肥満および関連疾患に対する政策に関する国際比較研究-日本における肥満施策のための基礎分析-

文献情報

文献番号
201222066A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満および関連疾患に対する政策に関する国際比較研究-日本における肥満施策のための基礎分析-
課題番号
H24-循環器等(生習)-若手-021
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田中 佐智子(京都大学大学院医学研究科 EBM研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学研究科)
  • 上嶋 健治(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター)
  • 笠原 正登(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター)
  • 保野 慎治(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター)
  • 藤本 明(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、我が国と諸外国における肥満及び関連疾患政策に対する基礎分析を行い、日本における政策提言を行うための基盤研究を行うこと。
研究方法
肥満政策俯瞰のため、まず肥満政策の根拠となる研究として、これまでのコホート研究等から得られた肥満やメタボリックシンドロームに関する知見について情報収集を行った。また、我が国および諸外国の肥満・関連疾患に対する、①実施された政策の具体的事例、②提案された政策、③政策の評価に関する情報を、それぞれ収集した。検索データベースはMEDLINE, Cochrane, Web of Scienceを用い、肥満と関連疾患発症予防に関する研究を抽出した。対象言語は英語とした。また関連するレビューとその参考文献や学会などでも情報収集を行った。
結果と考察
2012年、非伝染性疾患に関する国連会議において、心血管疾患予防および心血管ヘルスを最大化するためには、生活習慣の改善が早急に必要であることが確認された。人々を健康的な生活習慣へ導く教育プログラムやマスメディアを利用したキャンペーンは常に行われているが、持続的な行動変容へ導くのは難しいのが現状であった。近年、肥満者が多い欧米諸国では、国家レベルでの規制も開始されていた。特に、経済学的なアプローチによる生活習慣改善が期待され、代表的なものは課税制度で、これは、果物や野菜などの価格を安くするよりも、高脂肪で糖分の多いジャンクフード等に課税するほうがより効果的であるという研究等がその根拠となっていた。例えば、デンマークでは飽和脂肪酸を含む食品への課税、ハンガリーでは砂糖や塩分が多く含まれる飲食品に課税が施行され、フランスでは砂糖が添加された炭酸飲料に課税するソーダ税が承認された。
次に我々は、肥満及び関連疾患対策を目的とした、食習慣改善と運動増進に対する効果的ポピュレーションアプローチ、個人レベルのアプローチに関する情報収集を行った。生活習慣は、個人、社会、経済、規制、マスメディア、そしてそのほかの環境要因によって影響される。これらに対するポピュレーションアプローチには、①メディアキャンペーンや啓発活動、②経済的介入、③ラベルや情報、④学校や職場における介入、⑤地域の環境改善、⑥規制や制限の6つに分類することができるが、それぞれの項目で推奨グレードIIa、エビデンスレベルB以上の有効性を示すエビデンスが報告されていた。しかしながら、多くのエビデンスは欧米からの報告であり、欧米とは肥満度が大きくことなる日本人を含めたアジアからの報告は少数であった。個人レベルのアプローチについては、特定集団においては有用であるとの報告があったが、集団レベルへの適応は難しく、またその長期効果不明であった。
 世界的に肥満者数は増加している。小児の肥満も増加しており、2030年には過体重・肥満者は20億人に達すると推測されている。日本では、経済発展に伴う運動習慣の減少や食習慣の欧米化にも関わらず、先進国の中では肥満者の割合は比較的低い。しかしながら、日本では肥満関連疾患の一つである2型糖尿病の有病率が急速に増加し、米国の有病率に近づいている。また、日本人は体格指数が低値でも糖尿病を発症することが報告されており、糖尿病を含めた肥満関連疾患に対する遺伝的感受性がより高い可能性が考えられ、西欧的食習慣が組み合わさることにより明らかな肥満でなくとも生活習慣病が発症すると考えられている。
本研究の結果、特定の栄養成分に対する含有制限や課税に関しては、比較的高いエビデンスレベルの研究結果が報告されていたが、その持続的介入と実際の効果、またその評価には非常に多くの問題を含んでいた。例えば、課税制度は推奨グレードIIa エビデンスレベルBと評価されているが、世界にさきがけて2011年10月から高脂肪食品への課税制度を導入したデンマークは、導入後1年で同制度を廃止することを決定した。研究レベルでは有効性が認められる介入政策であっても、実際には効果をすぐに実感することは難しく、課税制度を用いた持続的な介入は難しいことも示唆された。
本年度の研究限界としては、検索ソースとして言語を英語に特定したことにより、日本を含むアジアでのエビデンスが少ないという結果になったと考えられる。今後、日本の情報に関しては科研費の研究班による報告や日本語文献などを含め、広く情報を収集する必要があると考えられた。
結論
諸外国では肥満および関連疾患に対する様々な予防策が検討されている。一定条件のもとでは有効とされる施策であっても、実際実施したところ予測した結果が得られず、継続困難なものが多く認められる。したがって、有効性のみならず、文化を加味した実施可能性の高い施策が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,270,000円
(2)補助金確定額
6,270,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 122,689円
人件費・謝金 1,332,181円
旅費 3,423,840円
その他 821,290円
間接経費 570,000円
合計 6,270,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
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