文献情報
文献番号
201223006A
報告書区分
総括
研究課題名
WNKキナーゼをターゲットとしたCKD進展阻止のための新規治療薬の開発 と最適降圧薬選択法の確立
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内田 信一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
- 蘇原 映誠(東京医科歯科大学医学部附属病院腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,024,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性腎臓病(CKD)の進展阻止の重要な方策の一つが血圧の良好なコントロールであることは論を待たない。また今後はCKDの進展阻止のみならず改善をめざす事が可能な薬剤が求められている。よって本研究では新たな血圧制御機構の解明を通して、
1)新たな作用機序による腎機能改善作用を併せ持つ降圧薬の開発。
2)現役の降圧薬の適切な選択のためのバイオマーカーの開発。
3)血圧コントロールが至適であるかをモニターできるバイオマーカーの開発。
と言う目標を立て研究を行う。
研究の対象は、WNKキナーゼである。WNKキナーゼは、遺伝性高血圧症の原因遺伝子であり、その活性化が腎臓での塩分再吸収亢進と血管のトーヌス亢進を介して血圧を上昇させるとが判明しており、その下流にはOSR1/SPAKキナーゼとSLC12A輸送体分子が存在する。
1)新たな作用機序による腎機能改善作用を併せ持つ降圧薬の開発。
2)現役の降圧薬の適切な選択のためのバイオマーカーの開発。
3)血圧コントロールが至適であるかをモニターできるバイオマーカーの開発。
と言う目標を立て研究を行う。
研究の対象は、WNKキナーゼである。WNKキナーゼは、遺伝性高血圧症の原因遺伝子であり、その活性化が腎臓での塩分再吸収亢進と血管のトーヌス亢進を介して血圧を上昇させるとが判明しており、その下流にはOSR1/SPAKキナーゼとSLC12A輸送体分子が存在する。
研究方法
24年度については以下のことを行った。
1)の研究計画に関しては、WNK-OSR1/SPAKシグナル伝達系阻害薬の開発を目指した。WNKキナーゼとSPAKキナーゼの結合部位は判明しており、結合によりシグナル伝達が行われるため、両者の結合を阻害する薬剤をスクリーニングすることで、このシグナル系を遮断できる薬剤の開発を目指した。
方法は、384穴プレートで蛍光分子の揺らぎ(並進拡散時間)の速度を計測できる機器(FluoroPoint Light、オリンパス社製)を使用し、蛍光ラベルしたWNKキナーゼの並進拡散時間が、SPAKとの結合で低下し、阻害薬で回復するという現象を利用してスクリーニングを行った。
2)の研究計画については、サイアザイド感受性NaCl共輸送体(NCC)およびその活性化体であるリン酸化NCC(pNCC)のヒト尿中エクソソーム内の定量を可能にするELISA系の確立を目指し、サイアザイド感受性を検出するバイオマーカーの確立を目指した。すでにNCCに対して、その複数のエピトープに対して高感度な抗体を保有している強みを生かし、特異性の向上のため、サンドイッチELISA方を作成した。あわせて、今までの尿中エクソソームの単離方法が、ELISA法に適してはいないため、ELISA法に最適化された単離方法の確立を目指した。
上記2つの実験計画とも、この時点では患者検体を扱うことはないため、特段の倫理面への配慮は必要ないと考えた。
1)の研究計画に関しては、WNK-OSR1/SPAKシグナル伝達系阻害薬の開発を目指した。WNKキナーゼとSPAKキナーゼの結合部位は判明しており、結合によりシグナル伝達が行われるため、両者の結合を阻害する薬剤をスクリーニングすることで、このシグナル系を遮断できる薬剤の開発を目指した。
方法は、384穴プレートで蛍光分子の揺らぎ(並進拡散時間)の速度を計測できる機器(FluoroPoint Light、オリンパス社製)を使用し、蛍光ラベルしたWNKキナーゼの並進拡散時間が、SPAKとの結合で低下し、阻害薬で回復するという現象を利用してスクリーニングを行った。
2)の研究計画については、サイアザイド感受性NaCl共輸送体(NCC)およびその活性化体であるリン酸化NCC(pNCC)のヒト尿中エクソソーム内の定量を可能にするELISA系の確立を目指し、サイアザイド感受性を検出するバイオマーカーの確立を目指した。すでにNCCに対して、その複数のエピトープに対して高感度な抗体を保有している強みを生かし、特異性の向上のため、サンドイッチELISA方を作成した。あわせて、今までの尿中エクソソームの単離方法が、ELISA法に適してはいないため、ELISA法に最適化された単離方法の確立を目指した。
上記2つの実験計画とも、この時点では患者検体を扱うことはないため、特段の倫理面への配慮は必要ないと考えた。
結果と考察
結果
1)WNK-OSR1/SPAKシグナル伝達系阻害薬の開発については、蛍光相関分光法を用いた機器(FluoroPoint Light、オリンパス社製)にて、WNKとSPAK の結合を384穴プレートで検出可能なアッセイ系を確立した。東京医科歯科大学ケミカルライブラリーの化合物のいくつかを用いて結合阻害物質をスクリーニング可能であることを、予備スクリーニングを開始し確認できた。
2)尿中エクソソームの単離は、通常超遠心法を用いる。その結果、尿に多量に含まれるTamm-Horsfall蛋白が混入し、ELISA用検体として可溶化 する事がむずかしい。そこで、DTTをエクソソーム調整時に追加することでELISA用に最適化した調整法を開発した。ELISAについてもシステムを構築に成功し、正常ボランティアの尿において、測定可能なことを明らかにした。
考察
研究計画1)に関してはスクリーニング系が完成したので、本スクリーニングを次年度に行い候補化合物を得られる目処がついた。2)に関しても、ELISA系が完成したため、今後は患者尿にて測定を行い、尿NCC測定の臨床的意義を確立する。3)に関しては次年度以降、研究分担者が進める遺伝子改変高血圧モデルマウスの検体を用いて網羅的解析を行い、新たなバイオマーカーを得る。
1)WNK-OSR1/SPAKシグナル伝達系阻害薬の開発については、蛍光相関分光法を用いた機器(FluoroPoint Light、オリンパス社製)にて、WNKとSPAK の結合を384穴プレートで検出可能なアッセイ系を確立した。東京医科歯科大学ケミカルライブラリーの化合物のいくつかを用いて結合阻害物質をスクリーニング可能であることを、予備スクリーニングを開始し確認できた。
2)尿中エクソソームの単離は、通常超遠心法を用いる。その結果、尿に多量に含まれるTamm-Horsfall蛋白が混入し、ELISA用検体として可溶化 する事がむずかしい。そこで、DTTをエクソソーム調整時に追加することでELISA用に最適化した調整法を開発した。ELISAについてもシステムを構築に成功し、正常ボランティアの尿において、測定可能なことを明らかにした。
考察
研究計画1)に関してはスクリーニング系が完成したので、本スクリーニングを次年度に行い候補化合物を得られる目処がついた。2)に関しても、ELISA系が完成したため、今後は患者尿にて測定を行い、尿NCC測定の臨床的意義を確立する。3)に関しては次年度以降、研究分担者が進める遺伝子改変高血圧モデルマウスの検体を用いて網羅的解析を行い、新たなバイオマーカーを得る。
結論
WNK-OSR1/SPAKシグナル伝達系阻害薬およびサイアザイド感受性検査法開発のための基礎技術を確立できた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-07
更新日
-