障害者の自立を促進する福祉機器の利活用のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201224009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の自立を促進する福祉機器の利活用のあり方に関する研究
課題番号
H22-身体・知的-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪 基(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 信一(筑波大学 ビジネスサイエンス系 )
  • 田中 理(横浜市総合リハビリテーションセンター )
  • 東 修司(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 硯川 潤(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,001,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の自立と社会参加、QOLの向上を図るために、福祉機器が真に効果的に利活用されるための総合的な方策を提言することを目的に、ア)多様なステークホルダー(利害関係者)が関係する課題での問題解決方の方法論の提案と、イ)方策の実現に向けてのロードマップの策定を目標とした。福祉機器利活用の総合的な方策の研究を短期間に効果的に進めるために、多様な福祉機器のカテゴリーの中から比較的課題検討が進んでいる車いすおよび義肢装具を事例として選び、方法論研究の実践のフィールドとするとともに、それらのフィールドに関しての具体的ロードマップを提案し、方法論の有効性の検証を試みる。
研究方法
ア)方法論に関しては、初年度の参加型討議手法の調査、その結果に基づき取り上げた「フォーサイト」をベースに福祉機器活用のための“井戸端会議”の設計を行い、最終年度に当たる24年度のワークショップ(10月7日~8日の2日にわたり開催)により、“井戸端会議”の実践と評価を行った。その結果、福祉機器のより良い利活用の方策を検討する“井戸端会議”方法論の開発に成功するとともに、車いす等に関するロードマップを提案することができた。
また、イ)ロードマップ策定の研究では、福祉機器利活用のあり方の提示および代表的な福祉機器として義肢装具と車いすを取り上げ、利活用促進要素の同定に重点を置き研究を実施し、福祉機器の利用者、専門職、メーカー、販売・貸与事業者、研究者、行政担当者等の利活用に関わるステークホルダーの参加型討議のデザインを深化させることに成功し、24年度には車いすをテーマとして参加型討議であるフォーサイトの全体プロセスを設計・一部実践を通して方法論の基盤構築とロードマップの策定することに成功した。本研究では、方法論の研究とロードマップ策定の研究を車の両輪として進め、実効性の高い総合的な方策を提言した点に特徴がある。
結果と考察
 車いすに関して、利活用促進に関係する要素(適合、利用、ニーズ、開発、評価、製品化、販売、これらを取り巻く社会環境)とステークホルダー(利用者、中間ユーザ、研究者、製造・販売事業者等)との関わりの分析を基に、利活用促進のシナリオを検討した。さらに、車いすの給付判定プロセスについて、模擬判定調査という手法を用い判定現場で使われている実践的評価項目の抽出を行い、分析を深めた。ワークショップを通して、俯瞰的な視点に立ったロードマップを策定することができた。
 義肢装具分野では義肢装具の利活用に関係するステークホルダー達により課題抽出と課題解決案の検討を実施し、適切な用具が適切に利用者に届くための方策に関するロートマップを策定することができた。
 制度に関しては、中長期的な視点から福祉用具の給付制度としての在り方の検討、介護保険法に基づく福祉用具貸与(購入)制度と障害者自立支援法に基づく補装具費支給制度との比較検討、及び補装具費支給制度と社会保障の他の給付制度との比較検討、並びに、福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律の法律制定の経緯と見直しの動向等の考察を行った。
 データマイニング技術による利活用要素の分析手法の導入方法の検討も進めた。
結論
研究の結果、利用者、開発者、行政など個別のステークホルダーの集団では今まで不可能であったコンセンサスの形成を、多様な参加者による総合的な課題解決のフレームワークの中で話し合い、実現可能な方策を見出す福祉機器分野での“井戸端会議”を開発し、ロードマップ策定と云う解決方策の可能性を示すことができたと考える。社会技術分野の方法論に根差したこの方法論の開発と車いす等の具体的な領域でのロードマップ提案により、福祉用具の利活用に対する社会情勢の変化にともなう課題の検討や、平成5年に施行された福祉用具法の見直しの議論等に活用されることが期待される結果が得られたと思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224009B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の自立を促進する福祉機器の利活用のあり方に関する研究
課題番号
H22-身体・知的-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪 基(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 信一(筑波大学大学院 ビジネス科学研究科)
  • 田中 理(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 依田 泰(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
  • 海野 耕太郎(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
