新規消化管ペプチドグレリンによる慢性腎臓病新規治療戦略の確立

文献情報

文献番号
201223007A
報告書区分
総括
研究課題名
新規消化管ペプチドグレリンによる慢性腎臓病新規治療戦略の確立
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 寒川 賢治(国立循環器病研究センター)
  • 脇野 修( 慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,018,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性腎臓病(CKD)でのエネルギー消耗性の病態であるprotein-energy wasting syndrome(PEW)の改善によりCKD患者の腎予後の改善を目指すのが本研究の目的である。申請者はこれまでPEWの原因となるインスリン抵抗性の研究を進め腎性インスリン抵抗性症候群(RIRs)の概念を提唱した。平成21年度の厚生科学研究事業(課題ID 09156251)でこれを詳細に解析した。PEWでは筋委縮、脂肪萎縮が認められる。申請者は筋萎縮や脂肪萎縮性糖尿病の病態解明を行いミトコンドリア(Mit)の機能異常の存在(Biochem Biophys Res Commun 2008, Diabetes. 2009)を報告してきた。PEWでの全身の酸化ストレスの亢進に対し、共同研究者が発見した(Nature 1999)消化管ペプチドであるグレリンに注目した。申請者はグレリンの慢性投与が慢性の腎障害を抑制することを発見した。さらに平成24年度の基礎的検討ではグレリン受容体欠損マウスにおいてはすでに腎組織の酸化ストレスの亢進、尿細管障害が認められ、内因性のグレリンが腎臓の酸化ストレスレベルの調節に重要であることが明らかとなり、グレリンの腎保護作用の有効性がさらに確認できた。
研究方法
グレリン臨床試験の実現のためのシステムづくりとプロトコール作成を行った。国内ですでにグレリンの臨床研究を施行している宮崎大学よりの情報を参考に独自の倫理審査(添付表)および臨床試験プロトコールを作製した。さらに慶應義塾大学病院薬剤部の協力により院内での調剤システムを構築した。平成24年度には倫理委員会承諾ののち臨床試験を開始したい。後異物検査に合格したものにラベルを貼付し、施錠できる冷凍庫で-20℃で凍結保存する。さらにCKDに対するグレリン介入効果の基盤研究の検討を行う。すなわち遺伝子改変マウスを用いた検討である。グレリンの作用の標的はミトトコンドリア(Mito)と考えられるので、Mitoの形態異常、機能異常をグレリン受容体欠損マウス、近位尿細管細胞株を用い検討する。
結果と考察
平成25年度は10症例程度で安全性と有効性を確認したい。基礎的研究ではグレリンのミトコンドリアを標的とした抗酸化作用の本態を明らかにする。グレリン受容体欠損マウスにおけるミトコンドリア形態、培養尿細管細胞を用いたミトコンドリアの融合、分裂の検討をおこなう。本研究は申請者のこれまでの研究と新知見を総合したtranslational researchである。国民的な健康問題であるCKDに対し内因性のペプチドホルモンの補充を行う治療は新規であり経口薬剤、グレリン受容体刺激薬への橋渡しの研究となる。国民医療費の増加の一因として慢性腎臓病(CKD)の進行による心血管事故の増加と維持血液透析患者の増加がある。従って近年CKDの発症に対する早期介入および進展阻止を重視した実地医療の展開が強調されている。しかしながら、新規透析導入は未だ減少していない。いまこそCKDの治療戦略におけるパラダイムシフトが必要である。CKDの進展には申請書の提唱する腎性インスリン抵抗性症候群をはじめとするCKDにおける代謝異常が消耗性の病態であるProtein Energy Wasting syndrome(PEW)を引き起こすことが背景にあると考えられる。本研究はこのPEWの進展増悪の阻止をCKD治療に応用するというCKDを代謝異常症として捉え直す新たな治療パラダイムを提唱するものである。そして本研究はこれを臨床的に検証し、グレリン補充というCKDに対する新しい治療法の開発を推進する臨床に直結した研究プロジェクトである。しかも共同研究者の寒川らが発見した生理活性ペプチドを用いたtranslational researchでありわが国発の世界に誇る研究である。本研究で得られる新知見は学術的にも有意義なものであるのみならず、CKDによる加齢健康障害を阻止する新治療を提示できる可能性が高い。医療経済上もCKD患者の透析移行の阻止、遅延を目指すものであり、その社会的貢献は極めて高い。
結論
新規ペプチドグレリンの腎不全への適応をめざし基礎および臨床研究を開始した。今後実施への基礎データの構築を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201223007Z