薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究

文献情報

文献番号
201224059A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 桜児(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
  • 森田 展彰(国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻)
  • 近藤 あゆみ(新潟医療福祉大学社会福祉学部)
  • 今村 扶美(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 嶋根 卓也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,311,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療機関、司法機関、さらに地域の公的保健機関および民間機関といった性質を異にする施設をフィールドとし、認知行動療法的な内容のワークブックとマニュアルにもとづく薬物依存治療プログラムを開発し、その有効性を検証するとともに、プログラムの普及を行うことである。
研究方法
研究代表者らが開発した、認知行動療法による薬物依存症治療プログラム(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program: SMARPP)、ならびに、SMARPPと同種の治療プログラムを、国立精神・神経医療研究センター病院(外来及び医療観察法病棟)、埼玉県立精神医療センター、東京都多摩総合精神保健福祉センター、東京都中部総合精神保健福祉センター、さらには刑事施設である播磨社会復帰促進センターや美祢社会復帰促進センター、栃木・千葉・館山・横浜の各ダルクなどの、性質の異なる援助機関で実施し、介入前後の評価尺度の変化、治療継続状況、感想に関する自由記述などの情報を収集し、評価を行った。また、プログラム実施に併せて、本プログラムの研修会を開催したり、講演会などを通じて本プログラムの広報を行い、各地への普及と均てん化を試みた。
結果と考察
国立精神・神経医療研究センター病院(外来及び医療観察法病棟)、埼玉県立精神医療センター、多摩総合精神保健福祉センター、播磨社会復帰促進センターでは、本プログラムによる介入の結果、薬物・アルコール問題に関する問題意識や治療動機、自己効力感、精神的健康などに関する評価尺度上の好ましい変化、あるいは、高い治療継続率や自助グループ参加率、高い断薬率が得られた。東京都中部総合精神保健福祉センター、栃木・千葉・館山・横浜では、対象者数が不十分であり、評価尺度上の変化などを明らかにすることはできなかったが、生活習慣の改善が認められたり、参加者・実施スタッフからも好ましい評価を得ることができた。また、各地への普及・均てん化の研修実施の結果、本プログラムを実施もしくは実施のための具体的な準備に着手しているのは、2013年2月28日現在、全国33箇所の精神科医療機関、11箇所の保健・行政機関、8箇所の民間機関にまで広がっている。
結論
本研究班活動により、ワークブックとマニュアルに基づいた薬物依存症に対する認知行動療法プログラムは、薬物依存者の治療、再乱用防止に有効な支援ツールであることが示唆された。近い将来、薬物関連事犯者の地域内処遇が実現する可能性が高く、また、「取り締まることのできない薬物」の乱用・依存が深刻化している現在、本研究班の成果は、今後の地域精神保健施策において重要な意義があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224059B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 桜児(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
  • 成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
  • 森田 展彰(国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻)
  • 近藤 あゆみ(新潟医療福祉大学社会福祉学部)
  • 今村扶美(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
  • 嶋根 拓也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、医療機関、司法機関、さらに地域の公的保健機関および民間機関といった性質を異にする施設をフィールドとし、認知行動療法的な内容のワークブックとマニュアルにもとづく薬物依存治療プログラムを開発し、その有効性を検証するとともに、プログラムの普及を行うことである。
研究方法
研究代表者らが開発した、認知行動療法による薬物依存症治療プログラム(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program: SMARPP)、ならびに、SMARPPと同種の治療プログラムを、国立精神・神経医療研究センター病院(外来及び医療観察法病棟)、埼玉県立精神医療センター、東京都多摩総合精神保健福祉センター、東京都中部総合精神保健福祉センター、さらには刑事施設である播磨社会復帰促進センターや美祢社会復帰促進センター、栃木・千葉・館山・横浜の各ダルクなどの、性質の異なる援助機関で実施し、介入前後の評価尺度の変化、治療継続状況、感想に関する自由記述などの情報を収集し、評価を行った。また、プログラム実施に併せて、本プログラムの研修会を開催したり、講演会などを通じて本プログラムの広報を行い、各地への普及と均てん化を試みた。
結果と考察
