文献情報
文献番号
201223005A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症の糖鎖プロファイリングによる新規バイオマーカーの同定
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
和田 淳(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 槇野 博史(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
- 江口 潤(岡山大学病院・腎臓・糖尿病・内分泌内科)
- 中司 敦子(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
- 肥田 和之(国立病院機構 岡山医療センター・糖尿病・代謝内科)
- 利根 淳仁(国立病院機構 岡山医療センター・糖尿病・代謝内科)
- 伊勢田 泉(国立病院機構 岡山医療センター・糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒトゲノムの配列が決定され、ポストゲノム研究が注目を集めるなか、糖尿病および糖尿病合併症の発症や進展に糖鎖異常が関与していることが報告されている。これらの糖鎖異常が明らかになれば、予後を推測するバイオマーカーとして有用であるのみならず、その糖鎖異常をターゲットとした治療戦略へと研究が展開する可能性がある。そこで糖尿病性腎症患者の血清及び尿の糖鎖プロファイルを網羅的に解析した。
研究方法
健常人と糖尿病性腎症患者の血清サンプル及びセントリコンにより濃縮した尿サンプルをAgilentマルチプルアフィニティ除去システムで6種の主要蛋白を除去した後、透析膜を用いてPBSにバッファー交換した。Glycostation(GPバイオサイエンス)を用いて45種のレクチンへの結合を同時に検出できるレクチンアレイを施行し、GlycoStationToolsにより各種糖鎖構造の定量を行った。健常人と糖尿病性腎症の各病期で糖鎖プロファイルを検討することにより、糖尿病性腎症に特徴的な糖鎖異常が存在するかどうかを検討した。
結果と考察
血清サンプルの糖鎖プロファイリングでは健常人と糖尿病患者で大きな違いは認められなかった。次に健常人(n=12)、糖尿病性腎症(n=17:1期7名、2期5名、3期3名、4期2名)の尿サンプルを用いて、糖尿病性腎症の病期別にレクチンアレイ解析を行った。蛋白質濃度を測定し、Cy3標識したサンプルを濃度調製しGlycostationにより45種のレクチンへの結合性を測定した。腎症病期の進行にしたがって、シグナルが上昇していたのはα2-6結合シアル酸関連レクチン(SNA,SSA,TJA-1)であったが、その上昇は3期以降であった。またN型糖鎖関連レクチン(PHAL,RCA120,PHAE,DSA)が2期で上昇した。その他のレクチンに関してはその結合性が進行性に低下していた。次に患者尿サンプルで病期に従ってシグナルが上昇する傾向がみられたSSAカラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーを施行した。得られたサンプルをLC-MS/MSによるショットガン解析を施行したところ、Fetuin-A、Orosomucoidなど28種類の糖蛋白質を同定した。今回同定した糖鎖プロファイリングによりα2-6結合シアル酸関連レクチンへの結合性が病期の進行に伴って上昇することが示された。
結論
このたび同定された糖蛋白質のうち8種類はELISA法で測定が可能であり、糖尿病性腎症の新たなバイオマーカーの候補として、平成24年度より開始した725症例の前向きコホート研究においてその意義を検討している。
公開日・更新日
公開日
2013-05-15
更新日
-