文献情報
文献番号
201224056A
報告書区分
総括
研究課題名
抗精神病薬の多剤大量投与の安全で効果的な是正に関する臨床研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-精神-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 仲生(藤田保健衛生大学 医学部精神神経科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 助川 鶴平(鳥取医療センター)
- 吉尾 隆(東邦大学薬学部)
- 稲垣 中(財団法人神経研究所)
- 吉村 玲児(産業医科大学精神医学)
- 稲田 俊也(財団法人神経研究所)
- 山之内 芳雄(藤田保健衛生大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,703,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では抗精神病薬の多剤処方の実態を踏まえた安全で効果的な是正方法について多面的な立場から検討し、是正のためのプロトコールを作成する。それに基づいて全国規模の大規模な臨床試験を実施する。また、多剤処方の実態や是正に関する臨床試験の結果等の情報提供を積極的に行うこととする。わが国における多剤処方是正のためのエビデンスを創出し、それを普及させていくことを目的とした。
研究方法
本研究では、現在の精神科での①抗精神病薬の処方実態を俯瞰すると同時に、今年度は本研究の臨床試験の結果における妥当性について検証した。また、2,3年度において、作成したプロトコールに基づき、全国の精神科医療機関を対象にプロトコールに従った多剤大量処方を是正する②臨床試験を行った。同時に、協力施設に対して対象症例選択基準、実行上の諸問題など、多剤併用およびその是正に対する医療側の問題を③アンケート調査し、別途同意を得た症例の薬物血中濃度測定と神経増殖因子(BDNF)の測定を減量前後で行い、多剤大量処方是正の④生物学的裏付けを検証した。
結果と考察
①において、本研究の協力施設においては現在精神科医療では平均で2剤800mg/d(クロルプロマジン換算)相当の抗精神病薬が投与されており、本研究の臨床試験では協力施設の判断により選択され、投与剤数・量ともに有意に多い患者が選択された。そしてこれらの患者は24週にわたる減量単純化にて、施設での平均的な量にまで減量された。
次に②においては、減量単純化による悪化/ 改善は認められず、特に症状・症状の全般的評定・自律神経系副作用において、高い統計パワーを持って示された。また、減量単純化とその後の観察による介入を9か月行ったが、悪化等による患者側の要因による脱落は、3か月の観察群のそれより少なく、安全な介入であることが確認された。また、アンケートによると、介入を行うことに「未知の不安を抱きつつ」も「やや緩徐と思われるプロトコール」に従って減量を行い、結果「減量しても大丈夫」だという結果が示された。それを他の多くの患者に対して行うことに当たっては、「医師を始めとした医療スタッフが了解できる適切なガイドライン」が必要であると回答を得た。
最後に④の生物学的検証では、減量単純化による抗精神病薬減量と血中脳由来神経栄養因子の関連に有意差はなく、薬物血中濃度も併用する薬物がなくなったことにより大きく変動することがあることが示された。
次に②においては、減量単純化による悪化/ 改善は認められず、特に症状・症状の全般的評定・自律神経系副作用において、高い統計パワーを持って示された。また、減量単純化とその後の観察による介入を9か月行ったが、悪化等による患者側の要因による脱落は、3か月の観察群のそれより少なく、安全な介入であることが確認された。また、アンケートによると、介入を行うことに「未知の不安を抱きつつ」も「やや緩徐と思われるプロトコール」に従って減量を行い、結果「減量しても大丈夫」だという結果が示された。それを他の多くの患者に対して行うことに当たっては、「医師を始めとした医療スタッフが了解できる適切なガイドライン」が必要であると回答を得た。
最後に④の生物学的検証では、減量単純化による抗精神病薬減量と血中脳由来神経栄養因子の関連に有意差はなく、薬物血中濃度も併用する薬物がなくなったことにより大きく変動することがあることが示された。
結論
統合失調症の薬物療法において、多剤大量処方を緩徐に(薬剤により25~50mg/週の速度で)減量するプロトコールの有用性が臨床試験により実証された。我が国における多剤大量処方を安全かつ効果的に是正するための根拠が一つ示されたことになり、ガイドライン等での普及を図りたいところである。
公開日・更新日
公開日
2013-05-02
更新日
-