  • 東 修司(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 硯川 潤(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の自立と社会参加、QOLの向上を図るために、福祉機器が真に効果的に利活用されるための総合的な方策を、「平成35年(福祉用具法30年)の福祉機器利活用のあり方の提示」することを目的とする。研究の背景となった問題意識は、平成5年の福祉用具法施行を契機として、福祉機器の研究開発は大きく進展したといえるが、真に役立つものとして普及しているものは必ずしも多くはないという事実である。この原因は、個別利用者への適合や安全性の確立、公的給付制度など利活用に至る仕組みや利活用に至るプロセスが十分に整備されていないことが考えられ、しかも、このプロセスには多くの段階があり、多くのステークホルダー(いわゆる利害関係者たち)が存在することにこの分野の固有の特色がある。そのため、それぞれの段階での利活用促進要素が独立して指摘されることはあっても、その要素間の関連性が希薄になり、包括的な課題解決が困難となっている。研究開始の発端は、平成19年度に実施された「生活支援技術革新ビジョン勉強会」(厚労省 社会・援護局)の議論ある。これからの福祉用具・支援機器の利活用を推進する必要性と、そのための“井戸端会議(参加型手法)のすすめ”が提案されている。そこで、ア)多様なステークホルダー(利害関係者)が関係する課題での問題解決方の方法論の提案と、イ)方策の実現に向けてのロードマップの策定を目標とした。
研究方法
「平成35年(福祉用具法30年)の福祉機器利活用のあり方の提示」を実現するために、福祉機器の利用者、専門職、メーカー、販売・貸与事業者、研究者、行政担当者等の利活用に関わるステークホルダーの参加型討議をデザインするとともに、それを実践しロードマップを作成する。採用した参加型手法は、欧州における福祉機器分野で開発された「フォーサイト」で、「車いすフォーサイト」という“井戸端会議”を設計したうえで実施し、成果物としてのロードマップの作成を行った。
結果と考察
ワークショップ(10月7日~8日の2日間開催)により、“井戸端会議”実施した。参加したステークホルダーは利用者グループ、処方者グループ、製造業者・供給業者グループ、研究開発者グループで、各グループの構成人数は5名とした。グループ討議と、全体討議を繰り返し、参加者による討議により7つロードマップが描かれた。多様なステークホルダー参加による討論手法から、適合支援者と供給事業者の実生活のイメージ力向上が利活用のポイントにつながることが示され、利用者が生活イメージを持って人生選択できるように指導できる人材の育成とそのための拠点の整備がシナリオのゴールであるとの結論を得た。一例をあげれば、適合技術の支援拠点として、「ATセンター」と呼ぶ施設のモデル設置が提案された。
多様な専門家、利害関係者、その他の参加を得て、この参加者らの有する知識の総体を「集合的知」として活用し、中長期的な政策立案・ビジョン立案や意思決定に活用する上で効果があること、また、多様な利害関係者相互間で多様な政策に関する情報交換や相互協力を促進し、同時にさまざまなアクター(主体的参加者)が計画の遂行に参画することを促す活動であることを実証できた。
同時に義肢装具に関しても、多様なステークホルダーの参加によりロードマップの作成を試みた。「適切な義肢を適切な利用者の手に」がステークホルダーの間の共通の解決課題としてクローズアップし、中心的なキーワードとして「部品の機能区分の作成」が取り上げられ、ロードマップが完成した。
制度に関しては、中長期的な視点から福祉用具の給付制度としての在り方の検討、介護保険法に基づく福祉用具貸与(購入)制度と障害者自立支援法に基づく補装具費支給制度との比較検討、及び補装具費支給制度と社会保障の他の給付制度との比較検討、並びに、福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律の法律制定の経緯と見直しの動向等の考察を行った。
データマイニング技術による利活用要素の分析手法の導入方法の検討も進めた。
結論
井戸端会議の可能性を示した。研究の結果、利用者、開発者、行政など個別のステークホルダーの集団では今まで不可能であったコンセンサスの形成を、多様な参加者による総合的な課題解決のフレームワークの中で話し合い、実現可能な方策を見出す福祉機器分野での“井戸端会議”を開発し、ロードマップ策定と云う解決方策の可能性を示すことができたと考える。社会技術分野の方法論に根差したこの方法論の開発と車いす等の具体的な領域でのロードマップ提案により、福祉用具の利活用に対する社会情勢の変化にともなう課題の検討や、平成5年に施行された福祉用具法の見直しの議論等に活用されることが期待される結果が得られたと思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
福祉工学分野で、ステークホルダー参加による技術開発と利用促進に関する新たな手法を提案した。
社会技術分野の好個な事例として、福祉機器分野の存在と事例的実証研究結果を提供した。
臨床的観点からの成果
高齢者・障害者のQOL向上を目指す福祉工学の臨床実用化を促進する方策を、実証的に提案した。
ガイドライン等の開発
支援機器・福祉機器の利活用促進のための方策提案の事例研究として活用されることが期待される。
福祉用具法の見直し等、今後の福祉機器開発・導入促進等の施策の参考事例として活用されることが期待される。
その他行政的観点からの成果
福祉機器の開発助成制度の新しいパラダイムを提供するものと期待される。
その他のインパクト
国連の障害者権利条約批准のための社会環境整備並びに高齢者・障害者のQOL向上に向けた福祉機器利活用の社会保障制度のためのグランドデザインを検討するためのロードマップ作成に貢献する可能性が高い。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-06-19

収支報告書

文献番号
201224009Z