「障がい者総合福祉法(仮称)」下における重症心身障害児者通園事業のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201224014A
報告書区分
総括
研究課題名
「障がい者総合福祉法(仮称)」下における重症心身障害児者通園事業のあり方に関する研究
課題番号
H23-身体・知的-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
末光 茂(川崎医療福祉大学 医療福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋 幸男(国際医療福祉大学大学院)
  • 西間 三馨(福岡病院)
  • 松葉佐 正(熊本大学医学部附属病院)
  • 小西 徹(長岡療育園)
  • 宮崎 信義(久山療育園重症児者医療療育センター)
  • 水戸 敬(にこにこハウス医療福祉センター)
  • 三田 勝己(星城大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,991,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の「重症心身障害児者制度」は、世界でも例をみない在宅と施設入所を総合した優れた制度である。ただし、入所サービスについては、制度の完成度も高いのに対して、在宅支援は未だ十分に整備されているとはいいがたい。
 本研究では、重症児通園利用者の実態把握を踏まえ、新制度の下での支援体制の基準づくりに向けた提言を行うこととした。
とくに研究2年目の平成24年度には、いわゆる「つなぎ法」への移行が具体化したことから、その結果にも焦点をあてて実態調査を行い、「障害者総合支援法」下での重症心身障害児者の日中活動の望ましいあり方に向けた課題の検討・分析を行うことにした。
研究方法
(1)まずいわゆる「つなぎ法」導入後の実態とくに運営に与える影響について全国の重症心身障害日中活動支援事業所(310ヶ所)へのアンケート調査を実施。
(2)兵庫県内の重症心身障害日中活動支援事業所の整備状況と利用者の実態を分析。
(3)重症心身障害通園モデル事業時代からの5施設(北海道療育園,横浜療育園、長岡療育園、旭川児童院、久山療育園)の23年間の利用者の実態調査に基づき、果たしてきた役割を分析。
(4)職員のタイムスタディ調査を3日間11名について実施し、業務を分析。
(5)5月、9月、1月の3ヵ月を抽出し、46施設の欠席状況と理由を前方視的に調査。
(6)スペイン・ポルトガルならびにカナダ・アメリカでの実態について聞き取り調査を実施。
結果と考察
(1)平成24年4月1日からのいわゆる「つなぎ法」の施行により、重症心身障害児者通園事業は法定施設に位置づけられるとともに、「障害者自立支援法」の枠組での選択を各施設では余儀なくされた。
全国重症心身障害日中活動支援協議会加入施設(310ヶ所)へのアンケート調査結果によると、定員が柔軟に設定できることから、定員増により運営面での改善をみた所(28.2%)がある一方で、利用者の確保に困難をきたし、むしろ悪化をきたしている所(39.5%)とに分かれていることが明らかとなった。
(2)全国の縮図といわれる兵庫県における重症心身障害児者の日中活動の場の配置状況をみると、明石市・加古川市や淡路市などの瀬戸内海沿いの一部の都市と県北の過疎地に空白地域があること、さらに最も医療ニードの高い「超重症児」・「準超重症児」が医療機能を持たない近くの通園で受け入れできないため、医療機能を有する通所に遠距離通園を余儀なくされている実態が明らかとなった。身近な所で通所できる受け皿と、安心安全のためのバックアップ機能の体系化が求められることが示された。
(3)平成元年の重症児通園モデル事業時代からの5施設での23年の取り組みを振り返った結果、いわゆる日中活動の場としてのみならず、療育活動や医療支援の面で独自の役割を果たしており、専門性の維持、充実が不可欠であることを明らかにした。
(4)重症児通園にかかわる職員のタイムスタディ調査結果から、看護師は施設入所に比較して共通業務よりも個別業務がより多いことに加えて、リハビリテーションスタッフの関与も不可欠であることが明らかとなった。
(5)重症児通園利用者の欠席状況を5月、9月、1月について前方視的調査を行った結果、対照施設のそれに比して欠席率が高く、それも短期入所の利用や入院などあらかじめ予定された欠席の頻度が高いことが示された。
(6)スペイン・ポルトガルならびにカナダ・アメリカとの比較調査により、わが国の重症児施策は世界的に見て高い水準にあることが明らかとなったが、国連・障害者権利条約に則ると、本人の自己選択や身体抑制等にかかわる面に課題があるとの指摘があった。
結論
 いわゆる「つなぎ法」への移行後の実態調査から、「超重症児」や「準超重症児」を含む医療ニードの高い重症心身障害児者の在宅生活を支える重要な支援策として、重症心身障害児者を中心とする日中活動支援事業所の果たす役割は大きい。しかし、それらが全国どこに住んでいても、身近で安心・安全な条件下で整備される為には、いくつかの課題が残されていることが確認できた。それらの解決策に向け、最終年度でさらなる実態調査に基づく政策提言が期待されていると考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224014Z