様々な依存症における医療・福祉の回復プログラムの策定に関する研究

文献情報

文献番号
201224064A
報告書区分
総括
研究課題名
様々な依存症における医療・福祉の回復プログラムの策定に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学 2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 小泉 典章(長野県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,856,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は依存症の中で、これまで検討される機会が少ない1)重複障害を有するアルコール・薬物依存、2)向精神薬乱用・依存、3)病的ギャンブリング、4)インターネット嗜癖の実態を明らかにするとともに、医療、福祉がどのように対応し治療システムを構築すべきかを明らかにすることを目的とする。
研究方法
1)~4)の課題に加え、5)行政機関の対応に関する研究を4つの班で分担し、各班で実態調査、専門家による検討を行い、対応ガイドライン、資料を作成した。具体的には1)平成22-23年度に実施された医療機関および社会復帰施設対象調査結果を解析し、その調査結果をもとに重複障害者への理解と援助の助けとなるガイドラインを作成した。2)薬剤師対象調査では平成23年度までに実施された実態調査で得られた質的データを整理し、薬剤師が向精神薬乱用・依存のゲートキーパーとして果たすべき役割と課題を検討した。医療機関対象調査では過量服薬によって救急医療機関に搬送された患者を対象とする調査を実施した。3)専門家グループの検討により、求められる多機関連携体制を明らかにし、病的ギャンブリングに関する最新の脳科学領域における知見をまとめ、資料として作成した。4)インターネット嗜癖に関する調査は平成24年度から開始された。今後調査票やスクリーニングテスト等を構築する上で考慮すべきことを明らかにするため、社会生活基本調査を分析した。5)平成23年度にまとめられた薬物依存の相談対応ガイドライン草案に対する意見を集約し、精神保健福祉センター等行政機関における薬物依存の相談対応ガイドラインを作成し冊子化した。
結果と考察
1)医療機関および社会復帰施設を対象に調査した結果、アルコール依存症、薬物依存症に併存する精神障害として、人格障害、気分障害、精神病性障害の頻度が少なくないこと、自殺の危険性が高いことが明らかとなった。これをもとに社会復帰施設職員を対象に、具体的でわかりやすい対応ガイドラインを作成した。2)向精神薬の過量服薬は精神科治療の結果二次的に発生し、精神科医の処方や指導に課題が多いことが明らかとなった。また保険薬局薬剤師を対象とする調査の結果、薬剤師が向精神薬乱用・依存対策のためのゲートキーパーになるためには薬剤師の対応力向上だけでなく、疑義照会に対する精神科医の努力も求められることが明らかとなった。3)病的ギャンブリング専門家グループによる検討の結果、病的ギャンブリングの病型は3つに分類されそれに対応した援助のフローチャートと、多機関連携案が作成された。これに脳科学領域の最新の知見を追加した資料が作成された。4)社会生活基本調査を分析することにより、今後、調査票やスクリーニングテスト等を構築する上で考慮すべき社会経済項目が、全国代表性のあるデータにより裏付けられた。5)精神保健福祉センターにおける薬物依存の相談対応ガイドライン草案に対して、各センターから出された意見を集約した。これをもとに精神保健福祉センターにおける薬物依存症への相談対応ガイドラインが作成された。
結論
1)回復援助のみならず、自殺対策という視点においても重複障害への対応を標準化する必要性が明らかとなった。さらに作成された対応ガイドラインは冊子化され、これに寄与することが期待できる。2)向精神薬乱用・依存は精神科診療に続発して生じている可能性が高いこと、薬剤師の対応力向上とともに、精神科医に努力の余地があることが明らかとなった。3)病的ギャンブリングの病型に対応した援助のフローチャート、多機関連携案等の資料は関係機関で活用される。4)今後のインターネット嗜癖に関する調査票等を検討する上で重要な示唆が得られた。5)行政機関における薬物依存症への相談対応ガイドラインにより、相談対応の地域差が減じられ質が高まることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224064B
報告書区分
総合
研究課題名
様々な依存症における医療・福祉の回復プログラムの策定に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学 2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 小泉 典章(長野県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は依存症の中で、これまで検討される機会が少ない1)重複障害を有するアルコール・薬物依存、2)向精神薬乱用・依存、3)病的ギャンブリング、4)インターネット嗜癖の実態を明らかにするとともに、医療、福祉がどのように対応し治療システムを構築すべきかを明らかにすることを目的とする。
研究方法
