エピジェネティクス解析に基づいた網膜硝子体疾患に対する病態解明と発症予防および治療法の開発

文献情報

文献番号
201224043A
報告書区分
総括
研究課題名
エピジェネティクス解析に基づいた網膜硝子体疾患に対する病態解明と発症予防および治療法の開発
課題番号
H23-感覚-若手-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三村 達哉(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,202,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、眼内組織の老化のメカニズムを明らかにするために、近年DNAの塩基配列に変化なしに遺伝的しかも可逆的に遺伝子機能に変化を及ぼすことが明らかになったエピジェネティクスの観点から、網膜硝子体疾患とエピジェネティクス異常の関係を調べることを目的とする。特定部位のエピジェンティクス変化(メチレイション)を抑制することにより、疾患の予防および、治療をすることを最終目標とする。
研究方法
本研究は眼感覚器の中心となる網膜視機能障害に焦点をあて、網膜硝子体疾患における各種サイトカインとエピジェネティクスとの関係を調べることを目的としている。研究の対象は糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢性黄斑変性症に伴う黄斑浮腫などに対し手術を施行した患者である。硝子体手術を必要とする患者に同意を得たのち、前房水、硝子体液、血液、内境界膜を採取する。硝子体手術を必要とした黄斑円孔および黄斑上膜の症例をコントロールとする。
I 研究デザイン
①症例対照研究、②前向きコホート研究、対象:黄斑浮腫患者、非黄斑浮腫患者(黄斑上膜、黄斑円孔)、症例数:criteriaを満たす年間手術数は約160例で、そのうち年間100例を目標に研究にエントリーする。

(平成23年-24年度)研究開始2年間は患者のエントリーならびに術前術後の網膜視機能の評価、サンプルの採取を行う。以下に示すように視力検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査、蛍光眼底造影、光干渉断層計、網膜感度検査および網膜電図などを行い、各種網脈絡膜疾患に伴う網膜視機能評価を行う。

(平成24-25年度)
サンプルの採取およびサイトカイン濃度の測定
①症例対照研究黄斑浮腫患者群と非黄斑浮腫患者群との間における前房水、硝子体・血液中サイトカイン濃度、黄斑部血流速度の比較、組織学的研究、眼内液サイトカイン濃度およびと黄斑部血流速度との相関解析。測定候補サイトカインはVEGF, VEGF receptor-2 (VEGFR-2), Erythropoietin (EPO), ICAM-1, IL-6, PEDF,Vascular endothelial adhesion molecule-1 (VCAM-1),Monocyte chmoattractant protein-1 (MCP-1), Stromal-derived factor-1 (SDF-1)。
②前向きコホート研究治療介入(硝子体手術単独、抗VEGF抗体硝子体注射、TA硝子体注射)症例において、視力および黄斑部網膜厚をprimary endpointとして、黄斑部血流速度変化、眼内液サイトカイン濃度変化との相関解析。エピジェネティクスの関係は次年度に行う。
結果と考察
研究結果:
本年度は網膜硝子体疾患の患者の硝子体手術時に硝子体サンプルを採取し保存したサンプルを用いて、VEGF濃度、IL-6濃度、VEGF-R2を測定し、それぞれ網膜浮腫の重症度との正の相関、ならびに手術後の視力予後に影響しうることを証明した。また、硝子体サンプルを用いて、疾患発症に関与する特異的メチル化部位を特定するために全遺伝子配列を次世代シークエンサーにより調べており、次年度に得られたデータを解析する予定である。

考察:
硝子体サンプル中のサイトカイン濃度と術後の視力や網膜浮腫の重症度は相関することから、治療や硝子体手術術後の予後予測に硝子体サンプル中の液性因子濃度測定が有用であると考えられた。
結論
眼内硝子体サンプル中のサイトカイン濃度を測定することにより、術後や治療効果の判定ならびに、今後の予後予測にも有用であると考えられる。本年度から次年度への継続研究として、眼内硝子体サンプル中の、エピジェネティクス変化ならびに眼内老化との関わりについて、現在研究を行っている。

公開日・更新日

公開日
2013-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224043Z