かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究

文献情報

文献番号
201223009A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究
課題番号
H24-難治等(腎)-指定-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部附属病院 血液浄化療法部)
  • 木村 健二郎(聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科)
  • 柴田 孝則(昭和大学 医学部内科学講座腎臓内科学部門)
  • 西野 友哉(長崎大学 病院第二内科)
  • 槇野 博史(岡山大学 大学院医師薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 松尾 清一(名古屋大学 大学院医学系研究科腎臓内科学)
  • 渡辺 毅(福島県立医科大学 医学部 腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座)
  • 和田 隆志(金沢大学 大学院)
  • 成田 一衛(新潟大学 医歯学総合研究科 腎臓内科学)
  • 草野 英二(自治医科大学 内科学講座腎臓内科学部門)
  • 佐藤 博(東北大学 大学院薬学研究科臨床薬学分野)
  • 冨田 公夫(熊本大学 大学院生命科学研究部腎臓内科)
  • 藤垣 嘉秀(浜松医科大学 第一内科)
  • 御手洗 哲也(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 中村 丁次(公益社団法人日本栄養士会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)で得られた成果の科学的分析とその成果を活用推進することにある。日本腎臓学会が作成した慢性腎臓病(CKD)診療ガイドの根拠は諸外国の治療成績、他疾患での知見が主であり、わが国独自のCKD 患者によるエビデンスが求められている。また治療体制もわが国の医療事情を考慮すると、腎臓専門医だけでのCKD診療体制は非現実的であり、かかりつけ医と腎臓専門医の間の診療協力体制、コメディカルの活用などが喫緊の課題である。本研究では、この戦略研究により得られた成果をより具体的に明らかにすることや、研究成果をわが国の医療、施策に反映させることを目的とした。
研究方法
平成19~23年度 CKD患者を対象に戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)として日本全国の559人のかかりつけ医のもとで診療を受ける2,417人の患者を対象に弱介入群としてCKD診療ガイドに従って参加者を診療するA群と、強介入群として、診療目標達成支援ITシステム・受診促進支援に加え、コメディカルから生活食事指導をうけるB群での各地区医師会医会をクラスターとするクラスターランダム化比較研究が平成24年3月まで3.5年間行われた。そこで本研究では、戦略研究での主評価項目、副次評価項目についての、研究終了時点での状況を確認調査すると同時に、本研究に協力いただいた腎専門医、かかりつけ医、管理栄養士からの情報収集と分析、さらには、生活・食事指導を施策へ反映するためにチェックリストの妥当性の検証を行った。
結果と考察
主要評価項目の受診継続率、連携達成率はともに有意にB群(強介入群)において有意に良好であった。副次評価項目では、CKD診療目標達成率(体重管理、血糖などの一部)ではB群で改善傾向を示した。血清クレアチニン値の2倍化到達率、eGFR50%低下到達率はB群で少ない傾向を示し、 B群で腎機能進行抑制を認めた。しかし、透析導入イベント発生数は全体で約50名程度と参加者全体の10%にも満たない数であり、今後の透析導入の推移に関してのさらなる経過観察が必要と考えられた。
 戦略研究において行った有用なCKD診療連携支援体制をクラスター・ランダム化比較試験で検証することは、わが国のCKD診療体制を大きく改良させる基盤となり、その研究成果は世界に発信できる質の高い臨床研究である。臨床研究実施体制の基盤整備は、トランスレーショナルリサーチ促進による国家的財産の確立や、行政・政策の検証による国民生活の向上に寄与すると考えられている。本研究により、戦略研究期間内に把握困難であった透析導入や心血管イベントなどの一部の情報を得ることができ、戦略研究の成果を示すことや、得られたアウトカムを検証し、そのエビデンスを発信することが可能となった。さらには、チェックリストの妥当性の検証を行い、統一マニュアルの改訂を含めた指導方法の検証、地域による食生活の差異をどのようにフィードバックし、今後均てん化に向けた準備、新たな指導媒体の提示などを検討した。かかりつけ医の診療の場において、かかりつけ医、コメディカルを含めたCKD療養指導が可能な人材を育成することでわが国の1,300万人をこえるCKD患者の診療とわずか3,000名弱の腎専門医が重症患者の診療に費やす時間が確保可能となり、医療の適正配置の実現が可能となること、さらには、薬物療法中心の医療から生活食事指導、教育指導中心の医療の効果が検証され、生活習慣病の治療の意味で合目的的な医療への転換が可能となることも期待される。今後は、戦略研究期間内にすでに明らかにしたCKD患者に対するQOL調査 (Tajima R et al, 2010,Clin Exp Med)を用いて、戦略研究参加者における介入の費用対効果を算出することや、戦略研究で得られた結果を踏まえ、主論文では解析を行えていない部分に関して、二次研究の募集を公募し、主論文とは別の角度から戦略研究の解析を行う予定である。
結論
本研究によって、戦略研究で得られた最終的な主要評価項目(受診継続率、連携達成率、CKDステージ進行率)、副次評価項目の評価が可能となった。今後は、CKD患者における質の高いエビデンスを国内外に情報発信する予定である。さらには、得られたアウトカムを施策に反映する予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201223009Z