IgA腎症新規バイオマーカーを用いた血尿の2次スクリーニングの試み

文献情報

文献番号
201223004A
報告書区分
総括
研究課題名
IgA腎症新規バイオマーカーを用いた血尿の2次スクリーニングの試み
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 祐介(順天堂大学 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 仁(順天堂大学 腎臓内科)
  • 川村 哲也(慈恵医大 腎臓高血圧内科)
  • 藤元 昭一(宮崎大学 腎臓内科)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、本邦に極めて多い腎疾患である。初発症状は血尿が主体で、本邦における発見機転は健診時の血尿が約70%と大半を占める。確定診断には腎生検による病理診断を要する為、尿所見異常はあるが腎生検未施行の患者を考えると、患者はこの数倍存在すると推測される。本邦では年間約6500万人が健診を受け、その大部分に検尿が施行されている。本邦の検尿における血尿の頻度は約3~5%とされ、1次スクリーニングで年間250~300万人程度に尿潜血陽性者がいる可能性がある。続く2次スクリーニングで陽性を呈しても、その大部分が経過観察にとどまるのが現状である。しかし、その中には相当数のIgA腎症患者が含まれており、腎症が進行し尿蛋白も陽性になった時点で初めて専門医に紹介されるケースが多い。事実、我が国のIgA腎症の発症のピークは15~20歳と40~45歳で、発症初期の段階で精査の機会を逸し易い年齢である。
我々は糖鎖異常IgA、特にヒンジ部のGalactoseが欠損したIgA1およびその糖鎖異常部位を認識する自己抗体との免疫複合体が病因と深く関わり、疾患活動性とよく相関することを見出した。さらに、それらバイオマーカーを用いた高い診断率(特異度81%・感度91%)を有する診断方法を確立した。この背景をふまえ、複数の健診センターの協力を得て健診・人間ドック受診者を対象に、上記診断方法を用いて1次スクリーニングでの尿潜血陽性者における潜在的IgA腎症患者の割合を明らかにし、IgA腎症の早期診断・治療介入の礎とする事を、本研究の目的とした。
研究方法
都内及び宮崎県内の健診施設にて、1年間で健診および人間ドックにて、検尿検査を受け尿潜血陽性を示した15~50歳の受診者を対象者とした。同意書およびインフォームドコンセントを得た上で、1次スクリーニング施設での健診・人間ドック時の残血清、あるいは2次スクリーニング施設にて改めて得られた血清5mlを、匿名符号化したうえで、順天堂大学医学部腎臓内科(センター施設)に送付する。臨床データの管理、バイオマーカーの測定、データ解析はすべてセンター施設で行われる。
結果と考察
東京都内及び宮崎県内の健診施設より、H25年2月末までに958検体が集まり、随時バイオマーカーの測定を開始した。1月末までに、約607検体についてバイオマーカーの測定を完了し、スコアリングを試みた。しかし当初、考案したスコアリングシステムでは、疾患対象を必ずしも血尿を呈さない患者を含む腎炎患者と健常者としていた為、解析変数として血尿を使用していた。本研究では、全例尿潜血陽性を呈すること、また生理中の影響など、再現性のない尿潜血陽性者がいる可能性が判明し、スコアにバイアスがかかってしまう結果となり、高頻度にIgA腎症と誤診断されてしまう結果となった。本研究においては、スコアリングシステムを改訂する必要があり、新たなスコアリングシステムとして、血尿を除いた臨床マーカーおよび、バイオマーカーを多変量解析し、我々がすでに解析を行ったIgA腎症患者と健常人にあてはめ、95%信頼区間を算出し、その値をもとに、本研究参加者のスコアを高値群(IgA腎症の可能性が高い)、低値群(IgA腎症の可能性が低い)、中間群(経過観察が必要とされる群)の3群に分けた。その結果、スコアの高値群が約13.2%、低値群が約39.9%、中間群が47.0%という結果を得た。
同意率の低い施設については今回の解析から除くなどして解析し、血尿陽性者の割合は、8.6%(95%CI; 6.5%-10.8%)であった。スコア法によってIgA腎症と判断された陽性者の割合は対象健診者集団において、0.9%(95%CI; 0.7%-1.1%)と推定された。これは、血尿の病態の地域性を示唆している。上記検証のために症例数を増やす必要性とあわせ、地域性を検証する点でも、来年度にむけ地方都市における新規参加施設の拡大を検討する。初年度の解析により、検証に必要なサンプルサイズを計算し、新規参加施設における登録目標数を設定し、効率よく解析を進めることが今後重要と考えられる。
結論
都内及び宮崎県における協力8健診施設の協力が得られ、適正な研究登録体制が整備され、検体およびデータの管理体制を確立したことで、初年度で900例以上の登録が得られた。スコアリングシステムを一部改訂し、607例を用いた中間解析で、IgA腎症の可能性が高いスコア高値群と、可能性の低いスコア低値群がそれぞれ13.2と39.9%といった結果を得た。一方、同意率の高かった施設から530例に関して解析したところ、尿潜血者の割合は8.6(6.5-10.8)、スコア法によるIgA腎症陽性者の割合は0.9(0.7-1.1)と推定された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201223004Z