医療的ニーズのある在宅重度障害者に対する喀痰吸引等提供事業所の拡大支援のための重層的医療支援モデルの開発

文献情報

文献番号
201224025A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ニーズのある在宅重度障害者に対する喀痰吸引等提供事業所の拡大支援のための重層的医療支援モデルの開発
課題番号
H24-身体・知的-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松葉佐 正(熊本大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小薗 真知子(熊本保健科学大学)
  • 生田 まちよ(熊本大学医学部保健学科)
  • 三渕 浩(熊本大学医学部附属病院)
  • 口分田 政夫(びわこ学園医療福祉センター草津)
  • 澤野 邦彦(広島県立障害者リハビリテーションセンター)
  • 末光 茂(川崎医療福祉大学)
  • 木実谷 哲史(島田療育センター)
  • 三田 勝己(星城大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 法改正により、研修を受けた介護職員等が、一定の条件下で痰の吸引等を行うことが可能になった。本研究は、在宅重度障害児の痰の吸引等を行う事業者を支援することで、在宅児本人や家族のQOLを向上させることを目的とする。
研究方法
 1年目の今年度は、熊本地域での在宅重度障害児の支援状況を、様々な立場から調査を行った。また、北海道・東京都を含む全国の重度障害児の関係者が、同様の調査を行った。
結果と考察
 本研究によって、在宅重度障害児の実態と、その支援上の問題点が、研究開始前よりも鮮明になった。特に、訪問看護上の問題点が浮き彫りにされた。
 熊本県(180万人)で、NICU由来の重度の在宅障害児が年間10名程度、新たに出現することが判明した。これは、重心施設の病床数(530)と入所者の死亡率(1.5%)から割り出した空床数(8床)を上回る。また、小児専門の訪問看護ステーションの利用者40名中、33%がレスピレーターを装着していた。
 岡山県での訪問看護ステーションへのアンケートでは、半数近く(38か所)が重症児に関する研修を希望しており、研修内容として呼吸器の扱いが最多であった。広島県での日中活動事業所(旧通園)での緊急受診例は、22年度から24年度にかけて増加していた(20%→31%)。北海道では、医療的ケアを要する在宅障害児(者)数は681名で、うち6歳未満が24%、また、吸引、経管栄養を要するものはいずれも約70%であった。滋賀県では、重症児の在宅率が60%(1998)から65%(2008)に増加、入所待機者は52名(2007)から85名(2011)に増加した。年少者の待機者では、準・超重症児が多かった。
 今回の研究から、重度の在宅障害児が増えており、小児の訪問看護の需要が全国的に高まっている割に、一般の訪問看護師の参入が少ない理由の一つが、呼吸器の扱いであることが伺えた。
 訪問看護師が在宅重度障害児の看護に参入しやすくするために、呼吸器の扱いに重点を置いた研修を行う必要がある。また、それと並行して、退院予定の重度障害児が入院中に、利用予定の訪問看護ステーションの看護師が児を訪問し、全身状態や家庭の状況、必要な医療的ケア、とりわけ呼吸器についての情報を得られるように、コーディネーター等が取り計らう必要がある。児の自宅近くにかかりつけ医がいる場合は、その医師にコーディネートを依頼できるともっと良いと思われる。児童発達支援事業所等の日中活動事業所の非医療系スタッフには、緊急受診に関する研修が必要と思われる。吸引等の研修への参加も勧めたい。次年度は、上記の事項に加えて、在宅重度障害児本人のQOLの向上、特に心理的サポートについても研究したい。心拍変動解析、また、ICT技術が生かせると思われる。
結論
 在宅重度障害児が増加している。これは全国的な傾向で、小児を専門にした訪問看護ステーションの整備の必要性が明らかになった。こうした需要にかかわらず、小児の訪問看護師が増えない理由の一つが、呼吸器の扱いであることも判明した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224025Z