災害時における知的・発達障害を中心とした障害者の福祉サービス・障害福祉施設等の活用と役割に関する研究

文献情報

文献番号
201224030A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における知的・発達障害を中心とした障害者の福祉サービス・障害福祉施設等の活用と役割に関する研究
課題番号
H24-身体・知的-一般(復興)-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
金子 健(社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(福島大学大学院 人間発達文化研究科)
  • 吉川かおり(明星大学 人文学部)
  • 柄谷友香(名城大学 都市情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災で被災した知的・発達障害者およびその家族や福祉事業者などの実態調査を通して、津波・地震を中心とした大規模災害時における知的・発達障害者の防災対策(予防及び発災直後から復興まで)について、効果的な支援・受援体制の構築等に関するガイドラインを作成するなど施策提言を行い、今後発生が懸念される首都直下地震、南海トラフ巨大地震等における障害者の減災を目指す。
研究方法
知的・発達障害者およびその家族、福祉事業者、教育・医療関係者、防災関係者、自治体など幅広く協力を得つつ、ヒアリング調査を行う。これにより、知的・発達障害者やその家族、事業者、行政関係者などが大規模災害時に直面する困難を検証する。同時に、当事者及び関係者の予防対策がどうであったか、避難や生活再建の支援がどのように機能したか/しなかったのかについて調査研究を行う。その際、教育・福祉・医療・防災の専門家が有機的に連携することで、包括的な研究体制を構築する。加えて、建物などのハード面(避難や支援拠点の機能)だけでなく、人および事業所間のつながりや心理的ケアの面などソフトの側面も検証する。
結果と考察
平成24年度は、知的障害者の家族、福祉、教育、行政関係者などを主な対象として共通のヒアリング調査を計17カ所・73人に行い、その結果から各研究分担者がそれぞれの研究分野に有意な情報を抽出し、先行研究等も踏まえて分析を行った。
研究分担者の内山は、被災した障がい児医療支援事業で支援を行った児と保護者90例の臨床経験より発達障害・知的障害者の本人と家族が原発事故や震災・津波による生活環境の変化や公的・私的なネットワークによる支援の喪失等により、震災直後より長期にわたって強いストレスに曝されている状況を明らかにした。
吉川は、共通のヒアリングに加え、知的障害者本人や親への個別のヒアリング、アンケートなどを行い、個々の生活状況(住居・職業・健康等)や人的ネットワークを中心に課題の洗い出しを行った。
柄谷は、障害福祉施設での災害時の事業継続計画(BCP)策定に向けて、東北6県下41団体42名の幹部職員を対象にワークショップを開催した。まず、共通のヒアリングに基づく教材を開発・適用し、避難対応など具体教訓を抽出した。また、各施設の現行の防災計画を持ち寄り、見直すべき課題点と改善策までを検討した。
代表研究者の金子は、共通ヒアリングを実施し、研究分担者の研究遂行を監督するとともに、3年目に予定しているガイドライン作成に向けた海外資料等の収集を行った。
結論
知的障害者の家族を対象とするヒアリングは被災時からその後数カ月間の生活について中心に聴き取られたが、被災者としての一般的な困難に加え、知的障害者を家族とすることによる困難にも直面している状況がうかがえた。ヒアリングを行ったのは震災から1年半ほど経過した時期だったが、生活再建の段階にあって知的障害者やその家族にとって問題はより個別化・複雑化し、問題を外部と共有できずに抱え込まざるをえない状況が懸念された。障害者本人およびその家族の中には心身の不調を訴えるものもあり、大規模災害で被災した障害者やその家族の避難や生活再建に関する支援のあり方については、早急な検証が求められる。
東京電力福島第一原発事故による放射能被害を受けた福島県では、県内の子どもの数は減少する中、知的障害・発達障害のある子どもの数は減っていない。上記同様、支援ニーズが変化する中で、医療・福祉の長期かつ効果的な支援が求められている。被災者自身が精神的健康を保ち、復興に向けて取り組んでいくことが求められるが、障害児者をもつ家族においてもそれが可能になるような環境構築が急務である。
また、知的障害者とその家族の被災直後からその後の生活再建において福祉事業所の果たす役割は大きく、その事業継続計画の重要性が明らかになった。東北各県の福祉施設の協力を得たワークショップでは、大規模災害時の対応に関するボトルネックの解決方法を議論することを通して事業継続計画を策定するプロセスの検証を行った。今後は、より実効性のある事業継続計画の策定とその普及を進める必要がある。
上記のような成果をもとに、3年目に向けてガイドラインの作成に向けて取り組んでいく。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
13,913,000円
差引額 [(1)-(2)]
87,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,476,425円
人件費・謝金 2,975,643円
旅費 3,717,376円
その他 2,550,942円
間接経費 3,192,901円
合計 13,913,287円

備考

備考
自己資金として287円

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-