障害関係分野における今後の研究の方向性に関する研究

文献情報

文献番号
201224022A
報告書区分
総括
研究課題名
障害関係分野における今後の研究の方向性に関する研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩谷 力(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 江藤文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 加藤誠志(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 中島八十一(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 樋口輝彦(精神神経医療研究センター)
  • 松谷有希雄(国立保健医療科学院)
  • 竹島 正(精神神経医療研究センター)
  • 東 修司(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 北村弥生(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,145,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者医療、福祉、福祉工学に関する研究の現状を調査し、中期的に取り組むべき課題を検討すること、ならびに障害統計のデータベースの現状を明らかにし、行政成果評価に資するエビデンス集積のありかたについて、提言すること。
研究方法
研究の現状調査: MEDLINE を用いて障害者福祉に関連する過去10年間に海外専門誌に掲載された研究文献の一次、二次検索をおこない、研究の主要関心領域を調査した。また、米国連邦政府教育省の国立障害研究所NIDRR が作成した「障害リハビリテーション研究開発の長期計画(2013-2017)」を翻訳し、過去の長期計画と比較した。
障害関連統計に関する調査:国による既存の障害者に関する公的統計の内容とその公表状況とそれらのデータの二次利用の状況を調査した。
結果と考察
検索式により、「リハビリテーション医学の対象となっている主要疾患」と「障害」をキーワードに論文サーチをおこない、一次選択の結果、精神障害610件、高次脳機能障害101件、身体障害438件、健康・福祉工学1716件、社会福祉2015件の文献が選択され、それらのなかで総説とタグがつき、抄録がある論文を2次選択した。その結果、身体障害52件、精神障害78件、高次脳機能障害25件、健康・福祉工学を184件、社会福祉 37件が選択された。身体障害に関する文献438件中、2次選択された論文は47件であったが、抄録により領域を分類すると、切断10件、難聴・聴覚障害9件、学習障害5件、脊髄損傷4件、癌4件、盲・視覚障害3件、小児疾患及び脳性まひ(3)が5件、神経筋疾患、脳卒中、脳外傷、盲ろう、肢体不自由、認知障害、言語障害が各1であった。高次脳機能障害に関する文献総数101件のうち、総説は25件であった。総説25件の領域別分類は認知リハビリテーション8件、小児TBI6件、社会生活1件、就学状況1件、住宅環境1件、福祉機器3件、国家的行政1件、ICF3件、歴史1件であった。
精神障害に関する総説文献は、「精神障害を扱い、しかもICFに関する記述のあるもの」に該当する論文は3件、「明確にICFに言及はないものの精神障害を扱ったもの、または身体障害、知的障害等を扱っている精神障害に言及したもの」に該当する論文は14件、「広く障害を扱い、精神障害に言及があるか不明のもの」に該当する論文は8件、「知的障害、発達障害、身体障害などを扱ったもの」に該当する論文は27件、「抄録がないため判別困難」に該当する論文は6件であった。また、いずれ)の分類が一致しなかったものは20件あった。社会福祉領域の総説247編において、内容的に多かった領域は、①就労・雇用に関するもの(9件)②低開発国、中進国(新興国)における障害者、知的障害者(8件)③障害者、知的障害者のヘルスケア、医療ニーズ、ヘルスアクセスに関するもの(7件)④ICFとその応用に関するもの(4件)⑤虐待、法的な支援、犯罪のケアに関するもの(7件)などであった。
NIDRRの研究計画は、医学モデルから社会モデルへの変化が進んでいることが、「重要分野のうち、『地域生活と参加』が『健康と機能』の上位に記載されたこと」「現場を重視した研究開発及び活動の強化が記載されたこと」「障害者人口統計と知識翻訳の重要性が指摘されたこと」から示された。
国内の障害者に関する公的調査には、①直接障害者を対象にした統計調査:6件、②障害者を抽出可能な統計:6件、③「施設」から障害者の特徴を捉えることが可能な統計:6件、④「サービス」から障害者の特徴を捉えることが可能な統計:5件、⑤その他統計(生活保護生徒、労働保険制度、教育、1回限りの調査等):9件、⑥障害者に関する世論調査等:9件、を抽出することができた。厚生労働省における精神障害の関連した統計データは16調査があった。総務省が統計委員会に報告している「統計法施行状況報告」によれば、これらの公的統計に係る調査票情報の二次利用は進んでいなかった。
結論
医学・医療分野において、疾患を障害の視点からとらえる学術論文は少なく、社会モデルに結びつく障害の医学・心理・社会的視点からの検討、社会参加を支援する医学・医療、福祉、工学に関する研究の推進が必要である。
また、「社会モデル」の視点が強まる中で、どのような統計データを整備していくべきか、また「社会モデル」を基礎とする施策を考える上で、どのようなデータが利用可能かについてさらに検討を深めることが重要である。さらに、エビデンスに基づく福祉施策の推進を支える統計情報を提供する仕組みの整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224022Z