共生社会を実現するための地域づくりを促進する要因の解明 

文献情報

文献番号
201224012A
報告書区分
総括
研究課題名
共生社会を実現するための地域づくりを促進する要因の解明 
課題番号
H22-身体・知的-若手-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 寿広(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 憲司(社会福祉法人 愛光)
  • 佐藤 彰一(國學院大學 法科大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,367,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「共生社会」の観点から地域づくりを成功させる要因を明確にすることを目標とし、訪問により各地の取り組みに関する情報を収集するとともに、地方公共団体を対象とした調査を実施し、これまでの調査結果を踏まえて、最適な地域づくりのあり方を支援するため地域特性を表す指標づくりを目的とした。また、内閣府障がい者制度改革推進会議差別禁止部会の報告書が発表されたこと等を踏まえて、前年度に引き続き障害者差別対応マニュアル(http://shougaisabetsu.wiki.fc2.com/)の作成作業を継続して実施した。
研究方法
全国の地方公共団体合計1,789箇所を対象として、障害福祉施策に関連した予算(案)額と、独自の取り組みの情報を求めるアンケートを作成してホームページ(http://kyouseishakai.org/)に掲載した。団体ごとにログインIDとパスワードを発行しSSLによる暗号送信として情報の保護を実施した。同ページ内に、地域特性に応じて実施し得る施策事業を提案する仕組み(マッチングシステム)を構築する目的で、平成23年度の調査で得た数値をもとに判別分析を実施し、その結果をもとに、新規に回答する団体について地域特性として所属するグループ分けを行うとともに同グループに属する団体が実施している事業の先行事例を一覧形式で表示するプログラムを作成した。
結果と考察
平成23年度の調査結果について回答した87団体を4つのグループに分けた。団体の人口に占める障害者率(3障害合計)、3つの予算額の前年度比増加率(総額、生活支援、保健・医療費)の合計4指標を独立変数とし、4つのグループを従属変数として判別分析(正準判別分析)を実施したところ、3つの判別得点について有意な結果を得た(Wilk’s lambda=0.024, F(df=12, 198)=51.28, p<0.0001)。マッチングは、新規に回答する団体について、入力された数値をもとに、判別得点の係数をもちいて所属グループを予測し、所属グループと取り組みたい分野の組み合わせにより、(1)データベースの中から同一グループに属する団体の事例を検索する、(2)同一グループに属する団体に該当する事例がない場合は障害者率をもとに類似団体の事例を検索する、(3)それ以外の場合は取り組みたい分を飲みをもとに検索する、ことにより、最適な取り組み事例を一覧として提示する。検索の対象とするデータベースは、これまでの2年度間の調査で収集した独自の事業に関する情報99件に、月刊誌「ノーマライゼーション 障害者の福祉」(財団法人日本障害者リハビリテーション協会 編集)に連載された「わがまちの障害福祉計画」に取り上げられた地域の取り組み74件、内閣府発表「平成23年度都道府県・指定都市の単独事業等実施状況」の一部および研究代表者が各地への訪問等で収集した情報18件を加えて作成した。分野として医療10件、教育(療育含む)6件、啓発16件、交通33件、雇用33件、生活支援66件、施策21件、その他2件の分類を設けた。作成したマッチングシステムは、自地域の特性に応じた施策事業を検討することを支援する目的で、地方公共団体職員の利用に供した。本研究課題による調査を通して、地方公共団体を対象としインターネットによる調査が実施可能であり、今後関連した各種調査において活用できることが示された。また、ある団体のもつ地域特性を把握しようとする際、既存の指標に加えて、本研究課題で得た地域の障害者率と予算額の変化を用いて団体を類型化する指標を併せて活用することは有効と考えた。障害者率の算出に必要な、地域に暮らす障害者数については、情報の公開に対する扱いが団体によって同一ではない現状があることから、本研究の結果の公表を通して指標としての重要性が再認識されることを期待する。
結論
「共生社会」の観点から地域づくりを行うために行政が関与し必要な予算措置を講じて事業として実施する際には、検討の第一歩として当該地域特性の把握が不可欠であり、その手法として、従来の諸指標と併せて、障害者率と予算額の増額率から作成した本研究課題の指標を活用することはきわめて有意義と考えた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224012B
