障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究

文献情報

文献番号
201224024A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院健康増進センター)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 冨安 幸志(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 樋口 幸治(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 徳井 亜加根(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 星野 元訓(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 喜彦(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中澤 公孝(東京大学)
  • 木下 裕光(筑波技術大学)
  • 石塚 和重(筑波技術大学)
  • 香田 泰子(筑波技術大学)
  • 福永 克己(筑波技術大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,729,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、総合的メディカルチェック等によるスポーツ競技者の競技力向上に関する実態調査を実施し、障害者の競技スポーツにおける競技力等の向上の問題点を明らかにし、障害や種目特性に配慮した介入方法を検討することを目的とした。
研究方法
1.総合的メディカルチェックによる実態調査:一定レベルの競技力を有する障害者スポーツ選手およびスポーツ愛好家の計66名に、総合的メディカルチェック等によるスポーツ競技者の競技力向上に関する実態調査を実施した。
2.問診・アンケート調査によるトレーニング・二次障害の実態調査:障害者スポーツのトップアスリートに対し、スポーツ傷害の発生頻度や発生状況等について質問紙法による調査を実施した。
3.障害・競技特性に基づく運動生理学的手法を活用したトレーニングやコンディショニング法及び二次障害予防法の提示:視覚障害者スポーツであるブラインドサッカーの競技者における実態調査として、アンケート調査、メディカルチェック、運動機能測定、動作解析、フィールドテストを行った。
結果と考察
1.競技レベルの高い選手でも、肥満21.6%、脂質異常56.8%、尿酸13.5%、クレアチニン24.3%、骨代謝関連18.9%の異常が認められた。障害者スポーツ選手は、健常スポーツ選手と異なる特性を持ち、長期間継続したスポーツ活動が可能であるが、その反面、健康管理上のプログラミング化が行われおらず、安全で、効果的な競技成績の向上には、更に、継続した調査研究が必要不可欠であると考えられる。
2.オリンピック選手群に比べ、有意に年齢は高く、幅広い年齢層の選手で構成されていた。また、スポーツ傷害の受傷原因として「オーバーワークまたはオーバーユース」を挙げる選手が有意に多かったが、オーバーワーク予防の1つの指標である体力評価について「受けたことがない」と答える選手が6割以上を占めた。障害者スポーツにおけるスポーツ傷害を予防するためには、関節可動域や内科的疾患などの障害特性に応じた身体状況の把握が重要であり、身体に過負荷をかけないような練習内容、練習量の設定が必要であると考える。また、トップアスリートであるにも関わらず、スポーツ傷害の予防策を講じている選手は5割強、スポーツ傷害発生時の応急処置実施率は約6割にとどまっており、スポーツ傷害に対する意識の低さをうかがうことができた。これらの問題を解決するためには、選手に対する体力評価やメディカルチェックの実施とそれらの結果を踏まえた指導、選手とスタッフに対するスポーツ傷害の予防及び応急処置についての講習会の実施が必要であると考える。
3.アンケート調査では、競技環境に関して、練習時間が少なかった。これは、特にB1クラスでは視覚障害のため一人で練習することが困難であり、衝突などの危険防止のために声掛けなどのコーチやガイドを必要とするためである。スポーツ傷害に関して、ブラインドサッカーは、サッカーに類似した競技であるため下肢に多かったが、B1クラスにおいて頭部・顔面部、手指部の割合も高かった。スポーツ傷害が慢性化する割合も高く、競技人口が少なく、チームに専属の医師やトレーナーがいないためスポーツ傷害を受傷しても十分な治療・リハビリテーションを行っていない可能性がある。メディカルチェックの結果、重篤な疾病や検査異常を認める競技者はなく、眼疾患以外は健常であるという特徴を示した。しかしながら、軽度の肝機能異常、高脂血症、高尿酸血症なども認められたため、再検査や食事指導などにより経過観察を行っていきたい。運動機能検査に関しては、日本代表歴のある選手が少なかった事から、筋力や有酸素運動能力はアスリートとしては十分ではなく、また、関節可動域の低下も見られ、正しいセルフケアやトレーニング方法を指導する必要がある。キック動作解析やフィールドテストについては、被験者が少なく、十分な解析が困難であったが、運動能力を客観的なデータで測定することは競技力の向上に寄与する可能性があり、より効率の良い測定方法の開発を含め継続して測定することが必要と考えられた。
結論
競技スポーツを行っている選手のメディカルチェック、スポーツ外傷・障害とトレーニングとの関係についてアンケート調査、更に、障害および種目特性に特化した調査を行い、障害者スポーツの現状を把握することに努めた。健常者スポーツとは異なる特性が認められ、オーバ-ワークを主要とするスポーツ傷害が多く、予防や装具の認知・装着率も不十分であった。障害特性を考慮した場合では、到達体力レベルの不十分さ、障害特性に添った測定評価方法の開発、医科学サポート体制の整備が必要であることが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224024Z