在宅重度障害者に対する医療的ケアにおける支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201224019A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅重度障害者に対する医療的ケアにおける支援の在り方に関する研究
課題番号
H23-身体・知的-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
星 孝(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、一定の条件で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下療法士)らが実施可能となった気管吸引を、安全かつ適切に広く在宅医療に普及させるため卒前教育がどのような役割を担い活用できるかを検討すること、かつ在宅療法士における吸引行為の課題を明らかにし、療法士の標準的支援技術を向上させる基礎的知見の提供を行う。
研究方法
 24年度ではWEB上アンケート方法を用いて、研究者所属学会に登録されている訪問看護事業所868施設の在宅訪問業務に従事する療法士を対象に調査を行った。調査項目として、在宅訪問業務に従事する療法士の 1)ガイドラインの認知および利用率、要望について 2)吸引処置の教育について 3)卒前教育における教育の範疇の意識度等について 4)吸引処置の現況として実施している吸引処置、実施の有無、実施数、実施対象数、実施時のトラブルについて調査した。
(倫理面への配慮)
本調査において、質問用紙の記入は無記名で行い組織名が特定されることはない。また研究目的、研究方法、研究内容、組織情報の保護、研究成果の公表、研究協力の任意性、研究終了後の対応についての説明を書面で行い、送付された調査表の研究者への返信帰着をもって同意とした。なお大学倫理委員会の承認を得た。また収集したデータ及びそこから知り得た情報は研究目的のみに用い,他者に漏洩することはない.データ分析と研究結果の公表では個人を特定できないように使用する.研究終了後、調査表などの紙媒体はシュレッダにかけ破棄するとした。
結果と考察
 在宅訪問業務に従事する療法士に対する調査は265回答を得た。内訳は理学療法士250、作業療法士12、言語聴覚士3であった。1)日本呼吸療法医学会の策定したガイドラインの認知度は41.1%が知っている。利用度は10.2%が利用していると回答した。2)勤務先での吸引教育機会があるとしたものは48.7%。3)在宅訪問業務に既に従事する側からの吸引教育の開始時期は、卒前から始めるべきとしたものが63.0%。また吸引教育の学生到達度に関して、アセスメントの必要性を理解しているレベル46.1%、アセスメントの実施が出来るに近づいているレベル39.5%、紹介や認知レベル14.4%。実技に関する到達度は、模擬実習で1度以上スムーズに実施できるレベル53.9%、模擬実習での経験レベル39.5%、実務として実施できると教員が判断できるレベル21.0%。4)吸引処置の現況として、勤務組織で吸引処置を行っていないが35.1%、実施している場合は口腔内と鼻腔および気管吸引が最も多く32.8%、次いで口腔内と鼻腔吸引が13.6%。療法士個人の吸引実施においては、実施経験無いが38.5%、現場では無いが22.3%、実施したことがあるは27.5%、普段から実施しているが11.7%。平均的7日間(実働)での吸引実施対象者は1人が53.8%、2人が24.0%、吸引実施数は1回が32.7%、2回が24.0%、3回が9.6%。また吸引実施時のトラブルとして最も多かったのは、清潔不潔の手技を守れない37.7%。さらに平均的1ヶ月でのインシデントレポートの提出に及んだものは2件、アクシデントレポートに及んだものは0件であった。
在宅向けの吸引ガイドラインは現在無い。ガイドライン策定委員会においても全ての範囲の対応では無く、医療現場で使用し多くの職種が対応できるものとしての構成を行ったとしている。今回の研究結果から在宅の多様な場面が認識できた。医療現場と比較してガイドラインとして規準をまとめることは非常に難しく、手法や手順の統一の是非も大きな検討課題と考えられる。よって現行のガイドラインに準じ在宅個々の状況に合わせた利用を行うことの利点が大きいと考え、その際は在宅では現行ガイドラインを基本と位置させるに留める方針を吸引実施者に発信することは重要である。しかしこの場合、吸引実施者の教育が極めて重要な課題となり、今回の報告は有用な資料であると考える。
結論
1)本研究は、リハビリテーション関係職種が行う喀痰などの吸引「医政発0430第1号」に貢献する内容である。
2)在宅訪問業務を実施する事業所の吸引処置の現状を明らかにした。
3)在宅における吸引ガイドラインの策定は、必要性の可否について十分に検討されるべきであることを示した。
4)在宅訪問業務における吸引実施者の教育が極めて重要な課題であり、今回の報告は有用な資料となる。
5) 本調査結果が、卒前および在宅訪問業務に従事する療法士の吸引教育における標準化達成度の検討材料として参考活用される可能性があると考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201224019B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅重度障害者に対する医療的ケアにおける支援の在り方に関する研究
課題番号
H23-身体・知的-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
