新しい日米科学技術に関する研究(毒性学研究)

文献情報

文献番号
199800088A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい日米科学技術に関する研究(毒性学研究)
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 雄二(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物)
研究分担者(所属機関)
  • 井上達(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センタ-毒性部部長)
  • 菅野純(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センタ-毒性部室長)
  • 小野敦(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センタ-毒性部研究員)
  • 山本雅也(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センタ-毒性部研究員)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「毒性学研究」の研究事業の一環として、内分泌障害性物質
(EDCs)及びダイオキシン類に関する米国における研究進展状況の調査
をし最新情報を得ること、かつ研究に関する意見・情報交換を行うこと
を目的とした。
最近、野生動物の生殖機能低下に対する環境汚染物質の関与が指摘され
ており,その主要な作用機序として内分泌系の撹乱が考えられている.
そして、この様な事がヒトに対しても起こっているのではないかという
危惧が広がっている。この様な物質としては,意図的に環境中に放出さ
れる化学物質ばかりでなく,ダイオキシン類等非意図的汚染物質も含ま
れている.その作用機序の解明、それに基づく生物学的スクリーニング
法の開発、ヒト及び環境へのリスク評価法等に関する研究が米国を初め
国際的に精力的に進行中である。そこで、我が国においても,このよう
なダイオキシンおよび内分泌系撹乱化学物質の実態把握と科学的根拠に
基づいた対応が必要である.その為に米国の研究機関におけるこれらに
対するの研究状況を調査し,この課題に携わっている研究者と直接意見
交換を行い、もって今後の研究の展開の基盤となす。
研究方法
1)試験管内内分泌障害性試験法に関する情報収集:イースト
や培養細胞を用いた、核内受容体・受容体応答配列、及びレポーター遺
伝子を用いた系に関する分子生物学的情報を収集する。
2)実験動物を用いた内分泌障害性試験系に関する情報収集:卵巣摘出
動物、卵巣機能開始前の幼若動物を用いた試験法、など、高感度な実験
法に関する情報の収集。
3) 高次系に対する影響に関するに関する情報収集:神経系、内分泌
および内分泌系といった、高次性機能に対する影響の解析に関する情報
の収集。
結果と考察
内分泌障害性物質(EDCs)及びダイオキシン類に関する米
国における研究進展状況の調査をし最新情報を得ること、かつ研究に関
する意見・情報交換を行うことを目的とした。特に、地下水系汚染の問
題についての会見と討論、放射線白血病の発症要因にかかる実験データ
・ギャップに関する会見と討論、内分泌かく乱化学物質についての日米
協議の樹立と、そこでのミシガン州立大学(MSU)の役割の発揮と、その下
での国立食品安全性トキシコロジーセンター(NFSTC)と国立医薬品食品
衛生研究所(NIHS)の共同研究交流の推進について、ミシガン州立大学に
おける農学・食品化学・農薬関連研究、国立食品安全性トキシコロジー
センター(NFSTC)の設立、NFSTCの国際的貢献の為の提言、MSUとしてWHO
/IPCS会議をサポートする方針の了承、日米定期協議?研究交流と共同
研究をMSUとNIHSがhostとなることのrationalについて、内分泌かく乱
化学物質に関するTrosko博士の研究計画、GJIC (Gap Junctional
Intercellular Communication) に関するTrosko labとCMTD/NIHSの
共同研究に関する討論、GJICの研究に関する日米(韓)の共同研究、
白血病誘発における標的細胞として造血幹細胞についての討論等を
(井上研究協力者)、NCTR における3D-QSARは、CoMFAとPharmacophore
による検討(前者は、3D空間に分子を配置する手作業をする化学者が
必要。後者は、定性的判断のみ。Keponeがピックアップされた事に
エキサイトしていた)、NIEHSにおけるエストロジェン受容体(ER)α
およびβノックアウト(KO)マウスの研究について(ERα・βダブルKO
マウス作成し、少数を解剖。形質はERαKOに似る。ERβKOの組織は
著変なしとのこと。ERαKOは卵巣に特徴的出血性濾胞形成、黄体形成
欠如。子宮は低形成。膣上皮は、円柱上皮とreserve cell layerの
2層のみ。DES Postnatal exposure実験では無反応出会った)等
(菅野研究協力者)の情報交換・研究交流を得た。同様に米国におけ
るこれらの取り組みに関する研究集会に参加し、成果の発表を行った。
特に、米国がん学会主催の核内レセプターに関するシンポジウムに参加
し、バイオセンサーを用いたエストロゲンレセプター機能解析及び
内分泌かく乱化学物質の作用機序に関するこれまでの研究成果を発表
した。またその後NIEHSおよびEPAなど内分泌攪乱化学物質に関する研究
を行っている研究機関にて情報交換を行うとともに、今後の研究方針
などについて討議を行った(小野、山本研究協力者)。
結論
内分泌攪乱の疑われる化合物は非常に多く、またその生体作用は
従来の毒性試験的手法によっては検討が困難である場合が多い。米国で
は新たな評価手法の利用が試みられているが、内分泌攪乱物質そのもの
の作用機構に不明の部分も多いため、そのいずれもが開発途上である。
我が国においても早急にこの問題に対処すべく、より科学的根拠に基づ
いた評価手法の研究開発が必要である。

公開日・更新日

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