てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
201224072A
報告書区分
総括
研究課題名
てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部)
  • 竹島 正(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画研究部)
  • 赤松 直樹(産業医科大学 神経内科)
  • 小林 勝弘(岡山大学 医学部・歯学部付属病院)
  • 松浦 雅人(東京医科歯科大学 生命機能情報解析学)
  • 池田 昭夫(京都大学大学院 医学研究科)
  • 加藤 天美(近畿大学 医学部 脳神経外科)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科学)
  • 兼子 直(湊病院 北東北てんかんセンター)
  • 亀山 茂樹(国立病院機構西新潟中央病院 脳神経外科)
  • 井上 有史(静岡てんかん・神経医療センター)
  • 中里 信和(東北大学大学院 医学系研究科 てんかん学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,474,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国のてんかん患者の受療者数は、患者調査(H20年)では22万人(総人口の0.17%)とされ、てんかん医療に関する施策立案の根拠となっているが、疫学的には先進国のてんかんの有病率は人口の0.5%~1.0%とされその乖離は極めて大きい。
 てんかんは、乳幼児から高齢者まで広い年令層に及ぶ患者数の多い神経疾患で、様々な診療科による診療科の枠を超えた人的・物的医療資源の活用が必要とされるが、我が国のてんかん診療は、中核となる診療科及び行政の担当部署が不明確という歴史的経緯があり、診療体制の整備が未だ十分で、てんかんの患者数や地域の診療実態が正確に把握されていない可能性がある。
 本研究の目的は、本邦の患者調査で把握されないてんかんの患者数とその診療実態を調査し、我が国で必要なてんかん医療のニーズの全貌を明らかにし、既存の医療資源の活用を含め、今後のてんかん医療の供給体制の道筋を示すことにある。
研究方法
 1)地域住民及び医療施設を対象としたてんかん患者の患者数と診療実態の調査、2)てんかん診療の質の向上のための聞き取り調査、3)地域診療と関連諸学会専門医が連携したてんかん診療ネットワークの基盤作り、4)諸外国におけるてんかん診療体制の調査、最終的に5)本邦で望まれるてんかん診療システムの提言を行う。全体の研究期間は3年で、初年度に疫学研究と診療実態調査を開始し、最終年度に本邦のてんかん医療のニーズを満たすために必要な人的・物的医療資源に関する目標と、我が国の実情に即したてんかん患者ケア・アルゴリズムの提言を行う。
結果と考察
 24年度の研究では、1)健康保険組合のレセプトデータの分析でてんかんによる受療者数は人口1,000人あたり7.24人であること、2)てんかんの地域保健・医療の体制は多くの問題を抱えておりその背景として行政の関心の不足があること、3)一方脳波計、MRIなどの診断機器は、多くの医療機関に導入されていることが明らかとなった。また、4)地域におけるてんかん診療のアクセスポイントを明示することを目的として、初年度に作成された全国のてんかん診療医の名簿をウエブサイトに掲載するとともに、5)診療科の枠を超えたわが国の実情に即したてんかんの地域診療連携モデルの提言を行った。
 患者調査によるわが国のてんかん患者数が、諸外国の疫学調査による患者数と大きく乖離している理由は、我が国で過去に行われた小児の有病率調査(約0.5% Oka 2006)及び本研究班の予備調査から鑑みるに、本邦のてんかんの有病率が諸外国に比べ著しく低い可能性は乏しく、むしろ単に、本邦ではてんかん患者数が的確に把握されていないという事を示すに過ぎない。この問題の解決には、本来てんかん医療に求められる医療システム、すなわち地域保健、地域の医師によるプライマリケア、神経学専門医による2次診療、外科治療が可能な専門センターによる3次診療施設間の円滑な診療連携システムを、本邦の実情に即して構築することが求められている。
結論
 本研究班で計画されている、てんかんの疫学調査(成人及び高齢者)、医療体制モデルの提言、診療ネットワークの構築などの試みは、我が国で行われる初めの企画であり、混乱した我が国の成人てんかん診療を再構築する糸口となる可能性があると言える。またてんかん医療は、小児にあっては発達障害の予防と学習の改善、成人にあっては就労と生活の自立を目標とするもので、本研究によりもたらされるてんかん医療の充実は、我が国にとって社会経済学的にも重要な成果となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224072Z