文献情報
文献番号
201224016A
報告書区分
総括
研究課題名
全国リハビリテーション患者データベースを用いた維持期障害者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究
課題番号
H23-身体・知的-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 尚久(横浜市立大学 附属病院リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
- 赤居 正美(国立障害者リハビリテーション病院)
- 生駒 一憲(北海道大学大学院 医学研究科 リハビリテーション医学)
- 佐浦 隆一(大阪医科大学大学院 医学研究科 リハビリテーション医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的はリハビリテーション医療を受けた患者に対して,維持期での障害状況,生活環境を基に,その後の社会復帰に対する自立訓練事業の実態調査を行い,どのような支援をどの程度の期間実施することが適切であるかを分析し,障害者の自立生活を支援するサービスに関して.標準的なサービス内容,標準的な利用期間等を提示し,全国のサービスの質の均一化を図るものである.本研究では昨年度に急性期・回復期に評価したデータベースを発展させて,在宅での福祉制度利用の種類・期間についての調査を全国規模で施行する.本年度は項目追加した学会データベースの対象者を連続症例として,維持期の自立訓練事業終了後の就労状況および地域での活動状況に関する調査を施行する.
研究方法
①全国入所型自立訓練施設における訓練効果(脳卒中)では、有効なデータの送付が得られたのは10施設、計115例で、調査項目は基本データ、脳卒中関連項目、生活背景、入所時の訓練状況、精神機能、生活自立度、脳卒中の障害側、失語症の有無、半側空間失認の有無、Brunnstrom Stage、Barthel Indexの総点および細項目、FIMの総点および細項目などである。②全国入所型自立訓練施設における訓練効果(脊髄損傷)では、調査項目は基本データ、生活背景、身体要件、痙縮、尿路感染症の有無、排尿方法、排便方法、退院時能力評価、退院後転帰、各レベルでのMMT評価、ASIAの入所時運動スコア、退所時運動スコア、入所時感覚スコア、退所時感覚スコア、入所時ASIA impairment scale、退所時ASIA impairment scale、ADL評価としてBarthel Indexでの総点と細項目である。③脳卒中患者におけるリハビリテーションデータベースと入所型自立訓練施設のデータ比較では、①で得られたデータと2011年版リハ患者DBに登録された回復期リハ病棟脳卒中患者2700例から65歳未満の986例を抽出、退院先が自宅の664例を対象としたデータについて比較検討を行った。
結果と考察
Modified Rankin Scale、Brunnstorm Stage、HDS-R、認知症老人日常生活自立度では入所時と退所時の差は認めず、身体機能、麻痺レベル、精神機能に関しては改善を認めず、これは維持期障害者の特徴に起因すると思われた。ADLに関してはBarthel Indexの総点では84.1点から88.7点へ有意な改善を認め、FIMでは100.2点から102.1点に有意な改善を認めた。また細項目では難易度の高い項目での改善効果が示され、社会生活能力向上に対する訓練施設利用の有効性を明らかにすることができた。脳卒中に対する訓練効果では10施設115名を対象として行い、身体機能、麻痺レベル、精神機能、ADLの評価を行った。Modified Rankin Scale、Brunnstrom Stage、HDS-R、認知症老人日常生活自立度では入所時と退所時の差は認めず、身体機能、麻痺レベル、精神機能に関しては改善を認めない結果であった一方、ADLに関してはBarthel Index、FIMとも有意な改善を認め、細項目では難易度の高い項目での改善効果が示され、社会生活能力向上に対する有効性が示された。脊髄損傷に対する訓練効果では麻痺レベルでは入所時と退所時の差は認めなかったが、ASIA機能スケール、四肢筋力では改善する例を認め、ADLでBarthel Indexの総点で改善、細項目では移動能力より代償手段を含めた更衣・トイレ動作で改善し、社会生活能力向上に対する有効性を明らかにできた。就労年齢の維持期脳卒中患者とのデータ比較ではBarthel Indexは維持期データ、入所者入所時データ、入所者退所時データの順に点数が高く、今回の維持期データに入っていた半数以上の患者には入所適応があり、入所での自立訓練により、ADL、社会生活能力が向上することが期待された。今後通所型訓練施設での効果も検討する必要があると思われた。
結論
維持期脳卒中患者および脊髄損傷患者に対する入所型自立支援施設での訓練効果について検討し、就労年齢にあるリハ患者データベースのデータとと比較検討した。入所施設での訓練によりADL全般、特に難易度の高い項目での効果を明らかにすることができた。この研究から入所型訓練施設利用に適した対象者は①回復期リハを完了しているが、ADL能力をさらに上げることで在宅生活の質の向上が期待されるもの、②ADLは自立しているが、さらに屋外移動能力、家事動作能力などの能力を上げることで、在宅生活、社会生活能力の質の向上が期待されるものなどであるという結論を導くことができた。次年度は通所型施設での効果も含めて検討を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2013-06-04
更新日
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