大災害後の身体・知的障害児に関与する要因と福祉サービス介入の役割及び効果検証

文献情報

文献番号
201224031A
報告書区分
総括
研究課題名
大災害後の身体・知的障害児に関与する要因と福祉サービス介入の役割及び効果検証
課題番号
H24-身体・知的-一般(復興)-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 隆博(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 菅原 準一(東北大学病院 周産母子センター)
  • 佐藤 喜根子(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 仲井 邦彦(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 坂本 修(東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災後、被災地において周産期合併症や低出生体重児の割合が増加している事が判明した。低体重は様々な障害の重要な要因で、震災被災に伴う身体的、知的出生障害児の増加を強く懸念している。本研究では、被災地の身体、知的障害児おける身体的発育、発達に加え、特に認知行動面をも含む観察調査を子どもの成長のマイルストーンに照らし戦略的に把握するとともに、ゲノム解析を追加して環境適応の視点を考慮した解析を行なう。また、自治体の保健師などによる福祉施設や家庭訪問と連携し、質問票調査を実施し、環境、栄養、生活指導を行う。さらに、保健的介入効果についても検証する事を目的とする。その成果は、地域が主役となる地域医療システムの復興を支援に役立ち、今後の大規模災害時に優先的に行う医療や継続的に行う医療について、その重要性や優先度について医学的エビデンスを創出する。
研究方法
本年度は、1)自治体、医療機関での疫学調査の研究計画を確定し、調査体制の準備 2)東北大学および協力病院の倫理委員会に申請と承認 3)障害児の登録・調査を開始。ヒト生体試料(尿、胎盤)の収集 4)対象児の身体的発達及び神経行動的調査を開始。その上で、施設、家庭訪問の準備を行った。
結果と考察
2012年7月から2013年1月末までの期間で、調査への産科に対して、分娩前に同意が得られた母親1285名について、出生体重とそれに関連する要因について検討を行った。その結果、在胎週数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIおよび児の性別が出生体重と関連し、在胎日数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIとは正に関連し、児の性別では男児で出生体重が増加した。母親年齢、分娩様式には関連性は観察されなかった。母親の教育歴が高い場合に、出生体重が大きくなる現象が観察されたものの、母親年齢と学歴の間に正の関連性があり、学歴と出生体重との間に因果関係はないものと推測された。出生体重と最も強い関連性が得られたのは在胎日数であり、在胎日数が1日延びるごとに、出生体重は約20g増加することが示唆された。今回、喫煙習慣や栄養摂取量、震災体験などのデータはまだデータベース化されておらず、確定作業を進めているところである。今後、準備ができ次第、さらに統計解析を実施し、出生体重に及ぼす要因について詳細な解析を行う予定である。また、地元自治体や医療機関との交流を行い、意見交換や情報交換を行った。具体的には、石巻市市役所健康部健康推進課保健師との協議、乳児家庭全戸訪問事業における家庭訪問実施、乳児家庭全戸訪問事業における定例会議(ケース検討会)、子育て支援センターの企画参加、石巻地域で活動している母子支援者の会議“ボンボンカフェ”に参加などで、地域での母子支援活動について意見交換を行い、連携強化に努めた。
結論
母親約1200名について、出生体重とそれに関連する要因について検討を行ったところ、従来の報告の通り、在胎日数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIおよび児の性別が出生体重と関連し、在胎日数、妊娠期間中の母親の体重増、妊娠前BMIとは正に関連し、児の性別では男児で出生体重が増加することが確認された。今後、喫煙習慣、震災体験などの要因を追加してさらい検討を加える必要があると考えられた。また、自治体や地域での定期的な意見交換・情報共有、家庭訪問実施などの自治体の事業参加といった活動を通して自治体との関係を築き、研究遂行のための基盤作りや保健的介入の効果検証のための具体的な計画に対する多くのヒントを得ることができた。次年度はそれを活かし、地域自治体と連携して保健的介入検証のための具体的な活動を行っていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224031Z