星 孝(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、一定の条件で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下療法士)らが実施可能となった気管吸引を、安全かつ適切に広く在宅医療に普及させるため卒前教育がどのような役割を担い活用できるかを検討すること、かつ在宅療法士における吸引行為の課題を明らかにし、療法士の標準的支援技術を向上させる基礎的知見の提供を行うものである。
研究方法
 23年度では卒前教育当事者の意向や実情を把握するために学生を対象とした調査を行った。次に療法士教育課程を持つ国内全学校477校(大学、専門学校)に対し普及率、普及を阻害する要因調査を行った。調査項目として1)ガイドラインの認知、利用について 2)吸引処置の指導や教育について、教育機会の存在の有無、教育にかける時間など 3)他学科および学内外教育体制との連携への意識度 4)卒前教育における教育の範疇の意識度などを調査した。
 24年度では、研究者所属学会に登録されている訪問看護事業所868施設の在宅訪問業務に従事する療法士を対象に調査を行った。調査項目として、在宅訪問業務に従事する療法士の 1)ガイドラインの認知および利用率、要望について 2)吸引処置の教育について 3)卒前教育における教育の範疇の意識度等について 4)吸引処置の現況として実施している吸引処置、実施の有無、実施数、実施対象数、実施時のトラブルについて調査した。調査において倫理面に対し十分に配慮して行った。
結果と考察
 23年度の研究では、国内全学校への調査を行い、477校中216校の回答(回収率45.5%)を得た。内訳は理学療法学科110/230(47.8%)、作業療法学科 79/182(43.4%)、言語聴覚学科27/65(41.5%)、全体217校/477校(45.5%)であった。23年度の研究から卒前教育内の臨床実習時の実際の経験範囲を検討すべき必要性が示唆され、各養成校における吸引教育プラン構築の一助になりえる報告となった。および卒前教育での現在の吸引教育提供範囲や志向性が推察され、卒前教育側からは就業後の現場での吸引処置習得に期待がかけられているとした傾向が窺われた。
 24年度の研究では、在宅訪問業務に従事する療法士に対する調査を行い265回答を得た。内訳は理学療法士250、作業療法士12、言語聴覚士3であった。現在吸引ガイドラインとして在宅における内容のものが無い。吸引ガイドライン策定委員会においても現行の吸引ガイドラインは、全ての範囲に及ぶものでは無く医療現場で使用し多くの職種が対応できるものとしての構成を行ったとしている。今回の研究結果から在宅の多様な吸引に関する教育や実施の場面が認識できた。医療現場と比較してガイドラインとして規準をまとめることは非常に難しく、手法や手順の統一の是非も大きな検討課題と考えられる。よって現行のガイドラインに準じ在宅個々の状況に合わせた利用を行うことの利点が大きいと考え、その際は在宅では現行ガイドラインを基本と位置させるに留める方針を吸引実施者に発信することは重要である。しかしこの場合においても、吸引実施者の教育が極めて重要な課題となる。そして、ガイドライン策定委員会、リハビリテーション関連職各団体、地域在宅のサービスを実施・教育する立場の者が、本研究結果に示した在宅の吸引に関わる実情を認知していることも重要である。
結論
1)本研究は、リハビリテーション関係職種が行う喀痰などの吸引「医政発0430第1号」に貢献する内容である。
2)今後 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の卒前教育における吸引教育項目と到達度について、ガイドラインの内容に追加する必要性を明らかにした。
3)標準的支援技術の確立に影響を与える卒前教育がどのような立場でいるかが把握でき、今後の卒前教育における吸引教育の方針検討の基礎的知見となる。
4)本調査結果が、卒前および在宅訪問業務に従事する療法士の吸引教育における標準化達成度の検討材料として参考活用される可能性がある。
5)在宅における吸引ガイドラインの策定についての検討資料となる。
6) 本調査結果が、卒前および在宅訪問業務に従事する療法士の吸引教育における標準化達成度の検討材料として参考活用される可能性がある。
7)本研究結果は、報告書として全国の学校(理学療法学科、作業療法学科、言語聴覚学科)と訪問ステーションの管理者に配布した。また理学療法士協会、作業療法士協会、言語聴覚士協会の各事務局と日本訪問リハビリテーション協会および吸引ガイドライン策定に携わるメンバーへの配布を実施した。さらに日本理学療法士協会の協力を得てホームぺージ上の掲載がなされ、学校関係者、在宅訪問に携わる者が閲覧できる環境を整えた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201224019C

収支報告書

文献番号
201224019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
1,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 380,467円
人件費・謝金 0円
旅費 350,345円
その他 269,267円
間接経費 0円
合計 1,000,079円

備考

備考
支出と収入との差の79円は利息分である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-