1)~4)の課題に加え、5)行政機関の対応に関する研究を4つの班で分担し、各班で実態調査、専門家による検討を行い、対応ガイドライン、資料を作成した。具体的には1)平成22年~平成23年度は全国のアルコール・薬物依存の7専門医療機関、9社会復帰施設に対し調査を実施した。平成24年度は調査結果をもとに、重複障害者への理解と援助の助けとなるガイドラインを作成した。2)薬剤師対象調査では、平成22年度は、重複処方の状況把握を目的に、重複投薬・相互作用防止加算に着目し調査を実施した。平成23年度は薬剤師の臨床行為に着目し、向精神薬乱用・依存が疑われる患者に対する役割を明らかにするための調査を実施した。平成24年度は薬剤師対象の実態調査で得られた質的データを整理し、薬剤師が向精神薬乱用・依存のゲートキーパーとして果たすべき役割と課題を検討した。医療機関対象調査では、平成23年度に依存症専門医療機関に受診したベンゾジアゼピン系薬剤使用障害患者を対象として調査を行い、平成24年度に「過量服薬」によって救急医療機関に搬送された患者を対象とする調査を実施した。3)平成22年度は、病的ギャンブリングの概念および治療について、有識者からの意見を集約し、これらの情報共有を行った。平成23年度は、国内で病的ギャンブリングの問題に対応をしている機関から得られた47症例を詳細に検討し、病的ギャンブリングの類型分類を検討した。平成24年度は専門家グループの検討により、求められる多機関連携体制を明らかにし、病的ギャンブリングに関する最新の脳科学領域における知見をまとめ、資料として作成した。4)インターネット嗜癖に関する調査は平成24年度から開始された。今後調査票やスクリーニングテスト等を構築する上で考慮すべきことを明らかにするため、社会生活基本調査を分析した。5)平成22年度は全国の精神保健福祉センターを対象に、薬物依存の相談対応の実態を明らかにするための調査を実施した。平成23年度は調査結果をもとに、相談対応ガイドライン草案を作成した。平成24年度は草案に対する意見を集約し、精神保健福祉センター等行政機関における薬物依存の相談対応ガイドラインを作成し冊子化した。
結果と考察
1)医療機関および社会復帰施設を対象に調査した結果、アルコール依存症、薬物依存症に併存する精神障害として、人格障害、気分障害、精神病性障害の頻度が少なくないこと、自殺の危険性が高いことが明らかとなった。これをもとに社会復帰施設職員を対象に、具体的でわかりやすい対応ガイドラインを作成した。2)向精神薬乱用・依存、過量服薬は精神科治療の結果二次的に発生し、精神科医の処方や指導に課題が多いことが明らかとなった。また保険薬局薬剤師を対象とする調査の結果、薬剤師が向精神薬乱用・依存対策のためのゲートキーパーになるためには薬剤師の対応力向上だけでなく、疑義照会に対する精神科医の努力も求められることが明らかとなった。3)病的ギャンブリング専門家グループによる検討の結果、病的ギャンブリングの病型は3つに分類されそれに対応した援助のフローチャートと、多機関連携案が作成された。これに脳科学領域の最新の知見を追加した資料が作成された。4)社会生活基本調査を分析することにより、今後、調査票やスクリーニングテスト等を構築する上で考慮すべき社会経済項目が、全国代表性のあるデータにより裏付けられた。5)精神保健福祉センターにおける薬物依存の相談対応ガイドライン草案に対して、各センターから出された意見を集約した。これをもとに精神保健福祉センターにおける薬物依存症への相談対応ガイドラインが作成された。
結論
1)回復援助のみならず、自殺対策という視点においても重複障害への対応を標準化する必要性が明らかとなった。さらに作成された対応ガイドラインは冊子化され、これに寄与することが期待できる。2)向精神薬乱用・依存は精神科診療に続発して生じている可能性が高いこと、薬剤師の対応力向上とともに、精神科医に努力の余地があることが明らかとなった。3)病的ギャンブリングの病型に対応した援助のフローチャート、多機関連携案等の資料は関係機関で活用される。4)今後のインターネット嗜癖に関する調査票等を検討する上で重要な示唆が得られた。5)行政機関における薬物依存症への相談対応ガイドラインにより、相談対応の地域差が減じられ質が高まることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224064C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、調査対象、調査フィールド、サンプルサイズ、多くの専門家による議論の集約など、その手法などの点で、わが国ではこれまで行われたことのない調査が行われた。専門的学術的観点からみて、その成果は大きいと言える。特に、向精神薬乱用・依存の薬剤師対象調査は英語論文として学術誌に受理され、学会発表では優秀演題賞を受賞するなどの成果を挙げている。こうした点からみても、本研究の専門的学術的成果は大きい。
臨床的観点からの成果
重複障害研究ではアルコール・薬物依存に併存しやすい併存障害の傾向、自殺リスクの高さなど、臨床現場に必要な多くの重要な知見を得た。向精神薬乱用・依存研究では、向精神薬の処方、薬剤師との連携において、精神科医に重要な示唆を与えている。病的ギャンブリング研究では類型分類ごとの援助のためのフローチャートが作成された。精神保健福祉センターにおける薬物依存相談対応ガイドラインは援助の地域差を減じることに効果が期待される。また、本調査研究の成果は危険ドラッグへの対応における成果に寄与したと考えられる。
ガイドライン等の開発
重複障害研究班が開発した、主として社会復帰施設で用いられることを想定した重複障害への対応マニュアルは、具体性、わかりやすさに配慮して作成された。今後、冊子化され活用される。精神保健福祉センターにおける薬物依存相談対応ガイドラインは冊子化され、全国の精神保健福祉センターに配布される予定である。病的ギャンブリング研究では、類型分類ごとの援助フローチャートが作成され、ガイドラインとして用いることができる。
その他行政的観点からの成果
作成されたガイドライン、マニュアルは、治療指針となるものであり、依存症医療の地域差を減じることが期待される。さらに、実態調査の結果は、依存症対策を検討する際に重要な基礎資料になる。また平成24年8月に閣議決定された自殺対策大綱の中には、本研究結果が盛り込まれ、向精神薬の過量服薬についての問題や、薬剤師をゲートキーパーの一員として養成していくことが政策として明記された。こうした点でも本研究の行政的意義は大きい。薬物事犯の刑の一部執行猶予制度に向けた取り組みとして寄与したものと思われる。
その他のインパクト
わが国ではその実態を明らかにした調査が皆無に等しいインターネット嗜癖を対象とする研究が、平成24年度から開始された。現在もインターネット嗜癖研究が継続されている。病的ギャンブリングに関する資料は、類型分類、援助のフローチャート、地域連携体制から、最新の脳科学研究における知見の総括にわたってまとめられており、いままでにない資料が作成されたと言える。

