道府県6 医療機関のリワークプログラム利用者と北海道、東京の22企業でリワークプログラムを利用せずに復職した者323名を比較した。企業の状況に精通していない医師や治療スタッフ、メンタルヘルスに経験が乏しい産業医や産業保健スタッフでも、標準的なリワーク指導、復職支援を行えることを目的として、研究者が作成していた原案に13名のエキスパートのコメントを得て、6回の改訂を経てリワーク指導マニュアルを作成した。うつ病リワーク研究会所属の施設と利用者を対象とし、リワークプログラムの実施状況と利用者の実態を調査した。教育システムの開発を作成するために、標準的なリワークプログラムの様態を明らかにした。加齢が業務に与える影響の検討については、運転シミュレータを用いて、慣れに与える影響、健常高齢者と軽度認知障害者の運転技能の差、認知機能と運転技能の関連について検討した。
結果と考察
RCTに導入された対象者は34人で、やや男性が多く、教育水準が高く、大企業に勤務するものが多い傾向がみられた。これはRCT参加のために一定の休職期間が必要である、無作為化比較試験に対して関心や理解をしめす集団に特徴があるためと思われ、結果を解釈する際に考慮を要する。通常のうつ病治療群では、復職6ヶ月の時点での復職継続率は44%であり、対象者の約2割が最初の1ヶ月で脱落していた。リワークプログラムを受けずに復職すると、早期に再休職する可能性が高いことが示された。リワークプログラム利用者と非利用者の比較については、propensity scoreに基づくマッチングにより、100名(50名:50名)を抽出した。リワークプログラム利用群と非利用群の就労継続性の比較をLog-rank検定により検討した結果、リワークプログラム利用者は有意に就労継続性が良好であることが示された。リワーク指導については、エキスパートのコンセンサスを得る過程で、リワークのプロセスを11に区分することが適切であることが明らかになった。ステップの手順、次のステップに進む進行基準、以前のステップに戻るバリアンス基準を具体的に定め、進行基準、バリアンス基準については、就労継続の予測妥当性が確認されている職場復帰準備性評価シートを客観指標とした。患者への配布資料を作成し、リワーク指導開始時に、産業医または企業担当者から主治医が情報を収集することとした。リワークプログラムの実施状況に関しては、プログラム内容の充実、フォローアッププログラム増加が報告されている一方、企業との連携が低下している。利用者1,827人に対する調査では、休職回数が多く、また、休職期間も長い利用者がプログラムを利用している現実が明らかとなり、双極性障害を疑う症例も3割近くまで増加していることも示された。教育プログラムの開発については、標準的なリワークプログラムが経時的には5期27項目から成り立つことが明らかになり、援助技法の詳細を検討する中で再休職予防に重点を置いた介入技法の標準化を進めることができた。高齢者では運転課題に慣れるのに時間を要し、追従走行技能で、若齢者、健常高齢者、軽度認知障害を有する高齢者の間で有意な差がみられた。遂行機能を評価するTMT-Bと運転技能の有意な関連が確認された。
結論
利用群・非利用群の就労継続の有意差によって、リワークプログラムの効果が明らかにされた。通常治療群の復職予後の分析、RCTの分析によってこの知見がさらに確認されるであろう。エキスパートのコンセンサスによるリワーク指導マニュアルが作成され、マニュアルの有用性について検証する段階に入った。リワークプログラムの実施状況については、重症例への支援、フォローアッププログラムの実施、双極性障害への対応などが進められているが、現在のスタッフ配置では、企業との連携を十分に行うことが難しい。課題として、① 統合失調症患者に対する支援との違いの意識化、②プログラムの一層の標準化、③観察・介入技法の向上などの課題があげられた。教育プログラムの開発については、今後具体的な教材を作成する必要がある。運転課題への影響については、気分障害についての検討を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,300,000円
(2)補助金確定額
8,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,650,800円
人件費・謝金 4,577,339円
旅費 22,660円
その他 1,049,201円
間接経費 0円
合計 8,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
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