末梢血のAGEsを含む代謝産物をバイオマーカーとする統合失調症の早期診断法の確立

文献情報

文献番号
201224069A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢血のAGEsを含む代謝産物をバイオマーカーとする統合失調症の早期診断法の確立
課題番号
H23-精神-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
糸川 昌成(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田寿美子((独)国立精神・神経医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,138,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、末梢血の終末糖化産物(AGEs;Advanced Glycation End-products)を含む代謝物質の異常を客観的指標として、統合失調症の早期診断法を確立することである。
申請者は、カルボニル化合物の分解酵素glyoxalase 1(GLO1)に50%活性低下をもたらすフレームシフト変異を持った家系を同定し、それをきっかけとして内科合併症を持たない統合失調症の46.7%で末梢血にAGEsの蓄積を同定した(Arai et al. Arch Gen Psychiatry 2010、読売新聞6月8日)。AGEsはPANSSと相関し、治療による症状改善に伴って低下が認められたことからバイオマーカーとして応用可能であることが示唆された。さらに、未治療初発例でAGEs上昇がみられたことから、早期診断に役立つ客観的指標となりうると考えた。 GLO1代謝系はグルタチオン代謝を介してホモシステインや葉酸の代謝経路と相互作用が示唆され、これらの系も検討したところ、葉酸は患者で有意に低下し(P<0.001)、ホモシステインは患者で有意に上昇していた(P<0.001)。そこで、統合失調症の末梢血、髄液、尿中のAGEs, ホモシステインや葉酸を含む代謝産物を計測し、PANSS、服薬歴、家族歴など臨床情報との関連を検討し、縦断研究によって症状推移とこれら代謝物質の関連を明らかにして、統合失調症のバイオマーカーを確立することをめざす。AGEsの簡易測定キットについては、民間企業と共同開発に既に着手しており、期間内に外来などで簡便に計測できる方法の確立が見込まれる(特願 2007-214047)。 精神症状がまだ顕在化しない前駆期に、末梢血でAGEs蓄積を確認することで早期診断が可能となるため、精神疾患の早期介入や予防政策に貢献できる。
研究方法
(1) 研究計画及び方法
(I)GLO1/ホモシステイン/葉酸代謝関連物質の測定(糸川昌成担当)
 統合失調症の末梢血、髄液、尿中のAGEs, GLO1活性、ホモシステイン、葉酸、ビタミンなどをHPLCおよびELISA法を用いて計測する。また、プロテオミクス解析により、新たなバイオマーカーの検索も行う。臨床情報との関連を検討する。臨床症状の重症度や統合失調症の亜型下位分類、投薬内容など検討し、バイオマーカーとしての妥当性を検証する。
(II) 統合失調症の末梢血、尿および臨床情報の収集(新里和弘担当)

 
(III) 統合失調症の髄液、末梢血、尿の収集(吉田寿美子担当)
 
(2)研究体制
GLO1/ホモシステイン/葉酸代謝関連物質の測定は東京都医学総合研究所で行う。統合失調症の血液、尿と臨床情報の収集は都立松沢病院で行う。髄液を中心とした検体収集は国立精神神経医療研究センター病院で行う。
(補遺:ウェッブ登録が間に合わなかったが新里和弘は分担者としてエフォート5研究費100万円を執行されたことを報告済)


結果と考察
統合失調症304例、対照119例(当初報告:症例45、対照61)まで検体を拡大し、有意なpentosidi
neの増加とビタミンB6の低下が再現した。統合失調症において有意な葉酸の低下(P<0.05)、ホモ
システイン (P<0.001)、グルタミン酸の増加(P<0.01)、システインの増加(P<0.05)、GLO1の補
酵素である亜鉛の有意な低下(P<0.01)、グルタチオンの低下(P<0.05)、GLO1外解毒系の低下を認めた(P<0.01)。
結論
将来的なテーラーメイド医療に向けてバイオマーカーとしての妥当性を示唆している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224069Z