発表件数

原著論文(和文)
6件
松本俊彦, 嶋根卓也, 尾崎茂他 精神医学2012 54 (2) 201-9
原著論文(英文等)
2件
Shimane T, Matsumoto T, Wada K Japanese Journal of Alcohol and Drug Dependence 2012 47(5) 202-10
その他論文(和文)
6件
佐藤拓、宮岡等「今日の精神科ガイドライン 成人のパーソナリティおよび行動の障害 病的ギャンブリング(いわゆるギャンブル依存)の回復支援」精神科治療学 2010 25 240-241
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
松本俊彦 第107回日本精神神経学会学術総会 シンポジウム29 強迫スペクトラム障害の可能性と治療~DSM-5の動向と薬物療法を中心に~2011.10.27.東京
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimane T, Matsumoto T, Wada K
Prevention of overlapping prescriptions of psychotropic drugs by community pharmacists.
Japanese Journal of Alcohol and Drug Dependence , 47 (5) , 202-210  (2012)
原著論文2
松本俊彦, 成瀬暢也, 梅野充, ほか
Benzodiazepines使用障害の臨床的特徴とその発症の契機となった精神科治療の特徴に関する研究.
日本アルコール・薬物医学会誌 , 47 (6) , 317-330  (2012)

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
2024-06-03

収支報告書

文献番号
201224064Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,800,000円
(2)補助金確定額
12,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,224,073円
人件費・謝金 3,431,010円
旅費 633,320円
その他 4,567,597円
間接経費 2,944,000円
合計 12,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-