文献情報
文献番号
201224066A
報告書区分
総括
研究課題名
重大な他害行為をおこした精神障害者の適切な処遇及び社会復帰の推進に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(国立精神・神経医療研究センター 病院リハビリテーション部第二精神診療部)
研究分担者(所属機関)
- 村上 優(独立行政法人国立病院機構 琉球病院 )
- 永田 貴子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)
- 田口 寿子(東京都立松沢病院)
- 大橋 秀行(埼玉県立大学 保健福祉学部)
- 村田 昌彦(独立行政法人国立病院機構 北陸病院)
- 吉住 昭(独立行政法人国立病院機構 花巻病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,317,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、既存の研究班とは異なり、鑑定入院、通院処遇、入院処遇などの処遇別に、あるいはそれぞれを担当する機関別に研究課題を設定し研究するのではなく、それぞれの「処遇間の円滑な移行」「関係機関同士の連携と統合」「医療観察制度の流れ全体」に着目し包括的な医療観察法システムのあり方を明確にすることである。
研究方法
研究代表者は、7つの分担研究班を組織し、各班の研究成果をもとに医療観察法および精神保健福祉法による医療の現状を整理するとともに、今後の課題を考察した。
結果と考察
1.「対象行為発生から社会復帰までの経過全般に関する研究」
入院・通院処遇を経て処遇終了に至った事例と、再入院処遇になった事例とを比較し、平均入院処遇日数、平均通院処遇日数、規則的な通院の率、通院処遇中の精神保健法入院率における統計的な有意差が明らかとなった。また、処遇終了あるいは再入院に至った経過を分析して、社会復帰促進/阻害要因を、疾病・障害要因、治療要因、地域要因、制度要因に分類し、入院処遇および通院処遇における達成すべき課題を明らかにした。
2.「措置入院制度における倫理会議の必要性に関する研究」
医療観察法で行われている倫理会議を措置入院においても導入する可能性を探ることを目的に、措置入院における「同意によらない治療」に関する実態調査および施設調査を実施し、現実的かつ具体的倫理会議のあり方を示した。
3.「医療観察法の医療情報等の効率的な活用による社会復帰促進に関する研究」
本研究班では入院処遇と通院処遇の間でシームレスな医療情報の伝達を実現するためのシステムの検討を行った。具体的にはバックアップ、ネットワークシステムを含めた診療支援システムの改訂についての仕様書作成、通院診療支援システムの作成とデモ版の試運転、入院・通院版のマニュアル作成に取り組んだ。また、診療情報の精度向上を目的として医療観察法診療情報管理者研修会を開催した。
4.「医療観察法導入後における触法精神障害者への精神保健福祉法による対応に関する研究」
本研究班では、①警察官通用は救急医療にシフトしてきていること、②警察官通報の措置入院において入院時と措置解除時の診断に高い一致率を認め、警察官通報による措置入院時の診断についても一定の質が確保されていること、③より円滑な措置入院処遇と治療効果の改善のためには、複数の課題に対し個別に適切な対処を考案していく必要があること、④措置入院における、Kaplan-Meier法に基づく1年再入院率は27.9%であること、退院直後に措置解除された施設における治療が中止率は高いこと、標準化死亡比は1.741~3.634であること、が明らかとなった。
「社会復帰促進に資する医療の質の向上に関する研究
医療観察法入院対象者に対し「就労準備プログラム」を実施した。実施前後に施行した「ローゼンバーグ自尊感情尺度」と「日本語版リカバリーアセスメントスケール」において、統計学的に有意な改善を認めた。以上のことから、「就労準備プログラム」による自尊感情とリカバリーの改善効果が示された。
「医療観察法から精神保健福祉法による医療への円滑な移行に関する研究」
退院と同時に処遇終了となった事例の集積および分析を行った。その結果、処遇終了による退院申し立ての際には、医療観察法における3要件を施設ごとに吟味して判断しているが、要件の適用についてこれまで十分なコンセンサスが得られてはいなかったことが明らかとなった。また、3要件について、指定入院医療機関の実務者が実際に経験した6事例を提示し、その処遇や要件の判断について議論し処遇終了の判断基準の着眼点を示した。
「医療観察法入院処遇対象者の予後と予後に影響を与える因子に関する研究」
