文献情報
文献番号
201224020A
報告書区分
総括
研究課題名
医療依存度の高い小児及び若年成人の重度心身障がい者への在宅医療における訪問看護師、理学療法士、訪問介護員の標準的支援技術の確立とその育成プログラムの作成のための研究
課題番号
H23-身体・知的-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
前田 浩利(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野)
研究分担者(所属機関)
- 吉野 浩之(群馬大学大学院 教育学研究科 障害児医学)
- 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター 小児科 新生児学)
- 荒木 聡(東京都立駒込病院 小児科 小児神経)
- 奈良間 美保(名古屋大学大学院 医学系研究科 小児看護学)
- 梶原 厚子(あおぞら診療所新松戸(NPO法人あおぞらネット))
- 西海 真理(国立成育医療研究センター 看護部 小児看護)
- 福田 裕子(あおぞら診療所新松戸(まちのナースステーション八千代))
- 小沢 浩(島田療育センターはちおうじ 神経小児科 小児神経)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,873,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は医療依存度の高い小児及び若年の重度心身障がい者の在宅医療における看護師、理学療法士、訪問介護員及び医師の標準的支援技術の確立とその育成プログラムの作成を行うことである。我が国の小児医療の発達はめざましいが、救命した子どもの中には、医療機器に依存して生活せざる得ない重度心身障がい児がおり、その数は急速に増加している一方地域で支える医師、看護師、リハビリスタッフ、ヘルパーは圧倒的に数が少なく、既に地域で生活している患者と家族が困っているのみならず、NICUなどからの地域移行を困難にしている。そのような状況を改善し、病弱・重症児者が地域で安心して生活でき、NICUからの地域移行もスムーズに進むと考える。
研究方法
本研究は3年間にわたって行う。2011年度は小児及び若年の重度心身障がい者の在宅医療における看護師、リハビリセラピスト、訪問介護員、医師の標準的支援技術を明らかにし、その教育プログラムを作成することを目標に、4つのワーキンググループを作って検討を行った。看護部会、医師部会、リハビリ部会、ヘルパー部会である。2012年度は医療依存度の高い小児及び若年の重度心身障がい者の在宅における支援に関するニーズ調査を行うと同時に、2011年度に策定したプログラムに基づき、パイロット研修を看護師、リハビリセラピスト、ヘルパー、医師と4職種に対して実施した。ニーズ調査では、訪問看護、訪問診療に関しては、緊急時に対応してもらうこと、必要な医療処置を受けることが最もニーズが高かった。訪問リハビリに関しては、関節拘縮へのケア、呼吸器ケア、家族への指導のニーズが高く、訪問介護では自宅での留守番のニーズが高かった。また、パイロット研修を通じて、各職種の専門的な技術に加え、多職種協働のためのコミュニケーションのスキルとシステムの構築が重要であり、各職種が一つのチームとなるためのケア会議開催の手法獲得が教育プログラムの基盤となることが明らかになった。
結果と考察
今年度は、看護部会、リハビリ部会、ヘルパー部会、医師部会のワーキンググループ毎にパイロット研修を実施した。看護部会では、世田谷区5月、千葉県松戸市9月、墨田区11月にそれぞれ5日間のプログラムで実施。ヘルパー研修は10月に墨田区、11月に愛知県半田市で各1日で、リハ研修は墨田区で6月、12月に実施。医師研修は検討の結果、病院勤務の小児科医、開業している小児科医、積極的に成人在宅医療を実施している医師と研修の内容が異なるべきであろうということになり、2012年10月に病院勤務の小児科を対象とした研修を実施し、2013年2月に既に在宅医療を積極的に実施し、経験の豊かな医師を対象に研修を行った。また、原疾患が、15歳未満の小児期に発症し、寝たきりないし、何らかの医療ケアを受けている病弱・重症児者290名を対象にアンケート方式のニーズ調査を実施した。その結果では、訪問看護に関しては、緊急時に対応してもらうことが最もニーズが高く、必要な医療処置を受けることが次にニーズが高かった。訪問診療に関しては、緊急時に対応してもらえること、必要な医療処置を受けることができること、24時間、365日対応してくれることのニーズが高かった。訪問ヘルパーは、留守番をして子どもを見てくれることが最もニーズが高かった。訪問リハビリは、関節をやわらかくする、家族ができるリハビリの指導、呼吸器リハビリのニーズが高かった。また、退院初期に様々な支援のサービスのニーズが高く、支援の提供時期、退院調整の重要性が確認できた。これらの結果をプログラムに反映させ、更に内容を充実させることが最終年度の目標である。
結論
2012年度の研究を通して、患者のニーズがある程度明らかになった。このような在宅生活を送る医療依存度の高い病弱・重症児者への在宅支援に関してのニーズ調査は、これまでほとんど報告がない。この結果を論文としてまとめ、公表し、今後の病弱・重症児者の在宅支援の社会資源整備の際の根拠となるようにしたい。更に、2013年度の研究事業において、ニーズ調査の結果と、各専門職を対象に行ったパイロット研修から得られた知見を合わせ、より利用者の実態に沿った支援を提供できる人材を育成できるようなプログラムを作成したい。本研究によって、作成された多職種の教育プログラムは、様々な地域で実施できるようパッケージし、実際に活用できるようにしたい。たとえば、訪問看護師の教育プログラムは、パイロット研修終了後も、いくつかの地域で実施されており、既に活用されはじめている。また、医師の教育プログラムに関しても、主任研究者や、分担研究者が、既にいくつかの研修会などで、実施しており、実際の効果をあげている。今後、更に、安定的に様々な地域で実施できるためのシステムについても検討していきたい。
公開日・更新日
公開日
2013-06-04
更新日
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