文献情報
文献番号
201224052A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患の病態診断と治療評価のためのイメージングバイオマーカーの開発と臨床応用
課題番号
H22-精神-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 善朗(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 舘野 周(日本医科大学 大学院医学研究科 )
- 上田 諭(日本医科大学 大学院医学研究科 )
- 須原 哲也(放射線医学総合研究所分子イメージングセンター)
- 伊藤 浩(放射線医学総合研究所分子イメージングセンター)
- 松浦 雅人(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科)
- 加藤 元一郎(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,710,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
分子イメージングの技術を用いて、1)精神疾患の病態診断のためのバイオマーカーの開発と臨床的検証、2)治療評価のためのバイオマーカーの開発と臨床的検証を行い、3)イメージングバイオマーカーを用いた病態評価に基づく科学的診断法と新しい治療戦略を開発提案することを目的とした。
研究方法
以下の研究を行った。
1)NET測定用リガンド(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いた抗うつ薬の占有率の研究、2)ドパミンD2受容体測定用アゴニストリガンド[11C]MNPAを用いた抗精神病薬の占有率の研究、3)代謝型グルタミン酸受容体PETリガンド[11C]ABP688の臨床応用にむけた研究、4)ドパミンD2受容体部分アゴニスト抗精神病薬によるドパミンD2受容体占有率の脳内局所差に関する研究、5)線条体機能的下位領域と線条体外領域のドパミンD1受容体結合能の関連に関する研究、6)PETを用いた電気けいれん療法(ECT)の作用機序の研究、7)ドパミン作動性神経系における前シナプス機能と後シナプス機能の関係に関する研究、8)アリピプラゾールによる脳内ドパミン生成能の変化に関する研究、9)[18F]FEPE2Iの脳内動態およびおよび簡便な定量測定法の開発に関する研究、10)[18F]florbetapirによるアミロイド分子イメージングと[18F]FEPE2Iによるドパミントランスポーターイメージングの臨床応用に関する研究、11)統合失調症におけるミラーニューロンに関する研究、12)MEGを用いた統合失調症のイメージングバイオマーカーに関する研究。
1)NET測定用リガンド(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いた抗うつ薬の占有率の研究、2)ドパミンD2受容体測定用アゴニストリガンド[11C]MNPAを用いた抗精神病薬の占有率の研究、3)代謝型グルタミン酸受容体PETリガンド[11C]ABP688の臨床応用にむけた研究、4)ドパミンD2受容体部分アゴニスト抗精神病薬によるドパミンD2受容体占有率の脳内局所差に関する研究、5)線条体機能的下位領域と線条体外領域のドパミンD1受容体結合能の関連に関する研究、6)PETを用いた電気けいれん療法(ECT)の作用機序の研究、7)ドパミン作動性神経系における前シナプス機能と後シナプス機能の関係に関する研究、8)アリピプラゾールによる脳内ドパミン生成能の変化に関する研究、9)[18F]FEPE2Iの脳内動態およびおよび簡便な定量測定法の開発に関する研究、10)[18F]florbetapirによるアミロイド分子イメージングと[18F]FEPE2Iによるドパミントランスポーターイメージングの臨床応用に関する研究、11)統合失調症におけるミラーニューロンに関する研究、12)MEGを用いた統合失調症のイメージングバイオマーカーに関する研究。
結果と考察
1)ノルトリプチリンでは200mg/日で約70%のノルエピネフィリントランスポーター占有率が得られたのに対し、ミルナシプランでは200mg/日で約50%にとどまることを示した。2)D2受容体部分アゴニストアリピプラゾールによる高親和性部位のドパミンD2受容体占有率の測定を行い、抗精神病薬が親和性の差によらず均一なD2受容体阻害作用を呈することを確認した。3)新規mGluR5リガンドを用いてラット生体内におけるmGluR5-NMDA受容体カップリング機序を示した。4)アリピプラゾールのD2占有率を [11C]racloprideおよび[11C]FLB457の2種のリガンドを用いて測り、皮質への優先的結合を認めないことを示した。5)線条体機能的下位領域と線条体領域のドパミンD1受容体の相関を調べ、連合線条体および運動感覚線条体は大脳皮質の広範な領域との相関を認めるが、辺縁線条体では相関を認めないことを示した。6)ECTによるけいれん発作中に、脳幹や間脳、基底核、側頭葉内側部で脳血流が増加することを示した。7)ドパミン生成能(前シナプス機能)およびD2受容体結合能(後シナプス機能)の両者には負の相関を認めることを示した。8)線条体における脳内ドパミン生成能が抗精神病薬服薬により一定値に収束することを示した。9) [18F]FE-PE2Iによるドパミントランスポーターメージングの定量測定法を開発した。10)[18F]florbetapirによるアミロイドイメージングおよび[18F]FE-PE2Iによるドパミントランスポーターイメージングの臨床的な有用性を示した。11)統合失調症におけるミラーニューロンの賦活異常を明らかにし、妄想型ではagency 判断で過剰に自己作用感を示すことを明らかにした。12)自己認知と他者評価関与する神経回路を調べ、自己認知と他者評価に共通する神経回路が存在することを示した。
結論
人間の脳内の神経伝達機能を非侵襲的に測定することはPETによってのみ実現できる。本研究では様々なPETリガンドを用いて、主としてモノアミン系の神経伝達機能やそれらに対する治療薬の影響を明らかにすることができた。また、統合失調症の頭頂葉下部におけるミラーニューロン異常は、統合失調症群で認められる幻聴や作為体験の背景となる「行為主体感の喪失」ないし「行為における自他弁別の障害」に対応していると考えられ、統合失調症における異常体験のバイオマーカーとなる可能性がある。最後に、本研究で開発した[18F]florbetapirによるアミロイドイメージングと[18F]FE-PE2Iによるドパミントランスポーターイメージングによって、アルツハイマー病とレビー小体病の2大変性認知症に関するバイオマーカーによる早期診断、病態診断が可能になった。
公開日・更新日
公開日
2015-05-21
更新日
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