本研究班では、平成17年7月15日から平成24年7月15日の間に指定入院医療機関に入院し同意の得られた対象者の予後調査を実施した(観察期間の中央値は775日)。その結果、重大な再他害行為、自殺既遂の発生率が低い水準に留まっていること、適宜、精神保健福祉法による入院を併用し危機予防や危機早期介入が行われている現状や、既存の社会資源を有効に活用し社会復帰がなされていることが明らかとなった。
入院・通院処遇を経て処遇終了に至った事例と、再入院処遇になった事例とを比較し、平均入院処遇日数、平均通院処遇日数、規則的な通院の率、通院処遇中の精神保健法入院率における統計的な有意差が明らかとなった。また、処遇終了あるいは再入院に至った経過を分析して、社会復帰促進/阻害要因を、疾病・障害要因、治療要因、地域要因、制度要因に分類し、入院処遇および通院処遇における達成すべき課題を明らかにした。
2.「措置入院制度における倫理会議の必要性に関する研究」
医療観察法で行われている倫理会議を措置入院においても導入する可能性を探ることを目的に、措置入院における「同意によらない治療」に関する実態調査および施設調査を実施し、現実的かつ具体的倫理会議のあり方を示した。
3.「医療観察法の医療情報等の効率的な活用による社会復帰促進に関する研究」
本研究班では入院処遇と通院処遇の間でシームレスな医療情報の伝達を実現するためのシステムの検討を行った。具体的にはバックアップ、ネットワークシステムを含めた診療支援システムの改訂についての仕様書作成、通院診療支援システムの作成とデモ版の試運転、入院・通院版のマニュアル作成に取り組んだ。また、診療情報の精度向上を目的として医療観察法診療情報管理者研修会を開催した。
4.「医療観察法導入後における触法精神障害者への精神保健福祉法による対応に関する研究」
本研究班では、①警察官通用は救急医療にシフトしてきていること、②警察官通報の措置入院において入院時と措置解除時の診断に高い一致率を認め、警察官通報による措置入院時の診断についても一定の質が確保されていること、③より円滑な措置入院処遇と治療効果の改善のためには、複数の課題に対し個別に適切な対処を考案していく必要があること、④措置入院における、Kaplan-Meier法に基づく1年再入院率は27.9%であること、退院直後に措置解除された施設における治療が中止率は高いこと、標準化死亡比は1.741~3.634であること、が明らかとなった。
「社会復帰促進に資する医療の質の向上に関する研究
医療観察法入院対象者に対し「就労準備プログラム」を実施した。実施前後に施行した「ローゼンバーグ自尊感情尺度」と「日本語版リカバリーアセスメントスケール」において、統計学的に有意な改善を認めた。以上のことから、「就労準備プログラム」による自尊感情とリカバリーの改善効果が示された。
「医療観察法から精神保健福祉法による医療への円滑な移行に関する研究」
退院と同時に処遇終了となった事例の集積および分析を行った。その結果、処遇終了による退院申し立ての際には、医療観察法における3要件を施設ごとに吟味して判断しているが、要件の適用についてこれまで十分なコンセンサスが得られてはいなかったことが明らかとなった。また、3要件について、指定入院医療機関の実務者が実際に経験した6事例を提示し、その処遇や要件の判断について議論し処遇終了の判断基準の着眼点を示した。
「医療観察法入院処遇対象者の予後と予後に影響を与える因子に関する研究」
本研究班では、平成17年7月15日から平成24年7月15日の間に指定入院医療機関に入院し同意の得られた対象者の予後調査を実施した(観察期間の中央値は775日)。その結果、重大な再他害行為、自殺既遂の発生率が低い水準に留まっていること、適宜、精神保健福祉法による入院を併用し危機予防や危機早期介入が行われている現状や、既存の社会資源を有効に活用し社会復帰がなされていることが明らかとなった。
結論
対象行為から処遇終了までの全期間調査、入院処遇の転帰や退院後の予後調査、処遇終了に至るまでの期間や処遇終了例の調査などから、医療観察法制度は概ね適切に運営されていると結論づけられた。
本研究班で用いられた研究手法、研究ネットワーク、データ収集システムを活かして、医療観察法医療や精神保健福祉法措置入院医療の動向を引き続き調査していくことが必要である。
本研究班で用いられた研究手法、研究ネットワーク、データ収集システムを活かして、医療観察法医療や精神保健福祉法措置入院医療の動向を引き続き調査していくことが必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-21
更新日
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