国立精神・神経医療研究センター病院(外来及び医療観察法病棟)、埼玉県立精神医療センター、多摩総合精神保健福祉センター、播磨社会復帰促進センターでは、本プログラムによる介入の結果、薬物・アルコール問題に関する問題意識や治療動機、自己効力感、精神的健康などに関する評価尺度上の好ましい変化、あるいは、高い治療継続率や自助グループ参加率、高い断薬率が得られた。東京都中部総合精神保健福祉センター、栃木・千葉・館山・横浜では、対象者数が不十分であり、評価尺度上の変化などを明らかにすることはできなかったが、生活習慣の改善が認められたり、参加者・実施スタッフからも好ましい評価を得ることができた。また、SMARPPなどのプログラムを実施することによって、援助者の薬物依存症に対する否定的な感情や偏見が軽減し、肯定的な態度で援助に望めるようになることも明らかにされた。さらに、各地への普及・均てん化の研修実施の結果、本プログラムを実施もしくは実施のための具体的な準備に着手しているのは、2013年2月28日現在、全国33箇所の精神科医療機関、11箇所の保健・行政機関、8箇所の民間機関にまで広がっている。
結論
本研究班活動により、ワークブックとマニュアルに基づいた薬物依存症に対する認知行動療法プログラムは、薬物依存者の治療、再乱用防止に有効な支援ツールであることが示唆された。近い将来、薬物関連事犯者の地域内処遇が実現する可能性が高く、また、「取り締まることのできない薬物」の乱用・依存が深刻化している現在、本研究班の成果は、今後の地域精神保健施策において重要な意義があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224059C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本プログラムによる介入の結果、薬物問題に関する問題意識や治療動機、自己効力感、精神的健康などに関する評価尺度上の好ましい変化、高い治療継続率や自助グループ参加率、高い断薬率が得られた。また、本プログラムを実施することにより、援助者の薬物依存症に対する否定的な感情や偏見が軽減し、肯定的な態度で援助に望めるようになることも明らかにされた。
臨床的観点からの成果
各地への普及・均てん化の研修実施の結果、本研究班で開発したプログラムは、全国33箇所の精神科医療機関、11箇所の保健・行政機関、8箇所の民間機関にまで広がり、近い将来実現するであろう、薬物関連事犯者の地域内処遇にも重要な貢献をすると思われる。
ガイドライン等の開発
本研究班で開発した治療プログラム「SMARPP」のワークブックとプログラムに関する解説を一冊の本にまとめ、「薬物・アルコール依存症からの回復のためのワークブック」(金剛出版, 2011)として刊行し、多くの援助者がワークブックを入手できるようにした。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省「依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会」において、本研究班で開発したSMARPPなどのプログラムが取り上げられ、研究班の成果の一部は同検討会報告書にも記載された。また、SMARPPをベースとして、全国の保護観察所、少年院の治療プログラムが開発された。
その他のインパクト
SMARPPをはじめとした、認知行動療法的ワークブックを用いた薬物依存症に対する治療プログラムは、新聞(毎日新聞、読売新聞)で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
50件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
61件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
3年間の研究期間において、毎年年1回、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所にて、「薬物依存症に対する認知行動療法研修会」を開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsumoto T, Chiba Y, Imamura F, et al
Possible effectiveness of intervention using a self-teaching workbook in adolescent drug abusers detained in a juvenile classification home.
Psychiatry and Clinical Neurosciences , 65 , 576-583  (2011)
原著論文2
松本俊彦, 今村扶美, 小林桜児,ほか
PFI(PrivateFinanceInitiative)刑務所における薬物依存離脱指導の効果に関する研究: 自習ワークブックとグループワークによる介入―第1報―.
日本アルコール・薬物医学会誌 , 46 , 279-296  (2011)
原著論文3
小林桜児, 松本俊彦, 今村扶美, ほか
PFI(Private Finance Initiative)刑務所における薬物依存離脱指導の効果に関する研究: 自習ワークブックとグループワークによる介入―第2報: 重症度別による効果の分析―.
日本アルコール・薬物医学会誌 , 46 , 368-380  (2011)
原著論文4
Matsumoto T, Imamura F, Kobayashi O ,et al
Evaluation of a relapse prevention program for methamphetamine-dependent inmates using a self-teaching workbook and group therapy
Psychiatry Clin Neurosci , 68 , 61-69  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2017-06-06

収支報告書

文献番号
201224059Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,300,000円
(2)補助金確定額
4,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 741,749円
人件費・謝金 954,820円
旅費 295,232円
その他 1,319,701円
間接経費 989,000円
合計 4,300,502円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-