妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病・メタボリック症候群発症予防のための研究

文献情報

文献番号
201222061A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病・メタボリック症候群発症予防のための研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
荒田 尚子(独立行政法人国立成育医療研究センター 母性医療診療部代謝・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 安日 一郎(国立病院機構長崎医療センター 産婦人科)
  • 宮越 敬(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 和栗 雅子(大阪府立母子保健総合医療センター 母性内科)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部 成育疫学研究室)
  • 堀川 玲子(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 内分泌・代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人女性は、いずれの年齢層においても肥満の率は減少しているにもかかわらず、糖尿病有病率は着実に増加を示しており、男性と同様のBMIや腹囲を基準とした特定健診でのスクリーニング法は女性の糖尿病発症ハイリスク群の選別法としては不十分である。メタ解析により、妊娠糖尿病既往女性の将来の糖尿病発症相対危険率は非妊娠糖尿病女性の約7.4倍と報告されていることから、本邦において、妊娠中の耐糖能異常など、妊娠を起点とした糖尿病発症ハイリスクアプローチ方法を確立することが重要である。同方法を確立していくこと、妊娠糖尿病母体の児が肥満やメタボリック症候群のハイリスク因子であるかどうかの日本人の基礎データを作成することが本研究の最終目的である。初年度は、A. 妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群の診療や産後フォローアップの日本の現状を明らかにすること、B. 妊娠糖尿病のフォローアップ率改善のための試作としてのソーシャルメディア活用の可能性を検討すること、 C. 既存の妊娠糖尿病追跡調査結果から、妊娠糖尿病から糖尿病に進展した例のうち5年以内に進展した例のリスク因子を明らかにすること、D. 本邦における妊婦と胎児のビタミンD充足状況とビタミンDが胎児成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した。
研究方法
A.妊娠糖尿病(GDM)診療に関して、全国の産婦人科医療施設(2722施設)、日本糖尿病専門医490名と周産期研修施設の内科担当医646名、妊娠高血圧症候群の出産後の血圧管理に関して、650の周産期施設産科施設、同650施設の内科(高血圧診療科)、日本高血圧専門医539名にアンケート調査を行った。B.FacebookなどのSNS活用法を検討し、妊娠糖尿病既往女性への応用を検討した。C. 大阪府立母子保健総合医療センターで追跡を行われている妊娠糖尿病と診断された女性838名の既存のデータを用いて、産後3か月以内に耐糖能が正常化した女性の5年以内の糖尿病発症リスク因子を検討した。D.既存の出生コホート研究に参加し、妊娠中期母体血及び臍帯血データがともに確認できた494組の母子を対象とし、母体血中および臍帯血中ビタミンD(VD)と出生時身体計測、臍帯血IGF-I、レプチンなどとの関連を検討した。
結果と考察
A.全国の医療機関へのアンケート調査の結果(回答率40%)、妊娠糖尿病の約1/3は産科のみで管理、残り約2/3は内科で管理され、産科管理のみの場合は産直後の糖負荷試験実施率は低く、内科管理の場合は産直後の糖負荷試験実施率は高いがそれでも半分以下と考えられた。糖尿病専門医は産後1年以降の長期追跡を一般医や検診等で血糖とHbA1c測定を行うことを希望していた。医療機関への全国調査の結果、長期フォローアップの方法については全く確立されておらず実施も不十分であることが明らかになり、産科医と内科医の連携および、保健施設や家庭医での児検診や予防接種時に同時に母親も検診を行う体制構築が現実的と考えられた。今後小児保健や、家庭医学をフィールドとした関連学会への教育プログラムの提供などを行うことで、女性の糖尿病や高血圧発症予防のための検診制度を確立できる。B. 妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群合併女性のフォローアップ率向上のために、FacebookなどのSNS活用の可能性があげられたが、個人情報の管理に関する課題が残された。C. 既存の妊娠糖尿病追跡調査結果から、早期(5年以内)に糖尿病へ進展する主要リスク因子は、妊娠前BMI25以上、診断妊娠週数20週未満であったが、その他に診断時および分娩後1年内の再診断時糖負荷試験での血糖値やインスリン分泌能、インスリン抵抗性があげられ、糖尿病進展リスク評価には、インスリン評価も含めた妊娠中および産後の再評価が有用であることが明らかになった。D.妊婦および臍帯血血中の25OHDは、一般の推奨値より低値であり、VDとIGF-Iは有意な正相関を示したが、VDと出生体重との間に関連はなかった。
結論
妊娠を起点とした糖尿病発症ハイリスクアプローチ方法を確立するために、内科と産科の連携および、保健施設や家庭医での児検診や予防接種時に同時に母親も検診を行う体制構築、ソーシャルメディアの活用などが現実的な施策と考えられた。また、妊娠前の肥満、妊娠中および産後1年以内の再診断時の糖負荷試験の耐糖能やインスリン分泌能・抵抗性が、産後早期(5年以内)糖尿病進展予後の予測因子となり得ることが明らかになった。今後、関連学会での教育プログラム作成やソーシャルメディア応用の検討、早期のみならず長期糖尿病進展のリスク因子を関連遺伝子も含めて明らかにしていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222061Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,569,222円
人件費・謝金 1,500,410円
旅費 2,144,062円
その他 2,786,306円
間接経費 1,000,000円
合計 11,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
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