報告書区分
総合
研究課題名
共生社会を実現するための地域づくりを促進する要因の解明 
課題番号
H22-身体・知的-若手-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 寿広(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 憲司(社会福祉法人 愛光)
  • 佐藤 彰一(國學院大學 法科大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「共生社会」の観点から地域づくりを成功させる要因を明確にすることを目標とし、地方公共団体を対象とした調査と地域住民を対象とした調査を並立させて実施し、最適な地域づくりのあり方を支援するため地域特性を表す指標づくりを目的とした。
研究方法
研究(1)は、各年度、先駆的な取り組みを実施している地域を訪問した。研究(2)は、地域づくりにおける行政の果たし得る役割を明らかにする目的で、各年度、全国の地方公共団体を対象として、障害福祉施策に関連した予算(案)額と、独自の取り組みの情報を求めるアンケートを作成し発送した。研究(3)は、地域づくりに不可欠な住民のもつ力を把握する方法を確立する目的で、平成22年度に、東京都三鷹市および茨城県鹿嶋市の協力を得て住民基本台帳より抽出した各1,000人を対象として、ソーシャル・キャピタルの測定を実施した。アンケートは郵送法により、回答は無記名とし、調査の実施の告知と問い合わせ先の情報は市報に掲載した。調査の実施に当たり倫理委員会の承認を得た。研究(4)は、平成22年度の研究(2)で移動支援が多く報告されたこと、研究(3)において住民の要望として地域内の移動手段の充実が両市に共通して見られたことから平成23年度に実施した。全国の公共交通事業者等合計228社を対象として、障害がある利用者を対象とした運賃料金等の割引、その他の支援を質問する記名式アンケートを郵送した。研究(5)は、「障害者差別相談マニュアル」の作成を目指し、参加者の議論により作成する方法とし専用のホームページを設けた。福祉関連のメーリングリストへの投稿をもって協力の呼びかけを行った。
結果と考察
地方公共団体を対象とした調査からは、多くが予算の増額を試みており、財政状況によらず独自の事業を実施していることが明らかになった。平成22年度は、分野別に予算額の増額率を求め団体の種別、財政比較分析表における類型、地域人口に占める障害者率によって比較した。平成23年度は、主成分分析とクラスター分析により、回答団体が4つのグループに分けられることを示した。平成24年度は、障害者率と、予算に関する前年度比増額率(総額、生活支援、保健・医療費)の合計4指標を用いたモデルが、団体を類型化する指標として活用できることを示した。以上の成果を踏まえ、独自の事業に関する回答をデータベース化し、地域特性に最適な取り組み事例を提案するマッチングシステム(http://kyouseishakai.org/)を構築した。一方で、行政は、独自の事業について関与の必要性が高く目標の達成状況は順調と評価しながらも、住民からの意見聴取を実施していないことが示された。住民を対象としたソーシャル・キャピタルの調査からは、個別の質問項目から回答者のネットワークについて十分に予測できるモデルを得ることはできなかった(数量化I類)が、住民の意識調査を実施する際に、「自分には重要な決定をする力があると思う」といった質問を含めることは、住民個人の地域内での人間関係のありようを捉えつつ、集合体としての地域社会の持つ力を測る上で有意義であると考えた。本研究の手法を用いてソーシャル・キャピタルの調査を実施することは可能であると考えた。また、調査地域のうち鹿嶋市は東日本大震災の被災地域であり、地震発生直前に実施した本調査の結果は、震災復興における地域住民の活動とソーシャル・キャピタルとの関連を検討する上で資するものと考える。平成22年度の研究(2)で得たコミュニティバスの運用状況と23年度に得た公共交通事業者による取り組みの実施状況を統合して「交通バリアフリーマップ」(http://barrierfreemap.wiki.fc2.com/)として公開した。公開が、障害の有無によらず利用客にとって快適で利便性の高い移動手段を確保することにつながることを期待する。さらに、平成23年度の研究(2)で地方公共団体による障害者虐待防止に関する取り組みの実施状況について情報を収集するとともに、障害者の権利擁護に取り組む地域での取材を経て、「障害者差別相談マニュアル」(http://shougaisabetsu.wiki.fc2.com/)を作成した。
結論
「共生社会」を実現する地域づくりを成功させる要因は行政と住民の双方に複数存在し相互に関連していることが示唆された。地域づくりのうち、とくに行政が関与し予算措置を講じて事業として実施する際には地域特性の把握が不可欠であり、その方法として、従来の諸指標と共に障害者率と予算額の増額率を指標として取り入れること、調査項目に「重要な決定をする力」などをたずねる質問を含めて住民のネットワークを把握すること、事業の評価方法について住民の参加を得て実施する方法を確立することが必要と考えた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域特性を表す指標として障害者率と財政状況を用いて、共生社会づくりに向けた取り組みの様態から地方公共団体を4つに分類できることを示した。インターネット上のアンケートに回答することで、地域特性と行政として取り組みたい分野との組み合わせにより先行する各地の事業を参考例として呈示するマッチングシステムを作成し、地方公共団体職員の利用に供した。また、住民基本台帳からの抽出による郵送法調査により、地域住民を対象とした一定規模でのソーシャル・キャピタルの測定が実施可能であることを確認した。
臨床的観点からの成果
共生社会づくりに向けて多くの地方公共団体が移動支援の充実に取り組み、住民が地域内の交通の充実を求めていることが明らかになった。一方で、実施した事業に対する住民評価がほとんど行われていないこと、地域特性に大きく関与する地域に暮らす障害者数について情報の扱い方が統一されていない現状を明らかにした。また、ソーシャル・キャピタルのいくつかの要素が住民個人の社会的なネットワークの様態に関連することが推測され、住民を対象とした意識調査関連した質問を入れることは地域特性を知る上で有用であると考えた。
ガイドライン等の開発
ホームページ「障害者差別相談マニュアルを作ろう」「交通バリアフリーマップ」を作成し、ともに一般に公開している。障害児への早期からの支援を充実させることを目的として、書籍「「育てにくさ」に寄り添う支援マニュアル―子どもの育てにくさに困った親をどうサポートするべきか」を改訂するとともに「育てにくさを持つ子どもたちのホームケアー家族ができる取り組みと相談のタイミング」を刊行した。
その他行政的観点からの成果
ソーシャル・キャピタルの調査結果については、実施した2市に情報として提供した。地方公共団体の実施する共生社会づくりに向けた施策・事業について、調査への回答を通して寄せられた情報と、既存の資料から得た情報とを統合し、データベースとし、開示可能なものについて一覧をインターネット上で公開するとともにマッチングシステムにおいて検索対象として活用している。
その他のインパクト
北海道地域再生推進コンソーシアム地域社会雇用創造事業「インターンシップ」就労希望コース(釧路-1)において講演し、障害者の権利擁護について、また、本研究課題について説明を行った(2010.6.21)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
障害児支援をめぐる地方公共団体の取り組み,公共交通事業者による交通バリアフリーへの取り組み ほか
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
書籍「育てにくさを持つ子どもたちのホームケアー家族ができる取り組みと相談のタイミング」診断と治療社(2012,刊)を編著

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
堀口寿広,昆かおり,秋山千枝子
広汎性発達障害の認知特性がある保護者に向けた医療機関における配慮
臨床精神医学 , 39 (9) , 1117-1125  (2010)
原著論文2
田代信久,堀口寿広
試行的実施事業によるスクールソーシャルワーカーの活動報告
小児保健研究 , 69 (6) , 823-829  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-07-04

収支報告書

文献番号
201224012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,367,000円
(2)補助金確定額
3,367,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 40,038円
人件費・謝金 0円
旅費 478,830円
その他 2,848,132円
間接経費 0円
合計 3,367,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-